第7回:カナダ政府によるスモールビジネス・中小企業支援政策 「CEBA」のアップデートと「ローン」を借りることのメリット|カナダのお金について「なるほど納得!銀行のいろは」
Canada Emergency Business Accountのアップデート
「2023年1月1日まで無金利、借入額の25%(最大で一万ドル)が返済免除の対象」
5月19日に政府はCEBAの申請条件を再改定しましたが、新たに追加された申請条件を満たすアプリケーションの受付をまだ開始していません(6月23日現在)。これは本プログラムに参加している全金融機関に当てはまります。受付スケジュールの確認や当該ローンの詳細に関してはこちらの政府ウェブサイトから確認できます。
5月19日以前に発表された申請条件に満たすビジネスで、まだ申請されていない場合は、いつでもアプリケーションを出せる状態ですので、お取引のある金融機関の申請方法に従ってアプリケーションを提出してください。また、CEBAの申請期限に関しても見直され、2020年8月31日に延期となりました。このローンの最大の特徴は、2023年1月1日まで無金利であるということと、借入額の25%(最大で一万ドル)が返済免除の対象となることです。
ローンを借りることのメリット
■経済が完全に回復し、従来通りの状態に回復できるまでには1〜2年かかると予測
業界による制限はあるものの経済活動の再開もだいぶ進んできており、リテール業界に対しても営業再開のゴーサインが出ました。しかし、ソーシャル・ディスタンスを設けなければならないところもあり、営業再開となっても従来の収益率の半分ほどしか期待できない、というところも多いのではないでしょうか。
リオープニングによって感染拡大が再発する可能性もありますし、それによって再度営業停止に陥ることも十分に想像できます。そうでなくても、経済が完全に回復し従来通りの状態に回復できるまでには1〜2年かかると言われています。
■「Business Credit Availability Program」の有効活用
日々様々なお客様のビジネスの運営状況を拝見させて頂いている立場からアドバイスできることは、「CEBA」以外に政府が打ち出した「Business Credit Availability Program」(詳細は前月号を参照)を有効活用するということです。
例え資金繰りに困っていなくても、申請条件に満たすのであれば、バックアップ用にこちらのローンを申請することを勧めます。
「BCAP」は「CEBA」とは異なり、金利に対する猶予期間はなく、初年度は金利払いのみとなり、元本の支払いは二年目から発生します。利息を払うことにはなりますが、ビジネスの手元資金を守る手段となったり、ビジネスオーナーが個人資本を投入する必要性をなくしたりできるほか、ローンに対して支払った利息は営業経費としてもつけられます。
■経営が上手く行っている時こそローンが承認されやすく、バックアップ用に備えておくべき
ローンを借りた分だけバッファーが増え、ビジネスで使えるお金もその分増えることになります。経営が上手くいっているビジネスほど借金はしたくない、と考えるのが一般的ですが、融資を行っている側からすれば、経営が上手く行っている時こそローンが承認されやすく、バックアップ用に備えておくべきなのです。
本当に経営が行き詰まり、オーナーの個人資産も枯渇してしまってからでは銀行からローンを組むことは不可能でしょう。「BCAP」の申請期限は、現在のところ2020年9月30日です。本プログラムは政府と民営銀行の共同出資プログラムで、なおかつ政府の出資率は80%ですので、民営銀行による独自の短期運転資金枠などよりも比較的承認されやすい傾向にあります。
リオープニングするこのタイミングで今後1~2年の売上予想を立て、キャッシュフローを再度見直してみてはいかかでしょうか。
Lucia Ma
小学校~大学までを日本で過ごす。大阪大学卒業後、カナダウォータールー大学に留学、修士号を取得。大手邦銀海外支店日系法人課において3年間の勤務経験を経て、Royal Bank of Canadaに転職。現在は中小企業の顧客の法人口座管理、融資、キャッシュ・マネージメント等を担当。