【第11回】カナダ・オンタリオ州における 売上補償保険|カナダ保険まるわかり講座
カナダ・オンタリオ州における売上補償保険(Business Interruption Insurance or Business Income Insurance)は、企業が予期せぬ出来事により事業を中断せざるを得なくなった際に、失われた収益と追加で発生した費用を補填する重要な保険です。この保険は、火災、洪水、暴風雨、またはその他の「補償対象となる危険(Covered Perils)」によって、事業所の物理的な損害が発生した場合に適用されるのが一般的です。単独の保険としてではなく、通常は事業用財産保険(Commercial Property Insurance)の特約として付帯されます。
補償の仕組みと内容
売上補償保険は、損害によって事業が中断された際に、事業が通常通り営業していれば得られたであろう「利益」と、中断中も発生し続ける「経費」をカバーすることで、事業の財務安定を維持することを目的としています。具体的には、次の項目が補償の対象となります。
失われた純利益(Lost Net Income): 過去の財務記録に基づき、事業が通常通り営業していた場合に得られたと推定される純利益が支払われます。これにより、事業主は売上がゼロになった期間でも、利益面での損失を最小限に抑えることができます。
継続する経費(Continuing Expenses): 事業が停止していても支払い義務がある経費を補償します。これには、家賃、従業員の給与、ローンの支払い、光熱費、保険料などが含まれます。これにより、事業再開に向けた基盤を維持し、従業員の雇用を継続することが可能になります。
追加経費(Extra Expenses): 事業中断による損失を最小限に抑えるために、臨時に発生した費用を補償します。例えば、仮の事務所や代替機器のレンタル費用、緊急修理費用、復旧を早めるための残業代などが該当します。
待機期間と補償期間
多くの売上補償保険には、「待機期間(Waiting Period)」または「免責期間(Deductible)」が設定されています。これは、損害が発生してから保険の補償が開始されるまでの期間を指します。
待機期間: 一般的に48時間から72時間です。この期間中に発生した損失は、保険の対象外となります。待機期間が終了すると、その後の損失が補償対象となります。この期間は、軽微な損害に対する請求を減らすためのものであり、保険料を抑える効果もあります。
補償期間(Indemnity Period): 補償が続く期間を指し、通常は12ヶ月間です。この期間は、事業が元の状態に戻るまでに必要と合理的に判断される期間です。ただし、火災や大規模な自然災害などで復旧に1年以上かかることが想定される場合、追加料金を支払うことで18ヶ月や24ヶ月など、より長い期間に延長することも可能です。
補償の適用範囲と注意点
売上補償保険は、あくまで保険契約で定められた物理的な損害に起因する事業中断をカバーするものです。したがって、次のようなケースは一般的に補償対象外となります。
物理的な損害を伴わない事業中断: パンデミック、政府の命令による閉鎖、従業員のストライキ、市場の変動などは通常、補償対象に含まれません。特にCOVID-19パンデミック以降、この点は多くの保険契約で明確に除外されています。
サプライチェーンの中断: 自身の事業所が直接損害を受けていなくても、主要なサプライヤーや顧客の事業所の損害により事業が中断された場合、通常は補償対象外となります。ただし、「偶発的事業中断保険(Contingent Business Interruption Insurance)」という特約を追加することで、こうしたリスクにも備えることができます。
保険契約で明示的に除外されている事由: 地震や洪水など、特定の自然災害は多くの基本契約から除外されており、別途追加補償(endorsement)として契約する必要があります。
カナダ・オンタリオで事業を営む上で、売上補償保険は予期せぬリスクに備えるための重要なツールです。ビジネスの規模、場所、およびサプライチェーンの特性に応じて、適切な保険内容を選択し、契約内容を十分に理解することが不可欠です。
※ここに掲載されている内容はあくまでも概略参考資料であり、正確性を保証するものではありません。すべての補償内容の詳細は、個々の保険約款に基づきます。






