最前線で公衆衛生の陣頭指揮をとる女性医師エキスパートに注目|COVID-19 パンデミック・カナダ
アルバータ州
Dr.Deena Hinshaw
アルバータ州の最高医療責任者を務めるディーナ・ヒンショー医師。公衆衛生のエキスパートとして、今回の新型コロナウイルスへの対策を州政府にアドバイスするなどの役割を担う。中でも公衆衛生と予防医学を専門とするヒンショー医師は、アルバータ大学で修士・博士課程を修了。以来、アルバータ州の医療に長年携わっている。「公衆衛生や予防医学に携わることで一人一人の患者について深く知り、傾向を掴むことができる。そこで何かしらの治療を与えることができれば全ての人の生活に変化をもたらすことができる」と述べたこともあり、その意志の固さがうかがえる。
そんなヒンショー医師は、新型コロナウイルスの感染状況についてアルバータ州民に向けて毎日報告を行なっている。また、彼女が報告の際に着用していた衣服も話題に。周期表がプリントされた遊び心満載なTシャツを纏い登壇した際には、SNS上で多くの反応が見られた。彼女自身もTwitterを頻繁に更新し、アルバータ州での新型コロナウイルスの動きを数字と共に定期的に発信。フォロワーはなんと8万4000人(5月21日現在)にものぼる。
医師でありながら、アルバータ州民のカリスマ的存在でもあるヒンショー医師。州民からは、「恐ろしいことを落ち着きと自信を持って発信している」「この分野に精通したエキスパートでありながら親近感が湧く」など高い評価も受けている。
プリンス・エドワード島
Dr.Heather Morrison
プリンス・エドワード島の最高医療責任者を務めるヘザー・モリソン医師。オックスフォード大学で修士と博士課程を修了。自身の博士論文においても内容医療政策について書くなど、学生時代から医療と政治の関係性について研究を行なってきた。また、2009年の新型インフルエンザや2014年のエボラ熱が発生した際にも、プリンス・エドワード島を代表する医師としてプログラムの企画・遂行を主導した経験もある。
現在では、プリンス・エドワード島における新型コロナウイルスの発生状況を報告すべく毎日のようにカメラの前に立つ。感染者数は他の地域と比べ少ないものの、長期の介護施設の入居者への検査を優先するなど、州における感染拡大を把握・抑制するための施策を打ち出している。また、今回の新型コロナウイルスの検査方法においても、対象となる人や優先される人が州ごとに異なる。これらの方針について不透明な部分が多い州もある中、モリソン医師率いるプリンス・エドワード島はオープンに検査方法や検査方針を公表してきたことが評価されている。プリンス・エドワード島における感染者数は他の州に比べ少ないものの、「だからと言って他人との物理的距離を保つことや外出を自粛することはやめないでほしい」と慎重な姿勢をとっている姿も印象的だ。
ブリティッシュコロンビア州
Dr. Bonnie Henry
ブリティッシュコロンビア州の最高医療責任者を務めるボニー・ヘンリー医師。彼女の顔と名前を見た人も多いのではないか。公衆衛生と予防医学のスペシャリストであり、WHOやUNICEFなどとともに、パキスタンにおけるポリオ撲滅プログラムやウガンダにおけるエボラ撲滅プログラムに携わるなど、国際的にも活躍した経歴がある。
そんなヘンリー医師は独自でCTVにて記事を執筆。「新型コロナウイルスの動きには境界線がない。どこにいてもリスクは同じ」と警鐘を鳴らした。また、州の方針で感染者の住所などを公表しない理由として、「公表してしまうと感染者がいる地域といない地域に分かれる」という問題点を指摘。感染者がいない地域の住民に「虚偽の安心感を与えないため」と改めて新型コロナウイルスの脅威を強調した。
彼女もまた、2003年のトロントにおけるSARS感染拡大の際に医療現場のリーダーを務めた経験があり、彼女の当時の経験によってブリティッシュコロンビア州は感染を比較的抑えることができているのではないかと言われている。まさにこのような感染症のスペシャリストでありながら、今回の新型コロナウイルスにまつわる会見において見られる彼女の話し方はわかりやすく、かつ親近感が湧くと多くの国民から高評価を受けている。FacebookやTwitterでは、彼女の非公式ファンクラブができるほどだ。