高畑勲監督のジブリ最新作 映画「The Tale of The Princess Kaguya(かぐや姫の物語)」レビュー
製作期間8年、製作費50億円の娯楽超大作。
高畑勲監督のジブリ最新作 映画「The Tale of The Princess Kaguya(かぐや姫の物語)」レビュー

トロント国際映画祭でも話題になったジブリ最新作「かぐや姫の物語」、英語タイトル「The Tale of The Princess Kaguya」が、オフィシャル・セレクションとしてTIFFで上映されている。
日本で最も古い物語といわれる「竹取物語」を題材に、かぐや姫はどうして地球に生まれやがて月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の心情と謎めいた運命の物語を水彩画のようなタッチで描かれている。
まず特に印象に残るのは、パステル調で水彩画風に描かれているということである。ジブリ作品と聞くとその多くの作品に共通する明るくて楽しい、元気を感じるアートスタイルを思い描くが、「かぐや姫の物語」はシンプルなタッチ、そして水彩画の印象が幻想的な雰囲気を醸し出し、古典的な物語を情緒的に演出することで見る人の心を釘付けにする。
竹の中からかぐや姫を登場する場面や、竹の中からかぐや姫のために小判や着物が飛び出てくるシーンなどは神秘的な雰囲気を見事に色彩豊かに描いている。さらに場面所々に登場する桜はまさに圧巻である。
風に舞い散る桜の花びらと上品かつ瑞々しいかぐや姫の振る舞いはまさに「和」を感じざるをえないし、見後名までに心が奪われる美しさがあった。
アートスタイルは素朴でラフな色彩が特徴だが、ストーリーは繊細で複雑な感じがある。だからこそ、そのアートスタイルが物語を一層引き立ててくれるのかもしれない。
ストーリーは日本で最も古い物語といわれる「竹取物語」を題材にしている。公式サイトによると、「数ある星の中から、彼女はなぜ地球を選んだのか。この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。姫が犯した罪とは、その罪とはいったい何だったのか・・・。“姫の犯した罪と罰”」とある。
質素な暮らしぶりながら、野山を友達と走り回り、無邪気に笑う姿こそかぐや姫が求める幸せなのだ。その望みを胸に抱きながら、都で姫として生きる姿勢に胸が痛くなる。育ての親である翁はかぐや姫を本当に大切に思い、高貴な姫として育てるべく、すべての環境を変えていく。また多くの求婚者たちはかぐや姫を妃として迎えるべく、無理難題の要求に応えるべく苦心する。かぐや姫が本当に求めている幸せ自分の姿と、周りが望んでいるかぐや姫のギャップは、まさに繊細な感情の物語で、時代を問わず多くの人の共感を得るのではないだろうか。
クライマックスは、かぐや姫が月から地上に降りてきたということ、月に戻る時がやってきたこと、翁に自分が本当に求めていた幸せは違うものだったことなどを語っていく。故郷の山に戻り子供時代の友達と再会し、初恋の相手だったであろう、捨丸と恋に落ちるときの喜び、生き生きとした輝いた目ながらも、どこかに寂しさを感じる表情をするかぐや姫。そして運命は残酷に二人を引き離す。8月15日の夜、月から迎えがくる。泣きながら別れを告げ、地上の記憶が全てなくなっているはずのかぐや姫の目には涙が浮かんでいた。なんともいえない運命のはかなさと微かな希望を感じる。
激しい心の動揺や、絶望への悲しみ、諦めなどが後半、神秘的な色彩とタッチで描かれている。この画風こそがかぐや姫や周りの人々の感情を表していて、目に焼き付き、心を長い間奪われた感覚に襲われる気持ちなる。
この映画を見た後、ストーリーの感情を表現しているその画風の世界にもう一度入ってみたいと思わせる、一度と言わず二度みたくなる映画だ。

トロント国際映画祭 高畑勲監督Q&Aセッションの模様は下記ウェブサイトにてご覧いただけます。
torja.ca/events/kaguyahime-monogatari










