【第8回】カナダでの結婚にはマリッジ・ライセンスが必要です|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
カナダで結婚するには、マリッジ・ライセンスが必要です。けれどもライセンスという言葉から連想される試験や資格審査があるわけではありません。マリッジ・ライセンスは、年齢と結婚していないことが証明できれば、誰でも入手できます。
今回は、日本にはないこのマリッジ・ライセンスについて、詳しく紹介しましょう。
結婚できる年齢
カナダでは男女共に16歳になれば結婚できます。ただし18歳までは親の同意が必要です。
現在日本では、男性は18歳以上、女性は16歳以上で結婚できますが、未成年者(現行20歳以下)の結婚には親が同意しなければなりません。
成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる民法改正に伴い、2022年4月からは、男女共に18歳になれば結婚できるようになります。18歳は成人ですから親の同意もいらなくなります。
年齢は、パスポートや免許証など生年月日が記された政府発行の書類で証明できます。では、結婚していないことはどう証明するのでしょう。
重婚を防ぐためのマリッジ・ライセンス
カナダでも日本でも重婚は犯罪です。ですから、マリッジ・ライセンスを申請するためのもう一つの条件は、結婚していないことです。
戸籍制度のおかげで、日本では、すでに結婚している人の婚姻届が受理されることはありません。これに対し、カナダで離婚歴がある人がマリッジ・ライセンスを申請するには、一般にディボース・ペーパーと呼ばれる離婚証明書を入手しなければなりません。これは、離婚が受理された裁判所で発行してくれます。
カナダでは、離婚以前に法的別居というステップを踏む人が多く、配偶者と長期間別居したまま正式な離婚が成立していない場合もあります。法的別居が裁判所に登録されていても、法律上の離婚が成立しないまま別の人と結婚することはできません。
国際結婚と独身証明
さて、日本生まれの人がカナダで国際結婚する際には、本籍所在地で「婚姻要件具備証明書」を取得しましょう。初婚でも再婚でも、戸籍によって結婚していないことが証明できます。
オンタリオ州在住の日本人の婚姻要件具備証明書申請は、オタワの日本大使館の領事部やトロントの総領事館でも申請できます。
一方、日本人が日本で国際結婚をする場合には、配偶者となる方の独身証明が必要です。配偶者の出身国の在日公館(大使館や総領事館)で発行してもらったものを日本語に訳して婚姻届と同時に提出しなければなりません。
尚、翻訳が必要な場合、翻訳者は本人でも構いませんが、きちんと翻訳者の氏名を記載しておかなければなりません。
マリッジ・ライセンスvsマリッジ・サーティフィケート
さて、マリッジ・ライセンスを手に入れたら、3ヶ月以内に正式な婚姻手続を行ってください。カナダでは、マリッジ・オフィシエントという有資格者が婚姻の手続を行います。この有資格者の前で立会人と一緒に署名した書類が州政府に提出されれば、数週間で受理されます。
婚姻が受理されたら、早めにマリッジ・サーティフィケート(婚姻証明書)を入手しておきましょう。オンタリオ州で挙式した場合は、サービス・オンタリオで申請出来ます。
マリッジ・サーティフィケートは、カナダでの正式な婚姻を証明する唯一の文書です。後に法的に認められた配偶者であることを証明しなければならなくなった時、これが必要になります。離婚申請でも、マリッジ・サーティフィケートの提出が求められます。
〈注意点〉
1. 戸籍一つで出生から死亡までの家族関係のすべてが証明できる日本と違い、出生証明、婚姻証明、離婚証明などは別々に発行されますので、それぞれをきちんと保管してください。
2. 結婚や離婚に際する法的な権利を守るためには、家族法専門弁護士のアドバイスを求めることがとても重要です。
ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)
日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。
野口洋美: B.A. M.A.
ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。