前代未聞 – Study Permitの発行数の上限を設置?!|カナダで永住権! トロント発信の移民・結婚・就労ビザ情報
つい先日、カナダ移民局(IRCC)のフレイザー大臣は、「連邦政府はStudy Permitの発行数の上限を設けるべきである」との意見を述べました。このショッキングな発言の意図について、そしてこの発言に対する世論について、今月号では解説します。
移民局大臣の発言
フレイザー大臣は具体的に何を述べたのでしょうか。先日行われた政府の会見にて、「現在カナダが直面している、住宅市場の危機は一体何が原因で起こったのかと考えた時、私が考えるのはカナダの学校が、留学生を受け入れ過ぎたことが原因の一つであると思う」と発言しました。この発言の後、フレイザー大臣は注意深く「ただし、全ての学校がこの例に該当する訳ではない」と補足しました。ではどのような学校が「留学生を受け入れ過ぎている」と結論付けたのでしょうか。
移民局が「カナダの学校の規模に対して受け入れた留学生の数」についてリサーチを実施したところ、学校が収容できる生徒数の5、6倍の人数の留学生を受け入れている学校が存在することが判明しました。このような学校についてフレイザー大臣は、「どう考えても将来のPR保持者、あるいはカナダ国民に対して良質的な教育を提供しているのではなく、留学生からできる限りの大金を得ようとしているとしか思えない」と厳しい言葉で結論付けました。そして今回、カナダ政府はこのような学校のみを対象にして、Study Permitの発行数の上限を決めるべきだと提案したのです。
カナダの現状
2015年は21万人程度に発行されていたStudy Permitですが、現在では年間その倍以上の51万人に発行されています。そして現在、カナダ全土において有効なStudy Permitを保持する人は80万人以上存在すると言われています。
カナダはコロナ禍以来、住宅市場の危機に陥っています。家やコンドミニアムの値段が信じられない程上がり、賃貸物件の料金も同様に上昇しています。もはやトロントのGPAのみだけでなく、GPAを離れた地域も含む、オンタリオ州、他州、そしてカナダ全体でこの問題が人々を苦しめています。
人それぞれ意見はありますが、ここまで酷くなったのは一重にトルドー首相がしっかりと「今まで軽視され続けていたカナダの住宅数を増やす」というミッションを果たしてこなかったこと、そしてコロナ禍で不況の間も含めて、カナダという国は毎年国外からの移民を受け入れ続けていたことに原因があるのではないか、と一般的に言われています。
ただしカナダは移民の国ですし、むしろ移民がいなければここまで発展しなかった国ですから、国民の大多数が暗黙の了解で「どんなことが起きても、移民のせいにしてはいけない」というルールを守っています。
フレイザー大臣もその一人で、「私は留学生の数が増えたことが、住宅市場の危機に連結していると述べたが、移民のせいでこうなった、とは言っていない。一部の政治家よりそのような発言があるようだが、我々は絶対に移民のせいにはしてはいけない」と述べています。
世論
フレイザー大臣が提案した、「Study Permit発行数の上限を、該当学校のみに対して設ける」ことについて、The Globe and Mailニュースは「そんなに簡単なことではない」と警笛を鳴らします。
その理由は留学生がカナダ人・PR保持者に比べて10倍以上の授業料を支払っているため、Study Permitの数が制限されるということは、その分カナダは留学生からの収入が大幅に減るため、経済的に大きなダメージを負うことに繋がることです。そしてカナダ政府の援助を受けて設立したカナダの学校は、(カナダ人・PR保持者に対する授業料を必要以上に上げてはいけないというルールがあるため)過去に例があったように結果的に学校が破産するというシナリオも免れないとの見解を示しています。
また先日、カナダ移民局はStudy Permit保持者に対して、「セメスター中であっても、今後はフルタイムで就労して良い」というルールに変更したように(以前は1週間で20時間までの就労可)、留学生は実際には勉学に励んでいる時間よりも、就労している時間の方が長いという統計が出ています。従って不況を抜け出すためには留学生のような若い即戦力が必要である、そして結果的に移民が更に住宅を建てていかなければ、住宅危機を乗り越えられないと述べています。
結論
今後、(住宅市場の危機が原因でなくても)明らかに教育ではなく、留学生の大金を狙ってAcceptance Letterを出し続ける学校に対して何らの処置が行われる可能性はあるかもしれません。その過程において、Study Permit発行数が上限されるというルールが設けられることは、現在の移民政策と相反するものですので(首相の移民政策が変更されない限り)可能性は低いと考えます。