終戦80年を見つめる― サーロー節子さん講演と映画 『ヒロシマへの誓い:The Vow From Hiroshima』上映会 | カナダニュース報道局

「TORJA報道局」は、カナダで暮らす皆さんに役立つニュース、エンタメ、コミュニティーの話題、地元のお得情報をお届けします。話題の出来事から、生活に役立つ豆知識まで、知りたいことを分かりやすくお届けします。
共催: NAJCハミルトン、NAJCヒューマンライツコミッティー、トロント都道府県人会・連合会グレーター・バンクーバー日系カナダ市民協会(JVJCCA)

2025年7月5日(土)、カナダ・オンタリオ州ハミルトン市にある90年の歴史を誇るウェストデール・シアターで、「終戦80年:広島・長崎を通じて戦争を考える」記念イベントが開催された。今年は、終戦から80年という大きな節目の年。戦争の悲劇を振り返り、平和の大切さを次世代に伝えるための貴重な機会となった。
サーロー節子さんが語る
平和への願い
イベントでは、広島の被爆者であり、2017年にノーベル平和賞を受賞したサーロー節子さんを迎え、平和への強い思いを直接伺うことができた。さらに、彼女の人生と信念を描いたドキュメンタリー映画の上映も行われた。この作品は、サーローさんが体験した原爆の記憶や、核廃絶を訴え続けてきた長年の活動を記録した感動的なドキュメンタリーで、会場は深い静寂と共感に包まれた。
平和教育の先駆者
Karen Goodfellowさん

サーローさんと共に広島を訪れ、その後トロント教育委員会(TDSB)で平和教育に取り組んできたカレン・グッドフェローさんも登壇。自身の体験や教育現場での活動について語り、平和の尊さを世代を超えて共有する大切さを伝えた。
バンクーバーともオンラインで同時開催

幕開け

イベントは、ハミルトン会場だけでなくバンクーバーともオンラインでつながり、サーローさんの友人であり戦争体験を語り継ぐゲストも参加。地域や世代を超えた対話の場として、大きな意味を持つ時間となった。
サーロー節子さんの語り ― カナダの平和活動と現在への思い
舞台に登壇したサーロー節子さんは、カナダで取り組んできた平和教育の歩みを振り返りながら、次のように語った。
「先ほどスピーチしてくれたカレン・グッドフェローさんは、かつて私たちが選んだ生徒のひとりです。トロント教育委員会(TDSB)と一緒にエッセイコンテストを行い、優秀な作品を書いた生徒2人を広島に連れて行きました。私が引率者となり、彼女たちはカナダでの暮らしや平和への考えを日本で共有し、素晴らしい親善大使として活躍してくれました。
その訪問はCBCやNHKによるドキュメンタリーにもなり、帰国後は現地での体験をカナダの学生たちに伝えました。当時の首相、ブライアン・マルルーニー元首相もカレンをオタワに招き、彼女の話を直接聞いたほどで、非常に大きな成功を収めたプログラムだったのです。あの頃は、教皇の訪問や平和ゾーンの設立など、次々と意義あることが起きていました。トロントは平和への活動で本当に活気にあふれていたと思います。
ですが、残念ながらこの8、9年ほど、カナダはこの問題に対して何もしていないように感じます。少なくとも前首相の父親のピエール・トルドー元首相は、この問題に強い信念を持っておられました。私は1978年、彼が国連で『Strategy of Suffocation』と呼ばれる演説(*)を直接聞きました。
元首相はアメリカを敵に回すことを承知で発言し、とても勇気ある人でした。政策立案者の中には彼を敵視した人もいたかもしれませんが、彼は世界中から大きな尊敬を集めました。彼は平和と軍縮を強く求め続けていたのです。」
サーローさんはこう語りながら、ここ数年の停滞への不満を率直に表現しつつも、「真に勇気ある声」が平和の礎となることを強調した。
「ひとつの命」の重みを、世界に伝えるために─
核兵器の恐ろしさを、自身の体験と共に語り続けてきたサーロー節子さん。サーロー節子さんは、被爆で失われた学友たちの記憶を胸に、世界中を旅しながら平和を訴え続けている。
彼女が世界各地で持ち歩くのは、351人の同級生と教師の名前が記された布。彼女は次のように語った。
「私はこれを持って世界中を旅しています。広島の女子校時代の同窓会にお願いして、私のクラスメート351人と何人かの先生方の名前を書いてもらいました。その一つ一つの漢字は、一つの命を意味します。そして、351人がこの地球上から一瞬で消えてしまったのです。
この話をするとき、ぜひ私の気持ちを一緒に感じてください。私は過去80年間、彼らの声を代わりに届けるために話し続けてきました。これからも、彼らの声、そして私自身の声を、共に伝えていきたいのです。」
その言葉には、失われた命への哀悼と、平和への強い願いが静かに、しかし力強く込められていた。
平和を考える貴重な機会

新移住者コミッティー委員長であり、トロント都道府県人会・連合会の代表を務める原あんずさんは、今回の企画を通してサーロー節子さんと時間を共にしながら、「伝えること」と「つなぐこと」の大切さを改めて実感したという。平和活動とコミュニティー活動に通じる思いを重ねる中で、未来への希望や次世代へ託すことの意義を深く学んだと語ってくれた。


戦争を知らない世代が増える中、このイベントは「過去を知り、平和を考える」ための重要な場となった。来場者からは「サーローさんの言葉に深く心を打たれた」「自分の世代が次へ語り継いでいかなければならない」といった声が寄せられ、平和への思いが静かに、しかし確かに広がる一日となった。





