カナダと日本の関係にまつわるヒト・モノ・トコロ|特集「憧れ・出会い・交流 ニッカナインティー」
これまで日本とカナダに関係するトピックは色々取り上げて来ましたが、調べてみるとまだまだたくさんあります。実は知らなかったことやなんとなく知っていたことなどアップデートしてみました。
1.伝説の日系野球チームバンクーバー朝日
明治時代、バンクーバーには多くの日本人の移民が暮らしていた。そんな中、今もなおカナダの歴史に残る「バンクーバー朝日」という名のアマチュア野球チームが1914年に誕生。はじめは現地の人々から笑い者にされた弱小チームだったが、やがて現地のチームも所属するリーグに上り詰め、優勝も果たした。第二次世界大戦が勃発した1941年に解散。しかし、その素晴らしい功績が讃えられ、チーム結成から約90年が経過した2003年、バンクーバー朝日はカナダの野球殿堂入りを果たしたのだ。
2.新渡戸稲造
常に時代の最先端を走り、国際的にもその名を知られている新渡戸稲造。実はバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学のキャンパス内には彼に捧げられた庭園がある。というのも、新渡戸稲造が亡くなった場所は同州のビクトリア市。ニトベ・メモリアル・ガーデンと呼ばれるその庭園には茶道を体験できる茶室があるほか、新渡戸稲造がかつて抱いていた「太平洋の橋になる」という願望の象徴として、橋も庭園の所々にある。北米でも有数の日本庭園として人気があり、天皇も訪ねられたことがあるそうだ。
3.皇室とカナダの意外な繋がり
Prince Takamado Visiting Student Scholarship
スポーツ界へ大きく貢献した皇室の一人として有名な高円宮憲仁親王。彼は学生時代にカナダのクイーンズ大学へ留学していたことがある。そんなカナダとの関わりが深い高円宮殿下に捧げるべく、在カナダ日本大使館とクイーンズ大学が共同してPrince Takamado Scholarshipを設立。この奨学金はクイーンズ大学へ一年間留学する日本人大学生に向けたものである。また、高円宮殿下の三女である絢子女王は名門ブリティッシュコロンビア大学にも留学していた。皇室とカナダにこんなに深い関わりがあったとは驚きだ。
4.これからの日加関係の発展のために
Centre for the Study of Global Japan
トロント大学内にある国際関係を専門に研究するムンク・スクール。その中に去年の7月、日本を専門的に研究する機関が設立された。この設立は日本政府の援助により実現され、現在では日加関係にまつわる多くの会議やワークショップも開催されている。特に2018年は日加関係90周年という節目の年であることから、多くのセミナーが開催された。これらは全て入場自由であり、トロント大学の学生でなくても参加することが可能。日加関係のこれからの発展に大きく貢献する場となることを願う。
5.浮世絵にインスパイアされた
イヌイット版画
カナダの先住民の一つ、イヌイットの芸術が実は日本の版画に影響されていることはご存知だろうか。イヌイットの芸術に大きく貢献したのがジェームズ・ヒューストン氏。彼はトロントで美術を勉強した後、カナダ北部へ移住。そこでイヌイットの版画を目の当たりにし、それらの作品に魅了されたヒューストン氏はさらにイヌイット版画を発展させたいと思うようになる。より版画の知識を深めたいと思ったヒューストン氏は日本へ渡り、数多くの版画家から指導を受ける。中でも、墨摺や合羽摺など浮世絵の手法を取り入れたそうだ。
6.世界で人気のカナダ人落語家
桂三輝
日本のみならず世界を舞台に活躍しているカナダ人の落語家がいる。トロント大学を卒業した桂三輝(サンシャイン)は能や歌舞伎といった日本の演劇を学ぶべく、1999年に来日。彼が注目されるのはカナダ人であるということだけではない。日本語のみならず英語で落語を演じるのが彼の魅力だ。中でも見ていただきたいのが英語版の「寿限無」。全て英語でありながら、日本語の話と同じように笑いが起きるのが驚きだ。また、カタカナやコンビニおにぎりなどといった日本文化について語る彼ならではの落語もある。
7.多くの日本人移民の足
氷川丸
横浜市の山下公園にあり有名な観光スポットである氷川丸はかつて日本とカナダをつなぐ船だった。チャーリー・チャップリンなど多くの有名人も乗せた貨客船で、実は多くの日本人が氷川丸に乗船し、カナダへと渡った。今でも横浜市とバンクーバー市は友好都市関係を結んでいて、その歴史は50年以上と、70以上ある二都市関係の中でも特に長い。横浜港とバンクーバー港も姉妹港関係を結んでいる。バンクーバーから友好の印として送られたトーテムポールも現在、横浜市に飾られているので訪れた際には是非見ていただきたい。
8.日本にいながら世界トップクラスのMBAを取得
マギル大学ジャパン
ケベック州にある名門マギル大学のMBAが東京にて取得できるのはご存知だろうか。カナダ国内のMBAプログラムで一位を獲得したこともあるデゾーテル経営学部が運営するマギル大学ジャパン。日本にいながらマギル大学と同様の授業を受けられるそうだ。およそ半数は日本国外からの学生で、17カ国から生徒が集まるというから国際的。授業もマギル大学からやってくる教授によって全て英語で行われる。日本にいながら世界トップクラスのMBAを取得できるので、とても人気があるそうだ。
9.日本からの移民第一号
永野万蔵
あまり聞き馴染みのない名前かもしれないが、この永野万蔵さんこそが日本からカナダへとはるばるやって来た最初の日本人の移民とされている人物。1877年、長崎からブリティッシュコロンビア州へやってきた彼は、レストランやホテルを経営すると同時に塩鮭を日本へ輸出する事業を持ち、成功を収める。彼の息子のうちの一人は先ほど記したバンクーバー朝日の一員だったそうだ。現在では、ブリティッシュコロンビア州にあるコースト山脈のうちの一つに彼の名前が付けられている。
10.写真を通して日本を知ってもらうために
Japan Photo Contest
日加90周年を記念して在トロント日本国総領事館でも開催された写真コンテスト。在カルガリー日本総領事館では毎年、日本をテーマにした写真コンテストを開催している。題材は自然・文化、食べ物、祭り・人・クールジャパンの四つに分かれていて、日本文化を表す写真を募集している。今年で5回目となった今回のコンテストにはニコンも協賛。優勝商品はニコンのカメラや富士フイルムのチェキのプリンタなど、様々だ。このコンテストはアルバータ州、マニトバ州、サスカチュワン州、ノースウェスト、そしてヌナブトの住民が対象。このフォトコンテストを通して日本に興味を持ってくれる方が増えることを願う。
11.トロントを彩る建物を生み出した
レイモンド・モリヤマ
トロントの街中にある印象的な建物たち。そのいくつかが実は日系カナダ人によって設計されている。中でも有名な二つがToronto Reference LibraryとBata Shoe Museum。一つ目のToronto Reference LibraryはBloorとYongeの交差点にあるトロント市内最大の公共図書館。外観はもちろん、吹き抜けになっている5階建ての建物を下から見ると圧巻である。二つ目はBloorとSt. Georgeの交差点に突如現れる靴の美術館、Bata Shoe Museum。どちらの建物とも、外観がとても印象的。トロントのダウンタウンに住んでいたら一度は見かけたことがあるだろう建物たちが日系カナダ人によって設計されているとは驚きだ。
12.ホッケー界のスーパーキッズ
井口藍仁
アイスホッケー界で神童と呼ばれている日本人選手がいるのはご存知だろうか。井口藍仁選手はまだ15歳でありながらすでにその才能を光らせている。現在は日本国内でプレーしている井口選手だが、以前バンクーバーで試合に出たこともあるそうだ。ブリティッシュコロンビア大学でトレーニングしている井口選手の様子を写した動画は200万回以上再生されるなど、すでに注目されているのが伺える。将来、NHLでの活躍が期待されているスター選手。近い将来、ホッケー界でどんな活躍をするのかこれからも目が離せない。
13.こんなにも関係が深い
日本とカナダのホッケー
日本とカナダのホッケー界には多くの交流があるのをご存知だろうか。最近では、慶應義塾大学のホッケー部が海外遠征の場としてトロント大学のアリーナを訪れた。滞在中、トロント大学のVarsity Bluesや日系カナダ人のチームArashiと対戦するなど、様々なチームとの試合に臨んだ。また、カナダの女子ホッケーチームにも日本人が所属する。中でも青木香奈枝選手はカルガリー・インフェルノでプレーすると同時に、日本代表としてソチオリンピックにも出場。これからも日本人選手や日本のチームがホッケーで活躍することを期待したい。