【第10回】役員賠償責任保険 (D&O保険)とは:営利・非営利団体における重要性|カナダ保険まるわかり講座
役員賠償責任保険(Directors and Officers Liability Insurance、通称D&O保険)は、企業の役員や従業員が、その職務の遂行において過失や不作為によって第三者に損害を与え、その損害賠償責任を負うことになった場合に、役員個人の資産を守るとともに、企業が役員への補償(会社補償)を行う際の費用を填補する保険です。近年、企業のコンプライアンス意識の高まりや訴訟リスクの増加に伴い、その重要性は益々高まっています。
D&O保険の概要

D&O保険は、主に以下の3つの側面から役員と会社を保護します。
- A側(個人補償): 会社が役員を補償できない、または補償しない場合に、役員個人の損害賠償責任を直接カバーします。会社の倒産などにより会社補償ができない場合などに特に重要です。
- B側(会社補償費用補償): 会社が役員に対して行った損害賠償費用の補償(会社補償)を、保険会社が会社に支払うものです。
- C側(会社補償): 役員個人だけでなく、会社自体が訴訟の対象となった場合に、その訴訟費用や損害賠償金をカバーします。
D&O保険の対象となる「不当行為」とは、役員がその職務に関して行ったエラー、虚偽表示、作為、不作為、過失、義務違反などを指します。具体的には、株主からの訴訟(株主代表訴訟など)、従業員からの訴訟(ハラスメント、不当解雇など)、顧客や取引先からの訴訟(契約違反、不正競争など)、さらには規制当局からの調査費用などが含まれます。ただし、意図的な不正行為や犯罪行為は一般的に補償の対象外となります。
営利団体におけるD&O保険
営利団体、特に上場企業においては、D&O保険は不可欠なものとなっています。以下にその理由を挙げます。
- 株主からの訴訟リスク: 投資家は企業の業績に直接影響を受けるため、役員の不適切な経営判断や情報開示の不備に対して、株主代表訴訟などを提起するリスクが非常に高いです。
- コンプライアンス違反: 独占禁止法違反、不正会計、環境規制違反など、多岐にわたる法令遵守が求められ、違反した場合に役員個人が責任を問われる可能性があります。
- 人材確保と定着: 優秀な人材を役員として迎え入れる際、D&O保険があることは、万が一の際の個人の資産保護につながるため、役員を引き受けるインセンティブとなります。
2019年の会社法改正により、日本においてもD&O保険契約に関する規定が整備され、会社が役員のためにD&O保険を締結することの適法性が明確化されました。これにより、日本の企業においてもD&O保険の導入が進んでいます。
非営利団体におけるD&O保険
非営利団体においてもD&O保険の重要性は高まっています。営利団体とは異なる特性を持つため、以下のようなリスクに備える必要があります。
- 資金管理や運用の透明性: 寄付金や助成金などの資金を適切に管理・運用する責任があり、その運用に疑義が生じた場合、寄付者や関係者から訴訟を提起される可能性があります。
- 雇用関連のクレーム: 営利団体と同様に、従業員からの不当解雇、ハラスメント、差別などの雇用関連の訴訟リスクが存在します。
- ミッション達成への義務違反: 非営利団体はその設立目的であるミッションを果たす義務があり、その義務を怠ったと見なされた場合に、関係者から責任を追及される可能性があります。
- ボランティア役員の保護: 非営利団体の役員は無報酬のボランティアであることも多く、彼らが個人の資産を失うリスクを軽減するためにもD&O保険は重要です。D&O保険があることで、経験豊富な人材が役員として参加しやすくなります。
- 風評被害と信頼の維持: 訴訟や不祥事は、非営利団体の社会的な信用を大きく損ない、資金調達や活動に影響を与える可能性があります。D&O保険は、そうした事態への対応費用をカバーし、団体全体の安定に寄与します。
非営利団体の場合、営利団体のような株主訴訟は少ないものの、雇用関連の訴訟や、資金の使途、事業活動に関するクレームが主要なリスクとなります。そのため、一般的に営利団体向けのD&O保険と比べて、補償範囲や保険料が異なる場合があります。非営利団体特有のリスクに特化した補償内容を選択することが重要です。
まとめ
D&O保険は、営利・非営利を問わず、組織の意思決定を担う役員個人と、その組織全体を守るための重要なリスクマネジメントツールです。役員が安心して職務を遂行できる環境を整備し、組織の持続的な発展を支える上で不可欠な存在と言えるでしょう。ここに掲載されている内容はあくまでも概略参考資料であり、正確性を保証するものではありません。すべての補償内容の詳細は、個々の保険約款に基づきます。
※こに掲載されている内容はあくまでも概略参考資料であり、正確性を保証するものではありません。すべての補償内容の詳細は、個々の保険約款に基づきます。
保険サービス
https://www.biis.ca/ja/
カナダ旅行保険情報
https://www.biiscanada.com/refap/trj151/







