【後編】カナダ最長トレイル「ブルース・トレイル」市民活動が守る自然の宝庫|特集「トロント発ローカルな旅-ブルース・トレイルを歩き、鳥と暮らす」
ブルース・トレイルのここがすごい!
ポイント1
無限の自然を体験するのはいつでも無料
ブルース・トレイルは南オンタリオ州最大の森林地帯だが、900kmに及ぶ旅路を続けば湿地や草原、沼地、崖、海岸など様々な地形に遭遇する。環境の種類が多いほど、見られる生き物の種類も多くなる。
3,000ヘクタールもの自然が広がるトレイルには300種類もの野鳥や90種類もの魚、55種類の哺乳類動物、36種類の爬虫類と両生類が存在する。
植物に関しては、37種類もの蘭が見られることで有名。この全てが無料で体験できるのだから行ってみて損はない。
クラブ別のハイキングイベントなどでバスを利用する場合は料金がかかるが、集まったお金は全て「BTC」のミッションのために使われる。
ポイント2
ナイアガラ断崖だからこそできた地形が魅力的
ナイアガラ断崖は主に石灰岩で出来ている。氷河や水流で風化した石灰岩はカルストや洞窟、ドリーネ(陥没地形)などの地形を作り上げた。カルスト地形が見られるのはトレイルのSydenham地域。ここにはFossil Glenと呼ばれるエリアが存在し、苔とシダで覆われた苦灰岩の屋根道がある。
Niagara地域にあるCave Springsでは地底湖が見られる。
ブルース半島近くにあるBruce’s Cavesでは名前の通り洞窟が多く、その歴史は8,000年前にもさかのぼる。世界中を旅しなくても、このトレイル一本だけで無数の楽しみ方があるのがおすすめポイントだ。
ポイント3
9つのクラブを制覇して、ご当地ワッペンを集めよう!
ブルース・トレイルは9つの「クラブ」に分かれている。このクラブとは地域ごとに分かれており、その範囲でのハイキングを終えたら特製のご当地ワッペンがもらえる。
クラブがあるのはNiagara、Iroquoia、 Toronto、Caledon Hills、Dufferin Hi-Land、Blue Mountains、Beaver Valley、Sydenham、そしてPeninsula。12歳以下のキッズたちには特別なデザインがあるので嬉しい。
たくさん集めて、最終的にはE2E(End to End、つまりブルース・トレイル完歩)のワッペンも記念にもらおう!
ポイント4
世界中にある姉妹トレイルもチェックしてみよう
ブルース・トレイルには「Friendship Trails」と呼ばれる姉妹都市のような「姉妹トレイル」が世界中に存在する。世界各国の団体とトレイルの管理と利用者の勧誘について知識を分け合うことが目標だ。アメリカ大陸ではコスタリカのPacific Slope TrailやブラジルのTranscarioca Trailがある。アジアには韓国のJeju Olle Trailや台湾のMountains to Sea Greenwayがある。ハイキングと旅行が好きな人なら、全姉妹トレイル制覇も不可能ではないかも!?
一度はハイクしてみたい!けど、どう始めたらいい?
Bruce Trail初参戦への悩みを解決
心配 1
距離が長すぎる
一日8時間のペースで歩けば30日間で端から端まで全距離を歩けるそうだが、現実的にそんな時間や体力がある人はあまりいない。今までに2,000人以上が「End to End」にチャレンジしているが、実は一度に全部歩かなくても「完歩した」と認識されるそう。かかる時間は数ヶ月でも数年でも大丈夫。地域ごとに完歩していくのもあり、少し歩いてUターンするのもあり。日付と歩いた距離の記録さえつけておけばOK。トレイル近くの住民の間では犬の散歩にも使われるのでハイキング初心者でも心配ない。
心配 2
自転車は乗れる?
残念ながら車輪が付いているものはトレイルに持って入れない。自転車やATV(全地形対応車)、ダートバイクもだめ。フットパス(歩くことを楽しむための道)なので、基本は徒歩。冬にはスノーシューやクロスカントリースキーをエンジョイすることもできる。なんと完歩した人の中には走って横断した人もいるそう。
心配 3
トロント市内から行ける?
「BTC」のToronto Club範囲を歩くならミシサガのすぐ西にあるハルトン(Halton)までライドシェアか電車でトレイル近くまで行くことが可能。車がある場合はトレイルのパーキングを利用できる。ツアーが良ければトロント・クラブが主催する「Bus Hikes」と呼ばれるハイキングイベントが便利。地下鉄のKipling駅やYork Mills駅から団体が用意するバスに乗ってトレイルまで移動し、そこからグループハイクに参加する。
Toronto Clubのお隣、Iroquoia Clubはハミルトン市で活動を広げており、実は「BTC」クラブの中でも最もアクティブなグループだそう。オンタリオ湖に面しているため釣りを楽しめることで有名。時間がある人は少し足を伸ばしてハミルトンでハイクに参加してもいいかもしれない。
心配 4
車で行くと、また車まで歩いて戻るのが面倒
車でトレイルに向かう場合、「BTC」の「Trail Angel Program」を通じてシャトルを予約しておくと便利。これはクラブ範囲の終わり、または途中でボランティアの人に向かいに来てもらい、車を駐車してあるスタート地点まで送ってもらえるシャトルサービス。利用料金はボランティアの時間とガソリン代を寄付金として渡すことが条件。キャンピングができる場所は地域ごとに指定されているので事前に「BTC」のサイト、またはアプリをチェックしておくと良い。
心配 5
迷子になったらどうしよう
ひとりで行く場合は家族や知人にいつハイクを始め、いつ終える予定なのかを伝えておこう。ブルース・トレイルの公式地図を携帯することはもちろん、道では便利な「Blazes」と呼ばれる印を目印に歩くことができる。
木や岩に白く塗られている長方形の印はメイン・トレイルを意味し、その色が青い場合はサイド・トレイルを示している。長方形が一つだけなら「真っ直ぐ進め」、二つ左右にあるうちの左側が上の場合「左に曲がれ」、そして右側が上の場合「右に進め」を指している。サイド・トレイルの場合アルファベットの「T」の形に長方形が示されている場合、それはそのトレイルの最終地点という意味がある。
活用しよう!Bruce Trailウェブサイトとアプリ
「Bruce Trail Conservancy」のウェブサイト(https://brucetrail.org)ではハイキングに必要なエリアマップがダウンロードできる。料金は1エリアにつき5ドル(メンバーシップ会員は3ドル)。ディテールが多く大きいファイルなので残念ながらスマホで見るのには向いておらず、プリントすることがベスト。
スマホで見たい人に向いているのはBruce Trail App(月額2.99ドル)。パーキングやキャンピング情報のチェック、そしてどの位歩いたかトラッキングすることもできる。悪天候の影響でルートが閉鎖されていることもあるので、ウェブサイトまたはアプリでしっかり確認してから出かけるのがおすすめ。