オンタリオ州議事堂前 カナダの青空に日の丸が揚がる
日本側から見た日加修好90周年となる2018年7月20日の朝にクイーンズパークで日本国旗の掲揚式が行われ、多くの人が州議事堂に揚がる日の丸を一目見ようと駆け付けた。
「両国が協力し合うことで掲揚された国旗のように更なる高みへ到達できる」
国旗掲揚に先駆けて挨拶を行った伊藤恭子・在トロント日本国総領事は、参列者への謝辞を述べた後、90周年と言う節目の年を迎えられたことが嬉しいと語った。日本の国旗が州議事堂で掲揚されるという事は貴重な機会であり、カナダの広々とした青い空に日の丸が揚がっていることをとても誇りに思うとした。
そして「日本とカナダの国交が樹立されたのは1928年のちょうど7月20日。それから両国は何年も続く関係を結んだものの、その道は平坦なものではありませんでした。それでも今日では両国ともに民主主義国家として、そして先進国として協力し合い、法の支配、人権、自由、自由公開市場、持続可能な市場と言った共通の価値観を共有しています。それは国際的なステージでも変わらず、日本とカナダは国際連合をはじめ世界貿易機構、経済協力開発機構、G7、G20でも強力なパートナーとなっています。
また、日加の絆は政府レベルだけで創られていったものではなく、民間の協力も欠かせませんでした。だからこそ日本人がカナダに、カナダ人が日本に訪れればいつでも歓迎されているような気持ちになれます。事実、2017年には約30万人の人が日加間を渡りました。
そして、オンタリオ州はカナダの人口の40%が住む、経済的にもとても豊かな州であり、様々なパートナーシップが構築されている様子が伺えます。カナダでは現在811の日系企業があり、その内の283社はオンタリオに社を構え4万5千もの雇用を創出し、オンタリオの輸出や持続的な経済発展に貢献しています。
さらに、草の根的な活動ではハミルトン市と石川県加賀市は今年で姉妹都市協定を結んでから50年を迎えました。同じようにミシサガ市と愛知県刈谷市、トロントと神奈川県相模原市をはじめ、数々の市町村が強固な姉妹都市協定を結んでいます。その結果オンタリオ州でも漫画やアニメ、日本食といった日本文化が愛されています。」と、今日までに日本人と日系カナダ人が積み重ねてきた功績と、それを多様性として受け入れてくれたカナダの人々に感謝を述べた。そして最後にこれからも両国が協力し合うことで掲揚された国旗のように更なる高みへ到達することができるとし、挨拶を締めくくった。
伊藤総領事の挨拶が終わると国旗の掲揚が始まり、その記念すべき大役は伊藤総領事と日系文化会館のゲイリー川口理事長が担当した。日本とカナダの国歌が流れる中、国旗が高く掲げられると拍手が沸き起こった。
「様々なバック グラウンドの人種が集まるオンタリオ州における日系カナダ人の影響力は絶大」
続いてオンタリオ進歩保守党のロビン・マーティン州議会議員がスピーチを行った。その中でマーティン氏はオンタリオ州が多様性に溢れていることはカナダにとっても重要なことであると述べた。
「オンタリオ州はカナダの中で2番目に大きな日系カナダ人コミュニティーを持ち、約4万人の日系カナダ人が暮らしています。様々なバックグラウンドを持つ人が集まるオンタリオ州でこの日加90周年を祝うことが出来るのはとても喜ばしいことです。」と述べられた後、マーティン氏から伊藤総領事にダグ・フォード州首相からのメッセージが手渡された。
新民主党からはソル・ママクワ州議会議員が登壇した。自身がファースト・ネーションズの人間として式典に参加できることが嬉しいと述べ、「ファースト・ネーションズの人々はとても寛容で、様々な人と同じ国に住むことがこの地に住む楽しみの一つです。」と語った。最後にママクワ氏は日加90周年が迎えられたことを祝い、今後も両国の関係が末永く続くことを祈念した。
カナダ自由党のミッチー・ハンター州議会議員は自身の選挙区でもあるスカボロー市はギルウッドにサービス付き高齢者向け住宅の「Momiji」があることに触れた。ハンター氏はこの「Momiji」が選挙区にあるからこそ日本に対しては特に親しみを感じており、いつもこの施設に足を運ぶことを楽しみにしていると語った。そして最後に、数でみるとオンタリオ州に住む日系カナダ人の数は少ないかもしれないが、とても大きな影響力を持っているとし、今後も日加の絆が深化することに期待を寄せた。
「90周年を迎えた両国はこれからその産物を目の当たりにする」
最後に登壇したのは日系文化会館のゲイリー川口理事長。日系カナダ人はカナダ建国と近い歴史を持ち、現在の日系カナダ人は4世や5世になっていると語った。
そして「カナダの日系人の内約2万人はGTAに住み、その他に短期滞在や進学、仕事のために来ている日本人は2万2千人にも上ります。日本人がカナダに移った時期は1877年から1907年頃のことであり、そのころのカナダは今日とは違い、多様性を大事にしているとはいえるものではなく、特に日系カナダ人は第二次世界大戦中、政府によって強制収容されたという過酷な歴史があります。そして、大戦が終わったにも関わらず、彼らはもともといたブリティッシュ・コロンビアには戻れませんでした。そのような過去も含め90年も続く国交はとても素晴らしいことであり、その産物の中にはまだ開花していないものもあるでしょう」と川口氏は語り、日系カナダ人の代表として、これからもオンタリオ州と日本の交流が実のあるものとなるよう活動していくことを誓った。