トロント・グローバル CEO Toby Lennox氏|特集「憧れ・出会い・交流 ニッカナインティー」
トビー・レノックス氏はケベック州生まれ、父はスコットランド人、母は英国人の英仏両文化の環境で育った。コメディ好きの活発な少年で、スキーが上手な二人の姉の影響を受け、スキーが得意である。また、一時期サイクリングの指導者になろうと思った時期もある位スポーツ愛好家である。トレント大学(政治学学士)、ダルハウジー大学(国際関係修士号)、オックスフォード大学UK(法学修士号)、ダルハウジー大学(国際関係法学修士号)等で学んだ。1991年からOsler Hoskin & Harcourt LLPで弁護士、1991年 トロント国際空港公団(GTAA)で法律顧問、2007年よりGTAA戦略開発担当副社長、2015年よりトロント・グローバルで暫定CEOを歴任した。2017年2月トロント・グローバルCEOに就任し、現在活躍中。
法学や国際学を修得しGTAAでの勤務経験から国際空港の役割や重要性を強く認識した。国際交流の鍵はコミュニケーションであり、交渉力、戦略、会話による確認と行動が肝要と考える。妻は日本生まれ、元外交官の子弟で日本との関わりも強い。レノックスCEOは日本旅行を通して旧友との親交や、スキーなど夫婦で楽しむプランも温めている。また、日加修好90周年を迎える今年を契機に、今後は年3回程度の程度の訪日を行い、GTAと日本との投資促進による経済交流を優先課題と位置付けている。
レノックス氏がCEOを務めるトロント・グローバル機構
ダウンタウンのCity Centreビルに事務所を構え、カナダの連邦、州、自治体(トロント市、ミシサガ市、ブランプトン市、ダラム、ハルトン、ヨークの自治体)、基金$19・5ミリオンにより経済開発を支援する非営利団体である。トロント・グローバル機構は 、2014年に発足したトロント市のサービス会社Invest Toronto Inc.と、1997年に発足したビジネス創出民間組織Greater Toronto Marketing Allianceの両組織が合併して2017年に創設された。
GTAの利点や特色
GTA地域は約640万人の人口を抱えるカナダ最大の都市である。半径800キロ圏内は130万人市場に到達出来る北米で4番目の都市として強力で安定した多様な経済基盤を持つカナダ経済の中心地である。GTAの地域経済には、多様なサービス、産業により成り立っており、観光業から銀行業、製造業などに至るまで、トロント地域の経済規模はすべての分野において企業に成功の機会がある。SR&ED、IRAP、 OIDMTC、IAF等オンタリオ州資金援助と税額控除を享受できる利点もある。
GTAの経済規模はと言うと、40%のカナダ企業の本社がGTAに集結している。経済規模は3320億カナダドルでオンタリオ州のGDPの約50%、カナダGDPの20%を占めている。パリ、ニューヨーク、ダラス、サンフランシスコ、ボストン、ロサンゼルス、シカゴ、東京など世界の主要都市と比較した場合の税率は第2位にランクされている。主要10カ国とのコスト対比では、法人税率、デジタル税率、労働賃金、交通機関、製造、施設コスト、R&Dコストなどで優位性を誇っている。(KPMG)
人材の質や状況
GTAは経済協力開発機構 (OECD)加盟国の中でも67%の中等教育学位を持つ世界屈指の教育水準の高い優秀な地域であり、多くの人材を活用出来る。在住者の51%以上が外国出身者で、約180の言語と主要な方言を話す才能豊かで多文化・多言語をもつ人材プールがある。年間10万人の新移住者を受け入れており、効果的に国際市場に参入することができる。世界経済が急速に変化する環境の中で、企業がグローバル社会に於けるイノベーションに適応し迅速に改革するためには、あらゆる面での多様性が不可欠である。
GTAの生活環境
他のどの北米地域よりも巨大市場の近接性に優れていて6つの主要な北米の都市、ニューヨーク、ボストン、フィラデルフィア、ピッツバーグ、ワシントンから飛行機で90分以内の便利な場所にあり、北米事業の本社所在地として理想的な立地にある。GTAで営業する企業は、10億人の消費者と約39兆ドルを超えるGDP圏にアクセスすることができる。「生活の品質」においては安全と安心と共に、医療面はオンタリオ健康保険制度Ontario Health Insurance Plan (OHIP)の医療制度が享受でき、豊かな芸術文化や自然に囲まれた、世界でも有数の住みやすい地域として世界第4位の評価を受けている。あらゆる民族の活気に溢れたコミュニティが、この地域の国際文化を育みやすい土壌を作っている。
GTAに突出した産業
高度な製造、生命科学、北米2位の食品飲料と金融サービス、北米3位のテクノロジー(ゲーム、デジタルメディア、エンタープライズソフト、データセンター、モバイルアプリ、フィンテック、クリーンテック、ハード製造、テレコミュニケーション等)がある。
企業の進出事例
トロント大学のAI研究を推進するGoogle BrainのVector Institute(投資額$150m)、IBM’s Soft-Layer Data Centre、Cisco’s ICT R&D、Huawei’s Canadian HQ、GM’s Software R&D等がある。またカナダでも大きな話題となっているアマゾンの第二本社の拠点アマゾンHQ2のGTAへの誘致促進に大きな関心がもたれている。
トロント・グローバルの目的と目標
500件以上のGTA地域への外国直接投資の促進により経済発展を目指している。今後の関係構築の優先順位の市場は、米国、英国、西欧州、日本、韓国を対象としている。トロント・グローバルのサービス事業内容は、外部よりGTA地域に進出する企業に対して、産業マーケットリサーチ、ベンチマーキングと分析、データシェア、不動産情報、市場参入戦略アドバイス等である。移転や進出への情報提供及び、コンサルタントによる専門的なアドバイスや対応のサービス支援により、スムーズなビジネス展開が出来る。また各レベルの政府機関や、他のプロサービスへの紹介などグローバルな投資家にOne Stop Shoppingのサービスも提供することを目標にしている。
トロント・グローバル機構の活動役員
会長は12代CFLコミッショナーのMark Cohon、副会長はTFSACEOのJanet Ecker、役員にはTVO元CEOのLisa de Wilde、T&TスーパーCEOのTina Lee、BMO役員のCatherine Roche等各業界の多彩なベテランで構成され、キヤノン・カナダの江川泰三郎社長も役員として参画している。日本の相模原市とスカーボロ旧市による姉妹都市提携に始まり、その後合併されたトロント市と日本の他の地域を含め経済関係の交流促進の活発化が期待されている。
レノックス氏から若者への贈る言葉
『Open to International Market』出来るだけ世界各地を旅行して見分を広げ、「何か」を見つける機会を創ること。そうすれば自ずと道が開けてくる、と語ってくれた。
Totonro Global
資料:同企業、T.Lennox、Web、文責不問
著者:市田 嘉彦
京都五条坂出身のビジネスコンサルタント。民芸、ラテン音楽、合気道愛好家。座右の銘『今ここで頑張らずにいつ頑張る』。京都大徳寺大仙院尾関宗園住職直伝。JAPAN TRADE INVEST(Consultant)、Former Investment Advisor at JETRO Toronto