ゴルフ体験記 第7回 LPGA 小林浩美選手との出会い…
ラスベガスへ仕事で出かけた折、もちろんゴルフ場にも行きました。一人で練習していても面白くないので、プロショップでレッスンを頼むことにしました。手の空いていた先生は白髪まじり、いや全部白髪の老人の先生が一人、80歳ぐらいの方です。こんなヨボヨボ爺さんで大丈夫かな、と心配していると、そこのプロが「君はラッキーだよ、あの先生の手が空いていて」と言うのです。訳が分からないまま、レッスンを受けることにしました。
その先生に、誰もいない練習場の裏手に連れて行かれ、「何を教わりたいの?」と聞かれました。悩みは、7番アイアンでも5番アイアンでも飛距離が変わらないこと、と伝えると、それなら「肩を回しなさい」と一言。言われた通りにいつもよりも左肩を回してスイングすると、「それじゃダメ。もっと回しなさい」と言います。50歳になり身体が硬くなった所為か、思うように身体を捻ることができません。「これ以上回すとボールが見えません」と苦情を言うと、「それでも構わない、もっと、もっと回しなさい」の一点張り。
言われた通りボールが見えなくなるまで左肩を回してスイングすると、案の定クラブがボールに当りません。空振りです。いつかの苦い経験を思い出しました。救われたのは、辺りに先生以外だれもいなかったことです。次は、チョロ、また空振り、またチョロの繰り返しです。もう、泣きそうになりました。50男の涙?キモチワルい…。
20球ぐらい打った頃でしょうか、偶然、クラブにボールが当りました。そのボールは、右高く飛んで行って、頂点でぐるりと回転しターゲットの方向に戻ってくるではありませんか。まるでブーメランの如くです。あれっ、あれは誰のボール?と言いたくなるほどスバラシイ、ドローボールです。そんなボールは打ったことがありません。それから何度打っても同じようにドローボールが出るようになりました。「これで、7番と5番のアイアンの飛距離は違いますよ」、と言ってレッスンはおしまい。30分で60ドルでした。
そのレッスンの後、カップルの組に入れてもらって、ラウンドすることにしました。ティグランドに立った時、今までのようにフェアウエイに向かって安全に打つべきか、それともさっき教わった方法で打つべきか、迷いましたが、エーイ、ママヨとばかり、思い切り左肩を回してスイング…。するとどうでしょう、ボールがOBの方向に飛んで行ったかと思うと、ちゃんとフェアウエイに戻ってくるではありませんか。すると、ご一緒したカップルがナイスショット!と言って拍手してくれます。「貴方は日本のプロですか?」ですって。このラスベガスでの1日、生涯記憶にに残る楽しいゴルフになりました。
そして、このレッスンのお陰で、憧れのシングルハンディのゴルファーになることができました。安い60ドルでした。
カナダ・ゴルフ・ティーチングプロ 藤井 勇
ゴルフ暦:38年 オンタリオ公式ハンディキャップ:7
2006年9月25日にオンタリオ州クロスウインズ・ゴルフクラブで行われた2006年度カナディアン・ゴルフティチャーズカップに初挑戦し、スー パーシニア部で初優勝。2007年10月にラスベガスで開催されたゴルフティチャーズ・ワールドカップにカナダ代表として初出場、スーパーシニア部門で4 位入賞。2009年度カナディアン・ゴルフティチャーズカップに再挑戦し、スーパーシニア部門で2度目の優勝を飾った。