第42回カナダ連邦議会選挙
カナダ国民が注目する4年に一度の総選挙 第42回カナダ連邦議会選挙
選挙といえば昨年10月末に行われたトロント市長選が記憶に新しい。今年はカナダの首相を決めるカナダ総選挙が行われる年。カナダの政治・選挙制度について紹介するとともに注目の首相候補者についてまとめた。
▶︎2015年に行われるカナダ総選挙
2015年に予定されている第42回カナダ連邦議会選挙。現在のところ、10月29日に実施される予定。内閣総解散がない限り、予定日が早まることはない。カナダでは上院、下院と議会が分かれていて、その内、上院は任命制、下院は国民が選挙で決めることになっている。通常、カナダの下院の任期は5年だが選挙は4年目に実施されることが多い。▶︎
▶︎カナダの政治・選挙制度
まず、カナダで投票に参加できるのは18歳以上のカナダ国民。また、不在者投票制度もある為、カナダ国外に5年以上居住していても戻る意思がある人、旅行やビジネスを含み遠隔地にいて投票日に投票所に行けない人など、この制度を利用して投票することが出来る。カナダでは2002年以降、全ての収監中の人にも選挙権が与えられている。
選挙制度は、単純小選挙区制を採用している為、各選挙区から一人の当選者を選ぶことになる。議会の議席は、10年毎の国勢調査の結果に基づいて決定される。2004年から前回の2011年連邦議会選挙の時までは308議席だっが、今回の選挙では338議席を争うことになる。
▶︎カナダの政党
カナダにおける諸政党は何だろうか。まず、現首相スティーブン・ハーパー率いる保守党。前回の選挙で大躍進し、結党以来初の野党第一党となったトーマス・マクレア率いる新民主党。これまで政権与党もしくは野党第一党であった、ジャスティン・トルドー率いる自由党。ケベック州の独立を主張するケベック連合。そして環境保護を訴える緑の党がある。
▶︎前回の総選挙
議会により内閣不信任案が可決されたことにより、2011年5月2日に選挙は行われた。選挙の焦点は、政権を獲得したものの少数与党である保守党が過半数を確保できるかどうかであった。結果は保守党が308議席中166議席を確保し、政権発足以来、初の過半数獲得となった。その一方で、自由党は大きく議席を失い34議席で第三党へ転落。新民主党はケベック州で多くの勝利を得て103議席を獲得。初の野党第一党となった。ケベック連合は選挙戦からは蚊帳の外状態で、4議席のみの確保。緑の党は、2008年の選挙と比べ得票率は落ちたものの、党首のエリザベス・メイが初の当選となり、1議席を確保した。
▶︎今回の総選挙
今回の選挙で勝利を得た政党から首相が選ばれるので、実質首相を決める選挙と言っても過言ではない。現在の内閣支持率は、2013年の中盤からやや回復し、30%前後を推移している。また、2014年12月1日に実施された各党の支持率調査では、自由党が34%、保守党が33%、新民主党が24%、ケベック連合が5%、緑の党が4%となっている。現政権与党である保守党が調査結果では2位につけているものの、2013年の上院議員による手当不正受給問題等で保守党に対しての国民の不信感が拭えていないようだ。加えて、2013年から自由党の党首がピエール・トルドー元首相の息子であるジャスティン・トルドーに変わったことにより、自由党の支持率が底堅いものになっていると見える。また、誰が首相にふさわしいかという意識調査では、現職のスティーブン・ハーパーと自由党の党首ジャスティン・トルドーが調査の度に首位を争っている。別の調査会社による各地域の支持率調査でも保守党・自由党が接戦の中、新民主党が追いかける形となっている。
首相候補者たちに注目!!
スティーブン・ハーパー
保守党所属。55歳。トロント出身。2006年より現職。
主に経済成長と雇用創出に重点を置き、2015年の財政黒字化を目指している。減税の維持、失業率の改善、インフラ整備への大規模な投資、小規模ビジネス支援、職業能力訓練のサポート、移民制度の見直しを挙げている。治安対策では、犯罪被害者への救済措置、小児性犯罪者やカナダ国外での犯罪者への対策、警察と国境警備隊との情報共有、テロ対策、女性への犯罪や暴力の厳罰化などを挙げており、他にもファミリー及びコミュニティ向けの政策も打ち出している。
ジャスティン・トルドー
自由党所属。43歳。オタワ出身。2013年より自由党党首。
経済政策として、中間層の待遇改善を中心に、企業への新規雇用補助、175,000人の雇用創出、インフラ投資による雇用創出・生産性及び生活の質の向上を訴えている。社会政策では、ホームケアの強化、メンタルヘルス対策、待機児童の解消、先住民の人権保護、購入可能な住宅の整備。エネルギー政策では、環境保護かつ持続可能な方法で資源開発を行うことを提案し、治安対策では犯罪防止、被害者救済及び再犯防止、銃犯罪の厳罰化、国内のテロリズム対策を上げている。
トーマス・マクレア
新民主党所属。60歳。オタワ出身。2012年より新民主党党首。
人権問題(男女平等やLGBTの人権保護、身体的または精神的障害を抱えている者、先住民の人権保護)、異文化コミュニケーションの促進、公共福祉の充実、生活水準に見合う最低賃金額の上昇、政府の規制による環境保護の改善、全国規模の水の安全性の確保、大企業への法人税増税、小規模ビジネスへの法人税減税、現在の任命による上院制度の廃止及び比例代表制の導入などを提案している。
エリザベス・メイ
緑の党所属。60歳。米国・コネチカット州出身。2006年より緑の党党首。
環境保護を中心に政策を展開。経済政策としては、再生可能エネルギーへの投資、公共鉄道の拡充、雇用創出、年金保護、持続可能な視点に立っての貿易契約の見直し、環境保護に寄与する第一次産業の推進、原発や化石燃料への補助金削減を訴えている。コミュニティ政策では、扶養控除やFamily Taxの見直し、在宅勤務やワーキングシェア、フレックスタイム、職場での育児スペースの拡充、育児休暇からの職場復帰サポート、老人虐待の防止及びサポートを挙げている。