最前線で公衆衛生の陣頭指揮をとる女性医師エキスパートに注目|COVID-19 パンデミック・カナダ
ニューファンドランド・ラブラドール州
Dr. Janice Fitzgerald
ニューファンドランド・ラブラドール州の最高医療責任者を務めるジャニス・フィツジェラルド医師。彼女もまた、州の医療現場のトップとして毎日のように登壇。州における新型コロナウイルスによる感染にまつわる数字を発信している。また、他の州同様、新型コロナウイルスの感染状況を伝えるサイトを独自に開設し、感染者数とともに入院者数、死者数、回復者数、そして検査数を公表。しかし、他の州とは異なる点として、州内の地域ごとの感染者数も公表。より詳しく、感染者数の分布がわかるのがこの州の特徴だ。
フィッツジェラルド医師の発言を見ると、彼女の姿勢は特に慎重であることが窺える。3月の後半、州の感染者数が9名と比較的少なかった際にも、フィッツジェラルド医師は「9名という数はあまり多く感じないかもしれない。しかし、これからの私たちの行動がこれから新型コロナウイルスが州においてどのように広がるかを決定づける。皆さんには私たちが言っていることを聞いてもらわなければならない」と断言。また、ニューファンドランド・ラブラドール州は、物理的距離を保っていない州民に対して処罰を設けるなど、特に厳しい規則が特徴的だ。その効果もあってか、4月初旬の時点では既に感染者数の増加を抑えることに成功しているとの報道もあった。
オタワ
Dr. Vera Etches
オタワの医療責任者を務めるベラ・エッチェズ医師。性感染症、血液媒介性感染症などの予防・治療にも携わる医師だ。ニュージーランドで生まれ、ブリティッシュ・コロンビア州で育ったエッチェズ医師は、オタワ大学での非常勤講師も務める。市の医療責任者になってわずか二年しか経過していないにもかかわらず、既に多くの人は彼女をオタワにとって「新型コロナウイルスに対する戦いの顔」と称賛している。
そんなエッチェズ医師は、若い頃から社会貢献も積極的に行なってきた。家族とともにベトナムからの難民のホストファミリーになった経験も。また、学生時代にアフリカに滞在した際、現地の医療従事者の仕事を目の当たりにした当時のエッチェズ氏。そこでエイズや飢餓に立ち向かう彼らを見て、絶望していなかったことに驚きを隠せなかったという。「こういう人たちと働きたい」と思うようになり、以来公衆衛生の道へと進んだそうだ。
彼女を知る人は、彼女を「頭脳明晰、協力的」であると同時に「優しい顔の下には鋼の如く強い意志がある」など、エッチェズ医師を高く評価している。さらに、コミュニティとのコミュニケーションを重視するエッチェズ医師。SNSで物理的距離を保ちながらランニングをする自らの姿を投稿するなど、健康を維持する大切さも発信している。
カナダ保健大臣
Patty Hajdu
カナダの保健大臣(Minister of Health)を務めるパトリシア・ハイデュ氏。人類学と公衆衛生のバックグラウンドを持ち、政界に入る前は公衆衛生の分野で活躍していた。
そんなハイデュ氏は、幼少期は家族と過ごすことはなく、ミネソタでおばと暮らしていたという。あるインタビューにおいて自身の幼少期について聞かれた際、当時を振り返りながら「厳しかった」と答えたものの、詳細はあまり明かしていないという。また、大学に通っていた際にも、恵まれた環境にあったとは言えず、学生でありながら二人の息子をシングルマザーとして育てたのだとか。
彼女が現在のポジションに就いたのは2019年11月。保健大臣になって間もない時に今回の新型コロナウイルスが中国で発生したという情報が飛び込んだそうだ。そんな状況の中、政府の中でも高い評価を得ているハイデュ大臣。「頭が良く知識もありながら、率直に物事を伝える」と、そのコミュニケーション力が特に評価されている。また、今回の新型コロナウイルスの感染拡大のように受け入れにくい情報を伝える際にも「冷静沈着に情報を提供しながら、困っている人や心配している人に寄り添う態度も見せる」とその人間性にコメントした人もいる。実際、3月中旬に行った会見では、多くの感染者が亡くなった介護施設の話をする際に涙ぐむ様子も見受けられた。
トロント市
Dr. Eileen de Villa
トロント市の医療責任者、そしてトロント・パブリック・ヘルスのトップをも務めるエイリーン・デ・ビラ医師。トロント市の290万人の医療と健康を守るポジションに立つ。トロント大学で修士号と博士号を、そしてヨーク大学のシューリック・ビジネススクールのMBAを持つエリート医師。現在、トロント大学で非常勤講師も務めている。
彼女もまた、今回の新型コロナウイルス感染拡大を受け、頻繁にカメラの前に立ち報告を行なっている。そんな彼女の姿に多くの人が称賛の声を寄せている。「こんな状況下でどのように指揮を取り、これだけの時間を注ぎながら冷静沈着でいられるのかがわからない」と驚きの声もある一方、「他の人に共感しながらも会見などで揺るがない態度を保つ芯の強い人」と彼女の強さと優しさを称賛する声もある。
また、彼女が会見で着用している多種多様なスカーフもSNSで大きな話題になっている。Twitterではなんと彼女のスカーフをフォローするアカウントまでできるほど。さらに、トロント・ラプターズが市の医療現場に携わる人への感謝を伝える取り組みの中にもデ・ビラ医師が登場。取り組みの一環としてのセルゲイ・イバカ選手が彼女とFaceTimeした際には、イバカ選手も彼女のようにスカーフを着用するなど話題になった。