tiff.感動の連続となった激動の11日間!トロント国際映画祭 in 2017 取材レポート
今年も凄まじい熱量でトロントを賑わせたTIFFことトロント国際映画祭。今話題の超大作やドキュメンタリー、アニメーションなど、最新映画がトロント市内の劇場で上映され、映画好きのトロントニアンたちには涙と笑いの入り混じる大興奮の11日間となったことだろう。ここで、編集部厳選、今年のTIFFのハイライトをまとめて紹介しよう。
今年TIFFにて世間の注目を集めた海外セレブたち
9月22日に公開予定、Netflixのオリジナルドキュメンタリー『Gaga : Five Foot Two』のプレミアを行ったレディー・ガガ。TIFFのプレミア前日まではトロントにて2日間ワールドツアーの公演を行ったガガは、映画上映前のプレスカンファレンスで、12月のワールドツアー終了後に活動を休止すると驚きの発表をしてみせた。
プレミア上映後にはガガが現在、繊維筋痛症という病と戦っていることが公に発表され、リトルモンスター(ガガのファンの通称)たちも驚きを隠せなかったことだろう。映画のタイトルとなったFive Foot Twoとはガガ自身の身長(約157.5cm)を表している。スターが抱える光と闇、そんな彼女のありのままの姿がこの映画に凝縮されているのだ。1日も早くガガの体が回復し、また皆の前で素晴らしいステージを見せてくれる日が来ることを期待しよう。
また、誰もが知るハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーは今回のTIFFでは『The Breadwinner』、『First They Killed My Father』の2作品でレッドカーペットに登場。『The Breadwinner』は、カナダで大ベストセラーとなったデボラ・エリスによる小説が原作となっているアニメーション作品。
アンジェリーナはエグゼクティブ・プロデューサーとして、今回の映画製作に携わり監督のノラ・トゥーミーをサポート。そして『First They Killed My Father』では監督を務め、1970年代のカンボジアで過酷な運命を背負って生きる少女の人生を描き出した。本作品では愛息子のマドックスがエグゼクティブ・プロデューサーを務めたことでも話題になり、レッドカーペットには子供達全員が集合。これまで精力的に慈善活動を行ってきたアンジェリーナらしい2作品にTIFFの観客たちは皆心打たれたに違いない。
そして今秋注目のダークコメディ映画『Suburbicon』のプレミアで一躍話題をさらったのはジョージ・クルーニー。なんと、レッドカーペットでのファンサービス時にとあるおばあさんに顎を掴まれるというハプニングが発生、その写真は瞬く間にSNSで拡散されることに。もちろん、ジョージは笑顔で難なく対応していたそうだが、後日取材を行ったGlobal Newsで事を招いたなんともお茶目なおばあさん、ウォルフさんは「私が彼に「娘があなたに恋してるのよ!」と伝えたら、私に近づいて手を握り、微笑んでくれて…気付いたら私は彼の顎をこうやって掴んでいたのです。」と回答した。これにはお茶の間もびっくり。毎年世界のセレブ達が一堂に会し、様々なニュースが飛び交うTIFF。今年もトロントニアン達にとっては興奮と感動の一週間になった。
今年の日本映画上映は6作品!
編集部もプレミア上映会に潜入
毎年質の高い日本映画を心待ちにしているトロントニアンの期待に応えるように、今年のTIFFでは日本から6作品、是枝裕和監督の『三度目の殺人』、平柳敦子監督の『Oh Lucy!』、梅沢壮一監督の初長編作品『血を吸う粘土』、河瀨直美監督の『光』、白石和彌監督の『彼女がその名を知らない鳥たち』、近浦啓監督の『SIGNATURE』が上映された。
TORJA編集部は、白石和彌監督が送る話題作『彼女がその名を知らない鳥たち』のプレミア上映会に参加。沼田まほかるによる人気のミステリー小説を映画化したこの映画は日本では10月28日より公開を控えており、今回はワールドプレミアというだけあって、シアター前には今か今かと待ちわびるお客さんたちの行列ができていた。
8年前に別れた黒崎という男のことを未だに忘れられぬまま怠惰な生活を送っている十和子と、「下品で貧相」と罵られながらもそんな十和子に無償の愛を注ぐ15歳年上の陣治の二人の歪な愛を描いた本作品。映画の序盤より人間が持つ弱さや闇の部分を浮かび上がらせながら、最後に訪れる衝撃のラストシーンでは未来への希望の光を感じさせてくれる何とも不思議な後味の残る映画で、本当の愛とは一体何かを考えさせられる作品であった。
プレミア上映会には日本より白石和彌監督が駆けつけており、観客からは「今までには見たことのないような日本映画。本当に素晴らしかった。」という賞賛の声が続々と上がった。白石監督は「原作を読んだ時は、映画化するのは難しい映画だと感じましたが、僕自身が陣治にとても共感できたこと、最後のシーンの陣治の愛の示し方を見たときにそれまでの二人の生活が美しく思えたことが映画化しようと思えたきっかけでした。」と観客に話した。質疑応答コーナーでは、キャスティングの背景、映画には入らなかった印象的なカットシーンについてなど様々な質問が飛び交うこととなり、白石監督自身も観客たちとの触れ合いを楽しんでいる様子が印象的であった。
また16日深夜に行われた梅沢壮一監督による『血を吸う粘土』のプレミア上映会は、深夜という時間帯にもかかわらず数時間前から観客たちが駆けつけ、劇場となったRyerson Theaterは満席状態に。『血を吸う粘土』は今年の8月に行われた「夏のホラー秘宝まつり2017」で観客投票第1位に輝いた、日本のホラー映画界最新の話題作であり、今回のTIFFではクロージング作品に選ばれている。プレミア上映会には梅沢壮一監督、美術教師の藍那ゆり役を演じた女優黒沢あすか、そして映画に登場した悪魔の粘土「カカメ」が登場し、観客たちを大いに賑わせた。プレミア上映会の詳しい模様はお二人のインタビューとともに次号以降掲載予定。どうぞお見逃しなく!