音楽の話を少しさせていただこうと思う|カナダで出会う音楽の話【第1回】
音楽の話を少しさせていただこうと思う。
が、それにあたってまずは正直に言わねばなるまい。実はお話をいただいてやったー!とはりきってみたものの、色々と調べ出すと音楽の定義も語源も歴史も諸説あり、というかけっこうはっきりせずどこから書き出していいものやら早速困ってしまった。どこをどう攻めても書物や資料によって仰っている事が微妙に違うのだ。結局は私の極めて個人的な見解や経験を元にした事しか書けないのねと、ちゃんとしたリサーチをするのはさっさとあきらめてしまった。
元来私は勉強の苦手なタイプ、しかもやらなきゃと思うと途端に逃げ出したくなる怠け者である。日本でミュージカルに関わらせていただいている頃もアカデミックなタイプの役者や歌い手では決してなかった。日本にいる友人達は私がコラムを書かせていただくなんて聞いたら驚いてひっくり返るだろう。世間様ははたして許してくれるのかと年老いた両親は身のすくむ思いをするに違いない。デキルデキルダイジョウブと楽観的なのは恐らく私と私のパートナーだけだがその根拠のない自信はどこから来るのかというと自分でも良くわからない。これもどん底からはじまったカナダでの生活経験が成せるワザなのだろうか。
私は音楽という物は元々とても個人的なものではないかと思っている。どうやら音楽は人の感情や記憶と密接につながっているらしい。演劇や映画等の場面で音楽が効果的に使われていたり、母親が赤ちゃんに子守歌を歌ったり、どの宗教にも楽器や音を使った祈りというものが存在したりというのは皆さまもご存知の通りである。
そして特定の曲を聴くと昔の感情や記憶が蘇るという経験をお持ちの方も少なくないと思う。リズミカルなサウンドを聴くと思わず身体を動かしてしまわないだろうか?素晴らしい演奏や歌を聴いて思わず涙ぐんだり鳥肌が立ったりしたことはないだろうか?カラオケボックスで気の合う友人と楽しく大声で歌った事は?貴方のトップスリーはどんな曲?
個人がそれぞれ違う性格や感情を持ち合わせているということは音楽の捉え方や感じ方も人それぞれだろう。特に生活様式が多様化して様々な選択がある現代では音楽に関わる方法も本当に様々だ。
子供の頃から音楽と切っても切れない生活をしてきた私は音楽というものに対して一概に言えない様々な感情を持っている。そして勇気を持って言わせていただければ、こんなはみ出し者の私だからこそ書ける事が、きっとその音楽という素晴らしい物の中にはあるということを信じ、これからも音楽の世界の片隅に少しだけでも関わって生きて行ければいいなぁとこれは素直にそして謙虚にそう思っている。
SAYAKA MUSIC STUDIO グリフィス千佳
兵庫県神戸市生まれ。モデルを経てライブや舞台を中心に歌手、役者として活躍。2012年に移住、現在はさやか音楽教室で講師を務める。1児の母。