ドキュメンタリー作品「The Exhibition」プロデューサー 山本 美穂さん
北米最大ドキュメンタリー映画祭
HotDocs開催
4月5日から5月5日にかけてトロントで行われた北米最大のドキュメンタリー映画祭「Hot Docs」。そこでワールドプレミア上映された二つの作品から、「Cutie and the Boxer」主演の一人であるアーティストの篠原有司男さん「The Exhibition」共同プロデューサーの山本美穂さんにそれぞれお話を伺った。
北米最大のドキュメンタリー映画祭「Hot Docs」にてワールドプレミア上映された「The Exhibition」。バンクーバーで起こったカナダ犯罪史上最悪の連続殺人事件を、一人のアーティストのプロジェクトを通して見つめていくこの作品で共同プロデューサーを務めた山本美穂さんにお話を伺った。
撮影参加のいきさつ
監督のDamon Vignaleは2007年からアーティストPamela Masikのプロジェクトをカメラで追っていたのですが、彼女が画く69人のThe Missing Womenについてさらに深い取材をするためには女性のプロデューサーの存在が必須であると感じ、共同でプロデュースしてくれないかというオファーがあったのが始まりです。以前から彼がこのドキュメンタリーを撮っていた事を知っていて「完成したら非常に力強い作品になるだろうな。」と思っていたので、二つ返事でオファーを了承し、それから4年、ようやく上映まで辿り着きました。
制作時の仕事内容
プロデューサーとは名ばかりで、実際には制作に関するほぼ全ての領域に関わっていました。一番苦労したのは事実を把握するために被害者の家族や友人を含めた広範囲に渡る多角的なインタビューを取り付ける事でした。非常にセンシティブな内容だけに、信頼関係が築けなければ決して本当の事は話してもらえないですし、何度も足を運んで初めて撮影許可をもらえた事も度々でした。撮影時にはBカメラを担当し、平日には別でテレビ番組制作のフルタイムの仕事もしていたので、数年間、休日のない二足のわらじ生活が続きました。
この作品を通して伝えたいこと
カナダ犯罪史上最悪の連続殺人事件は、なぜこのような結果を招いてしまったのか。”Canada’s Poorest Postal Code” と呼ばれるDowntown Eastsideでは、今現在も被害者の女性達が味わった苦しみと同じ日常が繰り返されています。一人のアーティストのプロジェクトを通して、カナダ国民が歴史的に抱えている陰の部分に光を当て、観て下さった方々の心に小さな種を植えられればと願っています。100人に100通りの意見や答えが出るはずです。それを誰かとシェアしていただき、論議していただけたらありがたいです。そして、ご自身の住んでいるコミュニティの中で何かポジティブな変化を起こす原動力にして頂けたらこれ以上嬉しい事はないですね。
日本でもメディアで働いていた山本さんが感じる、日本と海外の制作現場の違い
日本との一番大きな違いは自己主張する力が非常に要求されるという所ではないでしょうか。日本の場合はチームの和を尊重して思った事を言わなかったり、阿吽の呼吸で物事を進められたりしますが、北米のクルーと仕事をする時にはそれはほとんど通用しませんね(笑)自分はこう思う、こうするべきだ、とハッキリ自分の意見を押し出していくことが必要です。しかし、日本人の勤勉さや細部にまでこだわる部分は非常に貴重な資質なので、そこは失わないように気をつけています。バンクーバーに移住して9年が経とうとしていますが、 日本文化の良い所と北米文化の良い所を程よくミックスして、やっと自分のスタイルが出来上がってきたというのが実感です。