【第26回】国際離婚:「配偶者扶養」と「婚姻費用」!?|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
前回、配偶者に対する扶養義務についてお話したところ、カナダの「配偶者扶養」とは、日本の「婚姻費用」のことですか?との質問がありました。そこで今回は、カナダと日本の配偶者に対する扶養義務を比較してみることにしました。カナダの「配偶者扶養」は、エキスパート弁護士、ケン・ネイソンズのアドバイスを、そして日本の「婚姻費用」については、裁判所のホームページの婚姻費用の分担請求調停を参照しました。
配偶者の生活レベルを保つため
「配偶者扶養」も「婚姻費用」も同居していた頃と同レベルの生活を保つため、収入の高い配偶者が収入の低い配偶者に対して行う金銭支援です。しかし、この二つには決定的な違いがあります。
カナダの「配偶者扶養」は、正式に離婚が成立した後も継続する扶養義務です。一方日本の「婚姻費用」は、別居した家族への扶養義務で、法的離婚が成立した後は、配偶者への扶養義務は終了し、子への扶養義務のみが残ります。
裁判所のホームページではこの理由が明らかにされていませんが、「離婚に伴う財産分与が終了する」「配偶者は自立を求められる」などがその理由であると伺われます。
婚姻費用に含まれるもの
婚姻費用とは「夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用」で「衣食住の費用のほか、出産費、医療費、未成熟子の養育費、教育費、相当の交際費など」がその内訳です。つまり、カナダの「養育費」「養育経費」「配偶者扶養費」を一括するものです。
尚、カナダでは、「養育費」と「配偶者扶養費」によって、双方の家庭の生活費が均等になることが目安です。生活費以外の子の養育に関する経費(教育や医療)は、実際にかかった費用の分担額を請求する「養育経費」で賄います。
婚姻費用の決め方
別居時に夫と妻の間でその分担が決められない場合、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申立て、分担が決定すれば申立日にさかのぼって支払いが開始されます。
カナダの「配偶者扶養」と異なり、日本の「婚姻費用」は家裁に申立てない限りその支払いを強制できません。また、申立日以前の未払い分を請求しても認められません。ですから、話し合いができない、話し合っても決まらない場合には、なるべく早い申立てが必要です。
尚、調停が不成立となった場合には、審判で決定されます。調停は裁判所が選んだ調停人の提案や助言を受けての話合いですが、審判は審判員が審理を行う裁判手続きですので、当事者の意向は反映されません。
婚姻費用の金額
日本には、「養育費ガイドライン」「配偶者扶養ガイドライン」のような指針は存在しませんでした。しかし、最近行われた「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」を踏まえ、2019年12月23日に「標準算定方式・算定表」が公表されました。
この算定表は、夫婦の年収と子供の数、子供の年齢などで細分化されています。例えば、夫の年収500万円で、収入のない妻が15歳以下の子供二人と暮らしている場合、夫は妻に月額12万~14万円を支払うことになります。
算定表以外にも「双方の資産、支出」なども考慮されます。つまり、雇用収入はなくとも資産家であった場合などがそれです。カナダ同様「一緒に暮らしていた時のライフスタイルを保つため必要最低限」が目安とされているようです。
ネイソンズ・シーゲル法律事務所は、オンタリオ州に暮らす日本人同士の離婚も手掛けています。国籍にかかわらず、オンタリオ州在住者の離婚には、オンタリオ州の法律が適用されます。
日加の扶養義務や税制の違い、さらに日本人特有の感情面までも十分理解する当事務所では、東京の家族法専門の弁護士事務所との連携により、日本の裁判所での調停を経由することなく、日本でも執行可能な同意書の作成が可能となりました。
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