Honda Indy Toronto参戦 世界トップレーシングドライバー佐藤琢磨選手インタビュー

モータースポーツの一つであり、北米を中心に行われている「インディシリーズ」で活躍している佐藤琢磨選手。今回トロントで行われたHonda Indy Torontoに参戦するためトロントへ。レース前にトロントの印象や日ごろ意識されていることなどについて伺った。
世界を飛び回っている佐藤選手にとって、トロント、カナダはどのように見えていますか?
トロントはファッショナブルな街ですね。この街が持つエネルギーや、美味しいレストラン、そしてもちろんレーストラックもチャレンジングで難易度が高いコースの一つなので楽しみにしてきました。さらにカナダのファンは熱心な方が多く、F1時代ケベック、モントリオールで試合をすることがあったのですが、トップ選手・チームだけではなく、全員を応援してくれるのです。それがトロントでも感じられ、ファンと競技者の距離が近いように感じます。レースするには楽しい場所ですね。
今回参戦されるHonda Indy Torontoの試合に期待することはなんですか?
トロントは2010年から走っているのですが、初めの数年はあまり結果が伴いませんでした。しかし一昨年、去年はベストに近い結果を出すことができたので、今年はさらにもう一歩上を目指して、ベストリザルトを期待しています。


時差や試合前の体、メンタルの調整の仕方はどのようにされているのですか?
なるべくはやく現地入りしたりして調節するようにしていますが、僕がベースとしているがインディアナポリスなのでトロントに来るにあったっては時差がないので問題なかったです。しかし場合によっては時差がある場所で試合を行ったり、短い期間に連続して試合を行ったりすることがあるので、シーズンイン中は体調を崩さないようにすることにフォーカスします。どこかにピークを持っていくのではなく、常に100%の状態を心がけています。冬のオフのときは全体的なレベルアップや足りないところや弱いところを補強しています。
インディカーは最高時速380㎞で走り抜けていきますが、景色はどのように見えているのですか?
速度が上がっていくと視野が狭くなり、レース中にピントが合っているのはコイン一枚分くらいだけなので、流れていく景色の中で0.1秒ミラーを見て、どこに誰がいるのか認識します。すぐに目線を前へ戻さないとあっという間にレーンが変わってしまったりするので、一瞬での判断力が必要になります。トレーニングをすればある程度は向上できるようですが、焦点を合わせる速度は先天的に優れていることがあると思います。
挑戦と目標とチャンスを明確にし、常に勝ちにこだわり攻めの姿勢を持ち続ける佐藤選手が一番大切にしていることとはなんでしょう?
挑戦を続けることだと思います。最終目標は高く、夢は大きく持ってかつ、現実的に達成可能な目標も作ります。大きい目標だけ作ってしまうとなかなか達成できず、精神的にきつかったり、途中で挫折してしまうと思います。なので過程を大切にして、身近なところで目標を達成するたびにサポートしてくれた人々への感謝と自分自身もほめてあげないと、やっていて面白くないですよね。それと帽子のエッジにも書いてある、No Attack No Chanceという言葉を大切にしています。それぞれ平等に運不運は起こると思うのですが、本当に自分に必要な時に運が来るかどうかわからないですよね。だからそのチャンスを自ら生み出し、ドアを開くためにアタックをし続けています。
レースをする中でエンジニアとのコミュニケーション、チームワークがとても大事だと思いますが、どのようにして信頼関係を築かれていくのですか?
もちろん時間というのもありますが、いろんなやり方があります。初めて日本を飛び出してイギリスに行った頃は英語の単語なりセンテンスなりというよりも、現地の人と同じ空気をすって、同じ食べ物を食べて、共有する部分を多くすることを大切にしていました。言葉も大切ですが、実際は言葉だけではないと思います。親しい人と初めて会う人では話し方や接し方が変わってきますよね。時間の許す限り共有するものを多くすることが信頼関係を築く上でも大切だと思います。
もう一つは同じ目標を目指すことです。僕たちの目標はシンプルで、一位を取るためにより速く走るという目標を持っています。リスペクトしあって相手の意見を聞きつつ、自分の意見もテーブルに乗せることが大切です。多少意見が食い違っても、自分の意見に自信があるならリクエストを貫き通すこともあります。まずやってみることが大切で、挑戦してみて結果が伴えば、そこで信頼関係が築かれていきます。ディスカッション、試行錯誤をかさねて、結果的に信頼関係が深まっていくと思います。

世界のレースで活躍される中で、どのように英語を習得されたのかお聞きしてもよろしいですか?
生きた英語は本当の英語を使わないと出てこないと思います。話したくても単語がわからないと話せないので単語を覚えることは大切です。ただ、始めは文をどのように組み立てるかよりも、なんとか自分の話が通じた時に相手がどのように返してくるか聞いて真似をするとこがポイントです。
初めのころは頭の中でまず日本語で考えてから、それを英語に直していますが、それだと考えている間に相手がいなくなってしまうので、すべて英語で考えて話すことが必要になります。そのためにはある程度場数を踏む必要があり、僕の場合は1年から1年半かかりました。とにかくたくさんの人と話して、笑って、怒って、と生きたサバイバルイングリッシュを学ぶことが一番の近道だと思います。
TORJA読者へメッセージをお願いします。
レースの良さというのは現場の迫力を五感をつかって感じてもらうことだと思うので、お時間があれば会場に足を運んでいただきたいです。トロントは日本人を含めたアジアのコミュニティも大きいのでたくさんの日本語で頑張れとか日本語が母国語ではない人が日本語で応援してくれると嬉しいです。

佐藤琢磨さん / takumasato.com
1977年東京生まれ。幼いころのF1観戦の夢を追いかけ高校時代行っていた自転車競技からモータースポーツへ。2002年〜2008年まで史上7人目の日本人F1ドライバーとして活躍。数々の輝かしい記録を打ち出したのち、2010年からは活動の拠点を新天地アメリカに移し、米国最高峰のフォーミュラカーレース「IZODインディカー・シリーズ」に参戦。日本人ドライバー史上初のポールポジションを獲得、サンパウロで、インディカー・シリーズでは3位表彰台を果たし、2013年の第3戦ロングビーチでは初優勝を飾った。そして今回30周年を迎えるHonda Indy Torontoに参戦。




