【両関】カナダ最大の日本酒イベント「Kampai Toronto」の日本酒品評会 「Sake Challenge」で純米部門1位を獲得!
秋田のうまい酒「両関」、両関酒造株式会社代表取締役伊藤康朗さん
今年第3回を迎えたカナダ最大の日本酒イベント「Kampai Toronto」にて、初の試みとして行われた品評会「Sake Challenge」の純米部門で、エントリーされた40種の中から1位を獲得した両関酒造株式会社の手掛ける「山廃」。一昨年の第1回目イベント時にトロントを訪れた同社代表取締役の伊藤康朗さんが2年ぶりにトロントを再訪問し、イベント当日には自らブースで来場者のおちょこにお酒を注いで説明を行った。今回、伊藤さんに2年ぶりのKampai Torontoの様子、また近年の自社環境の変化について伺った。
2年ぶりの来訪で感じるトロントの日本酒マーケットの変化
当初、今回トロントを訪れる予定はなかったのですが、Kampai Torontoで行われた品評会で純米酒部門で山廃が一位になったので表彰式に来ませんかとお誘いをいただきまして、トロントは約2年ぶりですし、現在のマーケット状況も見たかったので、表彰式には間に合いませんでしたが、急遽トロントを訪れることにしました。
今回のイベントは例年と比べても全体的に来場者が増えたと聞きました。第1回目の開催された一昨年と比べ、30パーセントほど日本酒の需要が上がってきているとのことで、その効果が大きかったのでしょうね。来場者も積極的な方が多く、ブースで試飲をして注文の問い合わせをするという人も多かったです。
前回は「日本酒というものはどういうものなのか」と、クラスの違いなど基本的な質問が多かったのですが、今回はその基礎部分を理解しながら、ではそれがどのように違うのかと、さらに一歩進んだ質問をされている方が多かったように思います。我々が接しているのはプロの方が多いので、一般の方々の認知度がどれだけ上がったかは言えませんが、お酒を売ってくださる方々の理解や知識がしっかりしてきたというのは、一般の方にもお酒が普及していく土壌が整ってきたのだなと思います。
「Sake Challenge」純米部門で40種以上の中から一位を獲得、杜氏の世代継承にも手応え
受賞したということを聞いたときは、非常にビックリしました。ゴールドを獲得したのが、弊社を含め3つ、そのファイナリストの中から1位に選ばれたというのを聞いて、非常に嬉しく思いました。日本国内では金賞の中で優劣をつけず、一等賞に選ばれるということはなかなかないのです。
また、今年弊社の蔵では杜氏(酒をつくる職人)が交代した年の受賞ということもあって、その喜びは一入でしたね。先代の杜氏は40年以上杜氏を務め、年齢もあり「次の世代に譲りたい」と、3年前から段階的に杜氏交代の準備を始め、今年正式に交代をしました。2年前と違うのは、これまでは杜氏ができるお酒を蔵元が売るというスタンスで、もちろん杜氏に要望は出すのですが、杜氏には長年の経験を元にしたカンというものがありますから、杜氏のポリシーややり方などを、おいそれと変えることはできませんでした。ですが、新しい杜氏は、まず会社でどういったお酒が作りたいのかを話し合い、具体的に要望を伝えてもらって、それに応えていきたいというスタンスでして、お客さまにどのようにすれば喜んでもらえるかと、杜氏に我々の要望を伝えています。美味しいお酒を作るための設備や素材を私が準備、その準備の上で自分の色を出しながら実際にお酒を作るのが杜氏の仕事と、従来からするとやり方が少し変わってきました。
現在は弊社では新しい企画を徐々に行っておりまして、今回受賞した山廃を含め、従来の商品でも工程を見直し、改良を加えています。たとえば、香りなどデリケートな部分を残すためにボトルの口をだせん方式に変更するなど、瓶の仕様も変えています。新しい杜氏は先代のもとで、従来の失敗、成功の両方を見てきています。杜氏が代わったことで、味も変わったのではと、ネガティブに受け取られないかということは不安でしたが、仕様は変えても味は変えないと、杜氏自身もその状況を理解して、受け継がれてきた杜氏の経験をいい方向に持ってこれたのではないかと思います。伝統をトレースするのではなく、時代時代で変わる環境に対して、いかに本来の良さを理解した上でその良さを残し、なおかつ新しいものを作っていかなければならないと感じ、毎年新たな試みを行っていきたいと、現在その土壌を作っています。
両関酒造株式会社
1874年創業。個人商店から「合名会社伊藤仁右衛門商店」へ、そして「両関酒造株式会社」へと変遷を遂げ現在に至る。秋田湯沢市に酒蔵を構え、酒米産地として有名な地元の酒米、地元に流れる名水百選「力水」を使用し、独自に編み出した「低温長期醸造法」を用いて「うまい酒」を醸造している。2006年には全国酒類コンクールで純米の部で両関山廃仕込特別純米酒が全国第一位となり、同年イギリスで開催された欧州最大・国際的に最も権威のある酒類評価会「IWSC」で、両関純米大吟醸雪月花が金賞を受賞、2007年には最高金賞に輝く。
取材協力 : Sakagura Canada Inc. 住所: 64 Charles St. E. Suite 104, Toronto Ontario M4Y 1T1 Tel: 647-430-7638 Email: info@sakaguracanada.com / www.sakaguracanada.com