カナダで憧れの企業に転職!
カナダ三井物産
江野脇 健さん
Deputy General Manager of Motor Vehicles, Machinery and Transportation Systems Dept.(Toronto)
カナダでキャリアップのための転職を実現し、日本を代表する企業で重要な役割を果たすビジネスマンの素顔に迫る。日本の就職人気企業ランキングでは常にトップに選ばれる大手総合商社、三井物産。ここカナダでも多岐に渡る事業を展開している。42歳の江野脇さんは日本の企業からカナダの企業に転職。MBAを取得し、出世を重ねる中でカナダ三井物産に転職。自身のキャリアシーンを語ってもらうとともに、カナダ三井物産が人材育成のためにどのような教育・研修を持ち合わせているのかなどを教えてもらった。
日本の大学を卒業して機械メーカーに就職したという江野脇さんですが、カナダで働くことになってきっかけを教えてください。
大学卒業後、自動車の製造設備を作る会社でエンジニアをしていました。入社してから大体3年間ほど働いた時に、私の勤めていた会社がカナダの取引先に大きなビジネスで機械を納品することになりました。その時に機械をインストールしたりするスーパーバイザーとして初めて来加しました。当時、カナダの仕事が終わった時にはアメリカ駐在が決まっていたのですが、カナダの会社が私を雇いたい、と仕事をオファーしてくれたことと、私自身で海外に出てきたいという考えと希望が一致したので日本の会社を退社し、そのゲルフにあるGMやフォードなどの自動車メーカーに部品を収める部品メーカーに転職をしました。
順当に昇進を重ね、またMBAも取得するなどキャリアを重ねていた江野脇さんですが、カナダ三井物産に転職したきっかけを教えてください。
2000年にゲルフにある自動車部品メーカーに転職してからも生産技術のエンジニアをしていました。そこで3年間ほど勤めました。始めの2年が過ぎたころからカナダには年功序列がなく、実力があれば若い人でも認められ、昇進していくことが良いなと感じ始めていました。なぜ若くして昇進が早いのかと考えた時に、学位をしっかり持っていることの重要性に気が付きました。私も当時英語がまだ十分にできなかったので、学校に通いたいと思い始めているところでした。そこでMBAを受ける決意をし、挑戦したところ受かったので会社を辞めて2003年から2年間フルタイムで勉強に励みました。ウエスタン・オンタリオ大学在学中はデトロイトにある会社でインターンなども行いました。インターン先でも内定を頂いていましたが、いろいろ考慮して元々働いていたゲルフの会社にプログラム・マネージャーとして戻ることにしました。
仕事に復帰して2年ほど経ったころにエンジニアとしてもプロモーション(社内での昇格・昇進制度)を受けたりしたのですが、社内の出来事で私自身環境を変えようかと人材派遣の会社に登録をしました。登録したのは2007年ぐらいで、直後は特に何もなくゲルフの会社で仕事を続けていました。そして2008年にはその会社で生産技術責任者を任されるようになりました。その時に私の下には15人ほどの部下がいて、工場の生産設備や生産の立ち上げ計画などを任されるようになりました。その仕事を3年間ほど続けたころに、昔登録した人材派遣会社から連絡があり、「三井物産で人を探しているのでいかがですか?」と紹介を受けたので面接を受けることにしました。そして仕事のオファーを頂いたのでゲルフの会社を退社し、カナダ三井物産に転職することになりました。
転職を決意するポイントは何だったのでしょうか?
前の会社でも人材派遣会社から声が掛かるまでの間は一生懸命仕事をしていました。順当にプロモーションも受けて、転職の話があった時期には工場長への昇進の話も出ていました。ですが、製造業は仕事環境が結構厳しいところもあり、週6日の出勤は当たり前だったり、夜も遅くなることも多く、特に立ち上げの時期には徹夜が続くことも多々ありました。しかしながら、コスト管理をメインにしていく中で、見積書の作成などを通して取引先の方と話をしたり、売り上げを管理したりしていて、そのような役割をもつ仕事を面白いなと思いました。商社では物を売っていくことが仕事になるので、もっとビジネスをやっていけるのではと思い、転職を決めました。
新たなキャリアの中でご自身の仕事内容とやりがいを教えてください。
私たちがやっている仕事は大きく分けると3つあります。1つは商社を連想したときにイメージされるような、物を仲介するというものがあります。2つ目は、日本の会社も近年グローバル化してきていますので、物をこちらに持ってくることはそんなに難しくなくなってきているため物流商売は減少してきているので、関連会社や事業会社を所有してその会社にオペレーションを任せています。それらの会社の経営や管理をこちらで行うというもの。3つ目は物流面も事業会社面も含めた新規ニーズの開拓です。
1つ目の物流の仕事では私自身が製造業出身なので今まで見えていなかった部分、このようにして物が流れていくのだなということがわかって興味深かったです。前の会社では物は勝手に運ばれてくるものという感覚もありましたが、実はいろいろな工程があり、物流というのは大変な仕事だということが分かりました。2つ目の事業管理では、その会社の社長やCFOの方と話をして会社の方向性を考えるということは、自分の勉強にもなります。3つ目の事業開拓をもっと積極的に行っていかなければならないと思うのですが、実際は新しい商材を見つけたり、新しい会社に出資したりすることは難しいと同時にやりがいがあります。当社の稟議書の書き方は独特なのですが、皆さんを納得させないと前に進まないので、毎回どのように説得しようかと考えるのがとてもやりがいがあります。
日本と北米、カナダの企業と日系の企業というグローバルな世界で文化の違いなどを感じることはありますか?
カナダ三井物産は、北米がメインになるのでカナダ、アメリカを相手に仕事をしています。去年から今年にかけて担当した仕事ではアメリカの産業用ロボット事業の立ち上げを行いました。その時にはその事業会社の社長になる方と話をして、ビジネスプランを考えたりして案件を進めていきました。私自身はカナダに10年以上住んでいますので、北米で仕事をする上で文化の違いはあまり感じません。前の会社の時は8000人規模の会社で、日本人は私を入れて2人ぐらいだったので文化の違いを強く感じて苦労しました。そういうこともあって今の会社の環境は非常に良いです。上司は日本の方で、周りはカナダの方も多く仲良くやれていると思います。仕事上、日本の書類などもありますので、文化的には日本に近いですが、日本よりも堅苦しくなく良いミックスだと思います。
貴社は充実した研修制度が整っていると聞きました。どのようなプログラムがありましたか?
カナダ三井物産は日本での研修制度も充実していて、私もマネジメント研修で2回日本にも行かせていただきました。またアメリカにも何度も研修に行く機会に恵まれました。担当する仕事に対して、必要な研修なども含めて、人材育成・教育のプログラムは非常に充実していると思います。リーダーシップ研修や自分の人格はどうあるべきかというものもあります。また近年ではパーソナリティーを4分化してそれぞれに対して効果的な対応の仕方があるということについて、勉強しました。私よりもう少し上の役職になるとハーバード・ビジネススクールで研修のチャンスがあります。マイケル・ポーター氏というビジネス戦略の有名な研究者の授業が受けられたりするみたいなので、是非参加したいと思っています。 北米に精通していらっしゃる江野脇さんですが、カナダ・トロントで働くことはいかがですか? 私の強みが文化や言葉、そしてマネージメントや機械のことを理解していて、それを活かせる場所というのがたまたまカナダだったという感じです。海外で働いているという感覚はそんなに強くなく、私の長所を活かせるところだったら日本でも仕事をしていると思います。ですが、私は北米が一番自分の長所を生かせると思っていますし、今まで何度かアメリカでも仕事の話があったのですが、移民のステータスなどを考慮するとカナダの方が良いと思いました。それに北米のいろいろな都市に行きましたが、住んで生活するには、トロントが一番いい街だと思います。
キャリアップを実現している中で、心がけていることや自分に課していることなどはありますか?
特に特別なトレーニングは行なっていないのですが、誰が見ても恥ずかしくない仕事をすることを心掛けています。例えば何か問題が起きた時に自分以外を責めることは簡単ですが、最終的には問題の解決が一番重要ですので、問題解決に集中して自分が何を出来るかをすぐに考えます。カナダ人の方は問題が起きた時に受身的になりますが、ともに問題に集中して彼らのガードを下げて協力していくことが大切だと思っています。
そして与えられた仕事を毎回120%で取り組んでいくことが大切だと思います。例えば前の会社は入れ替えの激しい会社で、私の友人はプロダクションを担当していて、問題も多い部署だったので一度降格になったこともありました。ですが、腐ることもなく私と二人で、もし「コーヒーを淹れろ」と言われたら120%で淹れるし、掃除にしても絶対綺麗にするしと、何事においても全力で取り組んでいました。悔いのないような仕事をしていくことが大切で、それを続けている友人は現在工場のトップを務めています。私もくじけそうになることはありますが、カナダに来た時から比べると精神的に強くなりました。どんなに難しい問題でも頑張ったらきっと解決できるということを学びました。解決できない問題はないと思うので、諦めずにひたすら考えることが大切です。英語力に関してもテレビをよく見て、自分を英語だけの環境に置くようにしました。読み書きも大切ですが、北米の人の考え方や文化などを理解することで、英語力も飛躍的に伸びていったと思います。
熱い気持ちをもって仕事に取り組む姿勢がビシビシ伝わってきますが、今後の目標などを教えてください。
その場その場でベストを尽くして、与えられた機会に対して、期待された以上の結果を出せば、必ず評価してもらえると思っています。今後やってみたいと思うことは、日本で様々な要因で困っている産業を北米に持ってくるお手伝いをしたいです。やはり、私は機械や自動車部品事業出身で、それらの業態で日本のものは非常に優れています。大阪や名古屋にある中小企業に、市場は国内のみではないということを是非教えてあげたいです。日本人は何でも頑張る傾向にあるので、その頑張っている人たちを応援したいです。明確で現実的な目標があれば、何とか頑張れば実現できると思っているのであきらめずにこれからも頑張っていきたいです。