令和5年 新年の言葉「国際交流基金トロント日本文化センター 所長 山本訓子」
謹んで新年のお喜びを申し上げます。旧年中はご厚情を賜り誠にありがとうございました。
私は、2022年9月に、清水優子の後任として、当センター所長に着任致しました。私にとってトロントは、米国ニューヨーク以来、2度目の北米駐在となります。着任以来、カナダという国や人々を知り、学ぶ日々が続いています。
10月に入り、カナダと日本の双方でコロナ入国規制が緩和され、ついに両国間での人の往来が戻ってきました。秋のイベントシーズンには、映画祭、オペラ、コンサートを始め、各地で3年ぶりとなる対面イベントが開催され、その活気と熱狂から、どれほど人々がこの日を待ち望んでおられたかを目の当たりにしました。
当センターでも、昨年秋に、コロナ禍以来3年ぶりに、トロント国際作家祭に日本より児童文学作家を招へいしました。作家の小説を原作とするアニメ映画の上映会はほぼ満席となり、直筆サインを求める子どもたちの行列ができました。オンライン事業の魅力もたくさんありますが、目の前にいる作家本人と対峙するときの緊張感や喜びは、リアルの文化交流の醍醐味であり、子どもたちの心に強く残る体験になったものと思います。
折しも2022年10月、当基金は設立50周年を迎えました。1972年の設立以来、当基金は国際文化交流事業を専門的に推進する機関として、「文化」「言語」「対話」を通じて日本と諸外国との交流の推進を行って参りました。50年という大きな節目に、コロナ禍において培われてきた知見とともに、新たな文化交流の在り方を望む地点に来たような感慨を得ています。
社会を見渡しても、オンラインが定着し、働き方も変わりつつあります。2023年は、迫られるのではなく、より主体的で選択的な、バーチャルとリアルのバランスが社会で追求されていく年となるように思います。このような社会に、対面事業を再開できる喜びを皆さまと分かち合うとともに、それぞれの持つ魅力を組み合わせながら、安心・安全を第一に、効果的な国際文化交流を、トロントを起点にカナダ全土で展開していきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆様の本年の益々のご発展とご多幸をお祈りし、新年のご挨拶とさせていただきます。
国際交流基金トロント日本文化センター
所長 山本訓子