Elgin & Winter Garden Theatresと 『シェイプ・オブ・ウォーター』|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第3回】
今回は、トロントの劇場Elgin & Winter Garden Theatresをご紹介します。Young StをはさんでEaton Centreの向かいにあるこの劇場は、Elgin Theatreの上の階にWinter Garden Theatreがある構造で、普段はミュージカルやコンサートが上演される昔ながらの劇場です。トロント国際映画祭期間中はプレミア上映の会場にもなります。1913年に建てられ、今では世界で唯一の現役で稼働する2階建て劇場という点で、歴史的建造物でもあります。貴族が観劇していそうな優雅さがただようElgin Theatreと、天井に木々が生い茂り森に迷い込んだような気になるWinter Garden Theatreは、どちらもとても美しく、気品あふれる劇場です。
昨年アカデミー賞を受賞した映画『シェイプ・オブ・ウォーター』では、劇中に登場する映画館としてElgin Theatreが使われました。映画では、主人公のイライザが映画館の上の階にあるアパートに住んでいるという設定でしたが、現実には上の階はWinter Garden Theatreだったわけです。しかもそんな2階建て劇場は世界でもここだけなんて、事実は小説より奇なりといったところでしょうか。
さらに現実に起こった驚くべきことは、『シェイプ・オブ・ウォーター』がElgin Theatreでプレミア上映されたこと。2017年のトロント国際映画祭でカナダプレミアとして上映されたこの映画を、私もちょうどプレミア会場で見ていました。映画館のシーンでは、Elgin Theatreのスクリーンに映し出されるElgin Theatreを眺めるという、なんとも不思議な映画体験。奇妙な感覚ながら、今まさにこの場にいるという感動でいっぱいになりました。会場では、この場面はストーリーと関係なく拍手喝采でした。あのプレミア上映でのみ体験できた驚きの瞬間は、ギレルモ・デル・トロ監督への粋なプレゼントのように思えました。
Elgin & Winter Garden Theatresは、トロント在住の方ならぜひ一度訪れてみると良いのではないでしょうか。特にWinter Garden Theatreは、上の階の劇場までいくつものエスカレーターを昇っていく間、横の壁に歴代のトロント国際映画祭のポスターが掲示されているのも見ものです。
みえ
大阪在住の映画好き。好きな監督の日本未公開作見たさに日本語字幕なしの輸入DVDを見始めたのが約20年前。さらに、未公開の最新作見たさに約10年前からトロント国際映画祭に行くようになり、映画三昧の今に至る。