トロント発ローカルな旅「ヨーロッパを旅するオンタリオ」|特集「ヨーロッパを旅するオンタリオ」
パリ、ロンドン、ベルリン・・・ヨーロッパの都市と全く同じ名前の街がカナダのオンタリオ州に多数実在する。これらの街の魅力は名前だけに限られない。都会のトロントとはまた一味違った異国情緒にあふれる街たちを今回はオンタリオ西部に絞って紹介していこう。
ヨーロッパ地名がつく町名の理由はさまざま

イギリスとフランスが統治していた歴史は、ヨーロッパ地名の名残がある街の発展に確かにつながっている。しかし場所によってユニークなので、名付けの背景が分かっているところをフィーチャーしてみよう。
パリ: 「Gypsum Plaster」(石こうプラスター)と呼ばれる建築用の左官材料は別の名前を「Plaster of Paris」という。この土地で1793年に「Gypsum(石こう)」が発見されたことから「パリ」と名付けられたと言われている。町の名付け親はアメリカ・バーモント州からの移民、ハイラム・カプロンだった。彼は「キング」の愛称で知られたパリの工業の牽引役だった。
ロンドン: 本場イギリスのようにテムズ川が存在するオンタリオ州のロンドン。街の名前も川の名前も、イギリスを真似るように命じたのはアッパー・カナダの初代副総督、ジョン・グレーブス・シムコーだった。アッパー・カナダはイギリスの植民地にあり、ロンドンは1793年の創設当時、アッパー・カナダの首都候補に入っていた。
ウィンザー: ウィンザーといえばイギリス王室が所有する世界最古、そして世界最大の居城。オンタリオ州南西にあるこのエリアはもともとフランス人たちに「La Petite Côte(小さい岸)」と呼ばれていたが、アメリカ独立戦争が始まってからこの土地はイギリス・バークシャーの町にちなんだ「サンドイッチ」という入植地となったが、のちにもう一つのバークシャーの町、「ウィンザー」に改名された。
ヨーロッパとカナダのつながりは11世紀に遡る

カナダに先住民がアジア大陸から渡り、暮らし始めたのは1万3000年から1万5500年前だと言われている。その土地をヨーロッパ大陸から初めて目指したのは古代スカンディナビア人(ノース人)だった。首長に仕える戦士だったヴァイキング(バイキング)たちは11世紀に現在のニューファンドランド島のランス・オ・メドー(L’Anse aux Meadows)と呼ばれる場所に上陸した。次にヨーロッパから渡航者が来たのは1497年。イタリア生まれのジョン・カボットはヴァイキングらと同じくニューファンドランド島に辿り着いたと言われているが、確実な証拠は見つかっていない。

ヨーロッパ入植者であふれたカナダ


16世紀にフランスがカナダに入植。イギリスも後を追うように入植し始め、フランスと競い合うように北アメリカの領土を広めていった。1776年にアメリカ独立戦争が終結すると、イギリス王国を支持していたロイヤリストと呼ばれる人々が5万人ほどカナダに押し寄せた。オンタリオ州に住み始めたロイヤリストたちはフランス人住民たちとは別の植民地が欲しいとイギリス政府に要請。この分裂は後にロイヤリストを含むイギリス系住民が主に支配するアッパー・カナダとフランス系住民が多いローワー・カナダの創設に至った。
ロンドンではアフタヌーンティーを
LONDON




イギリスといえばアフタヌーンティー。オンタリオのロンドンで上質なアフタヌーンティータイムを過ごせる場所といえば「The Tea Lounge」というお店だ。Traditional Afternoon Teaのサービスではサンドイッチやスコーン、スイーツをすべて紅茶と共に味わえる。量が多そうと思う人にはお茶とサンドイッチとスコーンだけのコースやお茶とスコーンだけのオプションもあるのでお腹にも財布にも優しい。10歳以下の子どもにはLittle Royal Afternoon Teaという特別メニューがあるので子連れに嬉しい。必ず予約して行こう。
買い物を楽しむなら
「Covent Garden Market」


ロンドンという町が創設される前から存在していたこのマーケットは1835年にオープンした。グロサリーアイテムから生鮮食品、チーズ、デザート、パンが巨大なスペースに並ぶ。カフェやレストラン、テイクアウトのフードスタンドも豊富。60以上のお店が入っているので、ここだけでだいぶ遊べる。2階スペースには「The Tea Haus」というお茶の専門店が入っている。ロンドンに来たからにはぜひ美味しいお茶を買って帰りたい。4月中旬から10月末までファーマーズ・マーケットが土曜日の午前中に開催されているので、暖かくなると楽しみが増える


130 King St, London
オンタリオのヨーロッパってどんなところ?
オンタリオ一綺麗な街、パリ
PARIS
オンタリオ州の中で最も綺麗な街として知られるパリ。フランスのパリと違ってエッフェル塔はなくとも、19世紀に建てられた石畳の続く街並みはとても風情がある。おしゃれなカフェやベーカリー、チョコレート専門店などが楽しめる。

パリ名物、「Paris Drink Fest」
パリで人気があるイベントは毎年8月に開催される「Paris Drinks Fest」。今年は8月14日と15日に開催される。クラフトビールやサイダー、ワインとともにローカルレストランの料理を味わえる野外イベント。音楽ゲストに呼ばれるカナダ人アーティストたちもぜひチェックしたい。入場できるのは19歳以上のみ。しかし2歳以下の子どもがいる場合は、ベビーカーまたは抱っこしてなら一緒に入れる。
劇場の街、ストラトフォード
STRATFORD

誰もが知るイギリス人劇作家のウィリアム・シェイクスピアはストラトフォード=アポン=エイヴォン生まれ。その街と同じ名前であるオンタリオ州のストラトフォードも劇を愛する文化が育まれた場所。ここで有名なのは北アメリカ最大の劇団であり舞台芸術祭でもある「Stratford Festival」。シェークスピアの古典作品からミュージカルまで様々なスタイルのステージが繰り広げられる。4つの劇場(Festival Theatre、Avon Theatre、Tom Patterson Theatre、Studio Theatre)が連携して上演している。
ストラトフォードではグルメツアーを堪能しよう

世界的に有名なカナダ人歌手、ジャスティン・ビーバーが育った町でもあるストラトフォード。石畳が広がる街並みは舞台芸術だけでなくグルメも有名。オックスフォードにチーズ・トレイルがあるように、ここには「Chocolate Trail」というものがある。これもまたセルフガイドツアーなので、自分の好きなペースで好きなだけチョコレートを堪能できる。ストラトフォードは歩きやすいので天気の良い日にぴったり。ツアー参加店リストと地図は「Visit Stratford」のウェブサイトからダウンロードが可能。ベーコンやビールが好きな人には「Bacon and Ale Trail」もあるのでぜひチェックしたい。
世界で一番小さい映画館が
ストラトフォードとケンブリッジに

「マイクロシネマ」または「マイクロシアター」とは座席数が10から20席ほどのDIY映画館で、主の好きなプログラムを上映する場所である。この言葉は1990年代からあったもので、シネマコンプレックスではみられないようなインディペンデントシネマなどが観られる。ストラトフォードともうひとつはケンブリッジにある「The Little Prince Cinema」は親密な空間なので他の観客と作品について会話できることが素敵だ。アンティークショップに訪れたような内装での映画鑑賞はきっと日常から離れた体験に間違いなし。

オンタリオのオックスフォードはチーズの町
OXFORD



ガイドはウェブサイトにてダウンロードするか、紙媒体が好きな人はパンフレットも注文可能。おまかせコースを組んでもらいたい場合はEメールでリクエストすることもできる。

https://www.tourismoxford.ca/cheese-trail/
オックスフォードの有名な宿泊先は元チーズ工場
オックスフォード・カウンティで人気のあるElm Hurst Inn & Spaはもともと1864年に建てられたカナダ初のチーズ工場だった。ジェームス・ハリスというチーズ職人は1866年に「マンモス・チーズ」という3,311kgもの重さを誇る巨大チーズを作り上げ、工場ともに町の名前を世に広めた。1872年に彼が建てたお屋敷と工場の跡地がこのホテルとなっている。48室の客室と200人を収容できるイベントスペースは結婚式などのお祝いに最適だ。スパとダイニングも敷地内にあるので、のんびりリラックスした旅行を楽しみたい人にはぴったり。
アートとお酒の街、ウィンザー
WINDSOR

ウィンザーはフランス入植者がオンタリオ西部で初めて暮らしたエリア。それまではモントリオールに留まっていたと言われている。フランス文化の影響で街には「Ouellette」や「Pierre」、「François」 などフランス語の道の名前が多い。ダウンタウンにはMaiden LaneというトロントのGraffiti Alleyのような裏路地がある。

「Free 4 Walls」というパブリックアート・プロジェクトの発展で世界各国の有名アーティストが壁画アートを披露してきた。ウィンザー・エセックス郡ではワイン造りが知られており、ウィンザー市内からわずか南に1時間以内の距離で数々のワイナリーに足を運ぶことができる。
ウィンザーは日本でも名高いウイスキーの発祥地

自然を満喫するならケンブリッジ
CAMBRIDGE




本格的なイギリスパブで一杯飲もう
ケンブリッジの4つの歴史地区のひとつであるGaltに「The Black Badger Pub」というイギリスパブがある。その外観は周りの建物とは少し変わっている。そのデザインはイギリスで15世紀末から17世紀の初めに発展したチューダー様式なのだ。チューダー様式の特徴は「ハーフ・ティンバー」と呼ばれる技法で、柱や梁などの木造の骨組みが外部に露出されている。骨組みの間には漆喰が用いられていることが多いが、1階部分には石やレンガが埋め込まれていることもある。白い壁と黒や茶色の木材のコントラストがとても美しい建築スタイルだ。このパブでは本格的なイギリスパブの料理やお酒を味わえる。インテリアもチューダー様式に忠実なので、入れば気分はすっかりイギリスに違いない。
エジソンが幼少期を過ごした町、ウィーン
VIENNA

かつてはベルリンだったキッチナー
KITCHENER

ドイツ系の移民が多かったキッチナーは、1854年から1916年の間「ベルリン」と呼ばれていた。第一次世界大戦が起こり、ドイツ系移民を差別する人らによって改名が促された。キッチナーから車で25分ほど北へ行くと「The Kissing Bridge」という橋が存在する。その橋の本当の名前は「West Montrose Covered Bridge」で、オンタリオで最後に残っている屋根付き橋なのだ。自然のなかに目立つ赤い屋根は、むかし馬車の御者がひっそりキスを迫るのにパーフェクトな場所だとして噂されていた。なんとも可愛らしいネーミングの橋の建築スタイルは世界でもとても珍しいので方面に行くならぜひチェックしたい。
おわりに
オンタリオ州西部だけでも、今回紹介した街以外にブリュッセルやダブリン、リスボン、チューリッヒなど数々のヨーロッパの地名が地図に広がる。どの街にもユニークな歴史があり、発見できることはたくさん。これから暖かい日が続くので、ぜひオンタリオ西部を冒険しにいくインスピレーションになって欲しい。


















