世の中のライバル関係|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明
世の中には相対する者が競い合い、影響し合い、新たなる水準を作り出すことが多い。ライバルなく独走する場合は往々にしてつまずきやすい。我々の知っているライバルの関係を覗きながら地球儀ベースではどうなっているのか探ってみよう。
相撲の番付とはよくできたものだと改めて思うことがある。それは東西番付である。今はこの東西の意味はあまりなく、対戦の組み合わせは東西対抗ではなく原則相撲部屋ごとの総当たりを基準としている。だが、東西対抗していた時代に力が伯仲する横綱や大関同士が戦うことでライバル心を煽り、更なる盛り上がりを見せることを意図していたのであれば宝暦時から始まるその取組はまさに妙味あったものといえよう。
このようなライバル同士の戦いは今日に至るまでどこにでも存在しており、その力関係は見事なパリティ(均衡)状態を作り出すものである。例えば日本のヤクザの世界で西の山口組、関東の稲川会と言われた時代があった。双方はライバルでもあるが兄弟杯を交わしており、親密度は高い。この緊張感によりヤクザの「仁義あるバランス」は保たれていたとみてもよい。
王貞治と長嶋茂雄もライバルだったし、野球のセリーグとパリーグも交流試合や日本シリーズを含め、お互いが切磋琢磨している。ゴルフの石川と松山だってそうだろうし、最近再度盛り上がってきたモーニング娘とAKB48というのも面白い関係に見える。
会社間でもライバル企業があればあるほど双方は燃えるもので結果として経営にも消費者にもプラス作用が働きやすい。また、企業間の戦いは必ずしも2社ではなく寡占の間で戦われることもある。例えば携帯電話の3社をはじめ、コンビニもセブン、ファミマ、ローソンの戦いだし、メガバンクの3行、力関係は崩れたが家電ならソニー、パナ、シャープが御三家だし、重電なら日立、三菱、東芝といった具合である。
実はこのライバル関係というのは強力なリーダーシップ力を伴うことが多く、その力関係に基づき、多くの関連者やフォロワーが生まれることになる。これがいわゆる勢力図ともいわれるものでライバルに差をつけるにはいかにその勢力範囲を広げるか、これもキーであるといえる。
では地球儀ベースではこのライバル関係はどうなっているのだろうか?
ウクライナの問題がなぜ起きたのか、この答えを引き出す一つのカギとしてCNNがブッシュ前大統領にインタビューが興味深い。プーチン大統領について(かつて)「あの男の目を見たがとても素直で信頼できると感じた」が(今は)「彼は変わったと思う」と述べている。なぜ、プーチンが変わったか、それはオバマ大統領が原因を作った可能性はある。
読みはこうである。金融危機で世界経済は歯車が狂い、大幅な調整を強いられたもののアメリカはいち早くその回復路線を歩み、欧州も危機から脱しつつある。一方で資源に依存するロシアはその輸出価格の低迷から国内経済がさえず、不満が高じていた。国内不和があればあるほど国民は英雄を求める傾向にあることは歴史が語っている。プーチンも自身の不人気をかわすためには国民のうっ憤を晴らすホームランが必要であった。
そこにウクライナ問題が発生し、プーチンは起死回生のチャンスとみて勝負に出た。一方、世界の覇権を握っていたはずのアメリカは長年のライバル不在から「支配力維持」よりも国内経済立て直しにまい進していた。そして国民にも金融緩和で「にわかリッチ」が出現し、リラックス状態が生み出されていたと言えよう。おまけにウクライナはアメリカからは遠い国。クリミアの意味を考えるよりも新しい車は何にするかを決めることがもっと重要になってしまった。
そこまでアメリカが内向きになったのは国家が成熟した結果であろう。おまけに東西を大西洋、太平洋で囲まれ、南北はカナダ、メキシコという友好国で固めている。つまり、巨大なる島国と考えてもよいのである。
ところがロシアはいつまでも眠っていない。ソ連こそ1991年に崩壊したもののそれは国家体制の問題であり、ロシアそのものが壊れたわけではない。その立て直しに20数年かかっただけの話である。とすればロシアの発言力は高まる公算があり、新たなるライバル同士のパリティな関係が生まれる可能性はある。その上、世界の均衡も必ずしもこの二国間の関係だけではなく、中国という三つめの力関係が加わるかもしれない。そうなれば1対2の関係になるのでアメリカは不利だからEUやイギリスという盟友を巻き込むだろう。いわゆる勢力図である。よって中国、ロシアと隣接している日本はまさにキーとなる国家になる。
ライバルに勝つには誰が味方につくかで決まる。それが舎弟であり、うまくすれば五分兄弟となる。盃のかわし方次第で連合軍にもなるし、従軍にもなるわけだ。さて、日本はこの場合、どこに位置するのか、正直、私には色付けできない。それは日本がライバルや舎弟と思われていない節も無きにしも非ずだからだ。「日本なしには語れない」という国家のポジショニングを作らなければ日本は世界の番付表でいつまでたっても上位は狙えないということだろう。
了
岡本裕明(おかもとひろあき)
1961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、(株)青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模集合住宅開発事業に従 事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を推進し完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場 管理事業、カフェ事業など多角的な事業展開を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。