終戦80年。トロントの地より、平和を祈る「広島・長崎デー」開催
終戦80年となる今年2025年、8月6日にトロント市庁舎前ネイサン・フィリップス広場にて、「広島・長崎デー」がHNDC(ヒロシマ・ナガサキ・デー・コアリション)により今年も開催された。広島の被爆者であり、2017年にノーベル平和賞を受賞したサーロー節子さんをはじめとした平和活動家によるスピーチや、日系カナダ人3世のフルート奏者・作曲家のロン・コーブさんの演奏、日本人合唱団の歌が披露された。最後には、広島・長崎の原爆犠牲者を追悼するランタンセレモニーが行われ、参加者は平和への想いを強くした。
老若男女が学びを深めた地元団体によるコミュニティーブース


午後6時半開始の式典が始まる前には、同会場にてクラフト・コミュニティーブースが開かれた。ランタン作り・千羽鶴折りのブースは、トロント本願寺、トロント都道府県人会連合会が協力。参加者は墨汁やカラーペンを用いて、ランタンに平和への想いを表現した。参加者同士で折り鶴の作り方を教え合う姿も見られた。


その隣では、平和活動を行う団体が軒を連ねた。グレーター・トロント日本人カナダ協会のブースでは、本式典のメインスピーカーを務めるサーロー節子さんの新刊『Never Silent』を販売。サーロー節子氏は、13歳で被爆後、平和と核軍縮を訴え続け、2017年にICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞受賞に際しスピーチを務めた。その生涯にわたる取り組みを伝える一冊だ。HNDCの会計担当を務めるヴィネイ・ジンダル氏は、「この本は9~12歳向けに編集されています。この本のおかげで、より若い人たちに広島・長崎のこと、そして核の脅威について学んでもらうきっかけになるので嬉しいです」と語った。


笛の音から始まった式典
それぞれの立場からの平和宣言



続いて、トロント地域宗教間協議会のアール・スミス牧師が登壇し、松井一実・広島市長と鈴木史朗・長崎市長による平和宣言を紹介した。松永健・在トロント日本国総領事は、世界の多くの人そして日本人の約9割は戦争を直接経験していないと話し、広島・長崎の記憶を未来に伝えていく必要性を訴えた。


トロント市庁舎内で開催の写真展カナダと原爆の歴史も紹介

「ヒロシマ ナガサキ デー」の開催前後となる8月5日〜9日、トロント市庁舎内1階ロダンダにてパネル展が開催。広島・長崎に投下された原爆の製造にカナダが関与していたことや、サーロー節子さんの活動について展示された。「原爆に使われたウランはカナダで採掘、精錬されました。多くのカナダ人はそれを知りません。私たちは自分たちの歴史を理解することが大切です。このようなことを二度と起こさないように世界の人々と協力する必要があります」と、ボランティアガイドは語ってくれた。
また、9月22日〜26日、同会場にて、広島平和記念資料館のアーカイブ写真や被爆者の体験を描いた絵の展示が行われる。ぜひ足を運んでみてほしい。
平和への祈りを灯すランタンセレモニー


式典の最後、参加者は声を揃え、HNDCの誓いを読み上げた。「今日、私たちは世界中の人々とともに、人類のために誓います。核兵器を汚名化し、禁止し、廃絶する取り組みにおいて、各国政府、議会関係者、市民社会と協力します。手遅れになる前に、想像を絶する恐怖を防ぐために」。


あたりがうっすらと暗くなりはじめた午後8時半。参加者はランタンを手に取り、広場の池に向かった。ディエゴ・カルネイロさんがチェロで伴奏を務め、ロン・コーブさんの龍笛の音が美しく響く中、参加者はそれぞれランタンを手に取り、池に流した。平和の想いをのせたランタンは、広場のTORONTOサインを背景に、あたたかな光を池に灯した。
サーロー節子さんのスピーチとそれを受け語る、平和活動家たち

式典は中盤に。あすなろ合唱団、がんばれ子ども合唱団が『青い空は』を披露した。優しい歌声が、広場に美しく響いた。

登壇したサーロー節子さんは、広島では14万人以上、長崎では7万人もの尊い命が奪われ、80年経った今も、苦しみは続いていると語った。その上で、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が、昨年12月にノーベル平和賞を受賞したことや、80年を機に、カナダの10都市にて、広島平和記念資料館提供の写真展が開催されていることを紹介した。



続いて、1985年エッセイ賞を受賞したカレン・グッドフェローさん、Science for Peaceのマリッサ・ハムさん、Voice of Women for Peaceのアリー・マクドナルドさん、Reverse the Trendのルージ・アリさんは、それぞれのルーツや活動に触れながら、平和への想いを多くの来場者に語りかけた。


サーロー節子さんは「混沌とした無秩序な暗闇の世界を歩く私たちにとって、あなたたちは希望の光です」と感謝の言葉を返した。再び合唱団が登場し、『いのちの歌』を披露。力強いスピーチと歌声は、人々の心を強く打った。中には涙する参加者の姿もあった。














