マスターズ・チームUSA代表 オーラー麻季江さん × マッサージセラピスト青嶋正さん|プロアスリート対談

今回の対談相手は大きな怪我をすることなく、何十年とランナーを続けているオーラー麻季江さん。マスターズ・チームUSA代表として数々の世界大会でもメダルを獲得している麻季江さんと青嶋さんに長く競技を続けられる秘訣、怪我をしないコンディション作りなどについて話し合ってもらった。
青嶋: 麻季江さんは小さい頃からランナーとして競技に取り組んでいらっしゃったんですか?
麻季江: いえ、違うんですよ。東京で働いていたときに、会社の同僚にランナーがいて「リレーをやるから参加してくれ」と言われたんです。それで走ってみたら結構いいスピードで走れて。考えてみたら、高校の3年間、モダンダンスをやっていて、ほとんど365日、朝晩とも身体を動かしていましたね。だから体は出来ていたんだと思います。
青嶋: 確かに、はじめて体を診させてもらったときから言っていると思うのですが、非常にいいコンディションにあるんですよ。ずっとランナーでいらしたと思っていたので、これだけ長年やられてこの体を保っているんだったら、なにか秘密があるんだと思っていたのですが、その答えはモダンダンスですね。
麻季江: でも、たった3年なんですよ。ただ、怪我はしませんでしたね。
青嶋: モダンダンスは体の筋肉、関節全てを最大限まで使うイメージなので土台がないといけないし、全員がそんな体をもっている訳じゃないから間違った方法で無理をする人もいる。そういうこと無しにやってこられたんですね。そして、そこから働き出してリレーを始めるまでには期間があるわけですよね?
麻季江: 期間はありますね。わたし実は運動音痴で、だからこそ何か運動しなきゃ!と思っていて。色んなことに取り組んだんですけど、ジムとゴルフ、そして柔軟は継続していました。
青嶋: 柔軟性はキープされていたんですね。ちょっと話は変わるんですが、例えば流行りのエクササイズとか方法などに時間を費やしている人をどう思いますか?
麻季江: 何を信用していいか分からないんでしょうね。クリニックに行っても、コーチによっても、言うことがみんな違います。人の身体は皆それぞれ違うので、自分にあったものを見つける旅ですよね、アスリートは。
青嶋: 一生懸命やっているけど、実は本人もなにをやっているか分からない状態。これが、まさしく僕が一番懸念しているところ。究極で言うと必要なのはプランニングだと思うんです。でも、どの競技も、もっと速く、凄いことを期待される。単にスポーツとしての考え方と、「スポーツ+ビジネス」としての考え方で対応が変わる。スポーツという点では、ルール優先、アスリート優先であるべき。身体に対してのダメージというのが守られているべきだと思うんですよね。

麻季江: そういえば、先日トレーニング時にコーチに「君のいいところは継続性だよ。最後に怪我したのはいつ?」と聞かれたので「怪我はしたことないですね」と返したところ「そんな人いないよ?」と言われたんです。確かにそうなのかも。少なくとも病名が付いたことはないですね。腰が痛い、膝が痛いと言ってこちらにお世話になっていますけど。
青嶋: それでも私の患者さんの重症度レベルで言うと10段階中の3か4くらいですよ(笑)。逆に言うとその程度で痛いと感じるというのはいいことで、体や関節の動き、取り組み方に余裕があるのかなと思うんです。走ることに対するスタンスというか、ポジション的には今はどういった感じなんですか?
麻季江: マスターズなので、平均30〜40歳以上。オリンピックを目指す訳ではないのですが、その中で地域の大会、国の大会、世界大会があるんです。その世界大会にチームUSAとして出ています。現在は代表が400人くらい。その大会でメダルを獲るのが目的ですね。
青嶋: 全米で400人しかいないところで戦えるコンディションを保たれているということですよね。実際にメダルもたくさん獲られていますよね。
麻季江: もっと長期的にみる目的、目標というのは生涯スポーツだと思うんですよ、ランニングは。マスターズっていうのは年齢の上限がないですから、100歳の人も走ったりハードルを飛んだり。90歳以上は毎回世界記録が出ますから、見ていても凄いです。85歳の方でも、遠目からみたら50代くらいにしか見えませんよ。
青嶋: そういう人たちって何か特別なことをしていますか?それこそ流行りの何か取り入れてとか。
麻季江: いえ、気をつけているくらいでそういうことはしていないと思います。自分の身体を知り尽くしているんじゃないんですか。
青嶋: コーチは付いているんだろうけど、他の選手とは受け取り方が違うというか、従わないというか。ある意味、悪い生徒でもあるはずなんですよ。
麻季江: 100%コーチの言う通りにはできないですよ。例えば私はプロではないので、自分の好きなマラソンに勝手に申し込んだりするんです。年に数回は走りたいマラソンがあるんですよね、コーチはマラソンには出るなと言いますが。ただコーチが用意しているのはトラック競技とクロスカントリーで、マラソン用のメニューを組んだり、怪我をしたり腰が痛いと言っても、それ用のメニューは組んだりしてもらえないです。
ただマスターズの中に、コーチとしてオリンピックでも教えている友人がいて、その方にメールでお願いして、その都度特別なメニューを組んでもらっています。だから個人にあったメニューを組んでくれるコーチであれば最高だと思いますね。

青嶋: 怪我していない人をよりスキルアップさせたり鍛えるのが得意なトレーナーが多いですよね。僕はどちらかと言うと、怪我をしないようにするほうが得意です。
麻季江: その通りですね。怪我をしたあとより、怪我をする前のほうが大事です。予防医療みたいな感じですね!
ひとつ、お礼をさせてください。先日、マラソンに参加したんですが、練習も全くしておらず走れるわけないはずだったんです。
腰が痛すぎて、マラソンの数日前に青嶋先生にお世話になったわけですが、完走できて自己記録から6分しか遅くなかったんです。これは凄いことですよ。本当にびっくりしました。
青嶋: 実際に身体や考え方などに変化ありましたか?
麻季江: ハードな練習をするためには、それに耐えられるコンディションが大事なんだなと再認識しました。ただがむしゃらにやったってダメで、治してからやらないと。どうしてこうなったか、どこの筋肉からこの痛みが来るのか、どうしたら治るのかと具体的に説明してくださる方は中々いないですよ。

青嶋: これから走り始める子や、今走っていて悩んでいる方に対して麻季江さんの立場だから言えるメッセージをいただけますか。
麻季江: 小さい子については親が正しい知識を身に付けるべき、できれば親にも経験があるとか、少なくとも理解が必要ですよね。中高生については、走ること以外の運動も楽しむべきですね。体幹や柔軟性も必要だから違うことが結果的にプラスになります。あとは体の異変、疲れや可動域にも敏感になるべきです。ベテランの方は、青嶋さんのようなコンディション作りに正しい意見を持つ方を見つけることですね。コーチの言うことだけではなく、多面的から意見を聞く必要がありますね。
振り返ってみると、私が怪我しなかった理由は、痛いのが嫌いなんですよ。痛いのに頑張るってことがなかったんです。
青嶋: それはつまり日本人アスリートと全く逆の精神を持っていたということですね。








