【TIFF】日系カナダ人のRandall Okita監督が、自身4度目の出品となる快挙を達成、そしてBest Canadian Short Film受賞!!
「私は、この物語は余りにも若い時に傷付いてしまった二人の少年を描いたものだと
言うことができると思います」
仲が良かった兄弟がなぜ別々の道を歩むのか…。視覚芸術を駆使して作られた美しい哀歌
「The Weatherman and The Shadowboxer」
今回「The Weatherman and The Shadowboxer」が自身4度目のTIFF出品となるRandall Okita監督。多彩な映像撮影術で創りだされるアートのような映画作品が有名だ。そんなOkita監督にTIFF出品の感想や作品作りに関してお話を伺った。
4度目のTIFFに対する感想
正直、未だに私自身でも信じられなくて、一つの夢がかなった感じです。1度目も今回も同じ気持ちですね。今日にでも運営側から「実は間違いでした」といった連絡が来るかもしれないと思っているくらいです。TIFFを通して多くの方に作品を観てもらえること、多くの関係者と同じ空間に立てること、そして多くの優れた作品を観ることができることなどたくさんの機会に恵まれ、とても光栄です。
映像を通して創られるアート
私の作品の中に映画とアート2つの要素があることは確かです。でも、映像とアートを分けて作ったつもりはないですね。一つの映像には人の感覚や言葉、イメージといった様々な要素があり、それらが組み合わさって物語が表現されます。私は絵画のようなアートにも物語があると思っていますし、抽象的なアイディアを表現するときは簡単な物語で表現した方が分かりやすい時がありますよね。だから私の作品から物語を取り除くことは出来ません。それに今回の作品は私の今までの作品に比べ、より物語性があると思います。
「The Weatherman and The Shadowboxer」制作のきっかけ
作品作りを考え始める前に、私はまず些細なことで仲の良かった友人や家族が争うときのことを考ました。私は3人兄弟で、私の母は13人兄弟の長女ということもあって、特に兄弟などの近い人たちが対立することについて日頃から考えていました。兄弟たちは多くの時間を一緒に過ごしますが、どのようにして兄弟たちがお互いを拒絶してしまうのか、どうして対照的に育ってしまうのかといったことを考えました。そして、人によって同じ出来事に対する反応が違うということに気が付いたのです。この考えが今回の2人の対極的なキャラクターを生み出し、制作に至りました。2人がお互いを嫌っているわけではないのに、生きるために別々の道を歩まざるを得ないという、そういう物語を伝えたかったのです。
アイディアが生まれる瞬間
最近になってやっと自分の作品のアイディアがどこから来るか気づき始めたところです。作品のアイディアは私が持っている意見の中でも、言葉で表現できないものです。何か自分の中で解決できない意見が浮かんできても友人と議論できる場合は別ですが、中にはうまく言葉に表現できないものもあります。それは自分の中で育ち、自然と映像として頭に浮かんできます。私はそれらを作品化しています。不思議なことに作品化した後は、表現できなかったはずの意見が、先ほどの兄弟観のように伝えられるようになるのです。
日本で映画監督を目指したきっかけ
若かったころは、作家になりたかったです。ですが、実際に本を読む人口よりも映画やドラマなどを観ている人の方が多く感じたので映像に興味を持ちました。それに実際映画作りは様々な仕事の集大成で物語を作りだす作家も必要だということにも惹かれました。当時、私が色々なものを読んだり書いたりして多くの時間を過ごした時は、日本に住んでいました。日本語だけを使っていると、英語が恋しくなってしまい、TSUTAYAに通うようになりました。そこで初めて映画が監督別に並べられているのを知りました。カナダではジャンル別に並べられるのが当たり前なので、衝撃でしたね。そこで数作の好きな映画が実は同じ監督作品であるということに気が付き、その監督の別作品を全て見るなどしました。作家ごとに小説のスタイルに傾向があるように、監督ごとにその人のテイストがあるということに初めて気が付いたのです。それからはTSUTAYAに通い詰め、1日に多くて3本の映画を見る時もありました。映像の学校には通っていないのですが、強いて言うならTSUTAYAが私の学校でした。
読者へのメッセージ
このインタビューを読んでくれてありがとうございます。多くの方々が、この映画祭やインターネットを通して私の作品を見る機会があれば光栄です。映画は文化を超えて様々なアイディアを共有することが出来るし、学ぶことができます。TIFFでは私の作品だけではなく、多くの作品をみて欲しいと思います。
Randall Okita
カルガリー出身。トロント在住。Visual Artist(視覚芸術家)として活動し、多彩な映画撮影術で作品を作る。初回作「Machine with Wishbone (2008)」をはじめカナダ国内だけに限らず海外からも高い評価を得てきた。今作が4度目のトロント国際映画祭での上映となる「The Weatherman and The Shadowboxer」もShort Cuts Canada の部門でエントリーしている。
randallokita.com
「The Weatherman and The Shadowboxer」
この短いアニメーションは過去の辛い出来事を共有しながらも、それぞれが別の見方をしたために、全く別の人生を歩むことになった二人の兄弟の物語を表現している。Visual Artistそして映画監督として評価されているRandall Okitaが高速カメラワーク、複雑なアニメーションシーケンス、印象的な美術道具を組み合わせて創り上げた哀歌のような作品だ。
Okita監督作品「The Weatherman and the Shadowboxer」
Best Canadian Short Film受賞!!
“It’s an incredible, unbelievable honour. I couldn’t be happier, and I’m really excited to start to share the film with the rest of the world. I’m grateful to the jury and the festival, and to the National Film Board of Canada for allowing this dream to come to life. ”
Commented by Randall Okita
11日間に渡って開催されたトロント国際映画祭。ノン・コンペティション映画祭ではあるが最終日にGrolsch People’s Choice Award(観客賞)を含め10個の賞が発表された。
オスカー前哨戦と位置づけられているこの映画祭の最高賞にあたるPeople’s Choice Awardを受賞した作品は例年アカデミー賞受賞またはノミネートされることが多く、各関係者の注目を集めている。People’s Choice Awardの他にはアジア人映画監督を支援するNETPAC Award、国際映画批評家連盟が授与するFIPRESCI Prize、これには世界を代表する映画監督作品が集められたSpecial Presentation部門と若手監督作品を集めたDiscovery部門の2つからそれぞれ1作品選ばれる。そしてカナダ人監督を支援するCanada Goose Award for Best Canadian Feature Film やCity of Toronto Award for Best Canadian First Feature Filmなどがある。
今年の受賞作品は下記の通り。
Grolsch People’s Choice Award
「The Imitation Game」
Grolsch People’s Choice Documentary Award
「Beats of the Antonov」
Grolsch People’s Choice Midnight Madness Award
「What We Do in the Shadows」
Canada Goose Award for Best Canadian Feature Film
「Felix and Meira」
City of Toronto Award for Best Canadian First Feature Film
「Bang Bang Baby」
Best Canadian Short Film
「The Weatherman and the Shadowboxer」
Best International Short Film
「A Single Body」
International Critics’ Prize (FIPRESCI Prize) – Discovery
「May Allah Bless France!」
International Critics’ Prize (FIPRESCI Prize) – Special Presentations
「Time Out of Mind」
NETPAC Award
「Margarita, with a Straw」
今回TORJA編集部が取材を敢行したRandall Okita監督作品「The Weatherman and the Shadowboxer」がBest Canadian Short Filmを受賞。この賞は毎年優れたカナダ人映画監督作品に贈られる賞で過去には「Noah」や「Keep A Modest Head」に贈られている。
審査員は「個々の記憶を印象的に映し出すために使われた技法、実写とデジタルアニメーションの大胆な融合が特出していた」とその芸術作品のような映像技術を高く評価していた。
Okita監督は授賞式で「映画祭に参加できただけでも素敵な経験で、光栄なことなのに、賞まで受賞することができて本当に光栄です。頑張ってきたご褒美をもらった感じです。ありがとうございます。」と述べ、映画製作に関わった関係者、特にNational Film Board of Canadaに感謝すると共にこの映画を母親と過去の出来事でバラバラになってしまた家族の方全員に捧げたいとコメントしていた。