【第28回】国際離婚と帰国~カナダ最新判決|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
ハーグ条約の「子供の国際的な移動に関する規定」を日本が受け入れてから7年、「離婚しても子供と日本に帰国できない」という概念は国際結婚した日本人女性の間で一般常識となりつつあります。しかし実際にはどうなのでしょう。 そこで今回は、「別居後、子供と帰国するには?」 についてエキスパート弁護士ケン・ネイソンズに聞いてみました。
子の引越しに関する法律
「子供が安全に豊かに育ってゆくために何が最善なのか」に関するChildren’s Law Reform Act (CLRA)が、2021年3月に改正されたことは、本誌2021年7月号でお伝えしました。子と一緒に引っ越すための新ルールが紹介されていますので、今回の記事と併せてぜひご覧ください。
この新ルールの下、裁判所は「引っ越しが、引っ越さないときと比べ、子にとって有益であるかどうか」を精査し判決を下します。
最新判例
今回は、この新しいルールが採用された最新判決についての報告です。
一審で引越しを申立てた母親が勝訴し、二審は父親の主張を認めました。しかし控訴審は一審の判決を支持し、母親が子と帰国することを認めました。
「母と父、双方に日常的に関わりながら生活することこそが子の最善の利益」だとしてきたカナダの認識が覆された背景は、次の通りです。
外国人シングルマザーの苦悩
モンゴル人女性のカナダでの国際結婚は短期間で破綻しました。外国人シングルマザーの生活はきびしいものでした。
彼女の学歴と職歴を持ってしても、カナダでは訪問販売やコーヒーバリスタなど低賃金の仕事にしか就けず、年収は3万8千ドルが精一杯でした。生まれ育った祖国モンゴルであれば、もっと良い仕事につけます。
2019年、母親はカナダの裁判所にモンゴルへの移住を申立てました。
結婚と離婚裁判の経緯
母親はモンゴルの大学を卒業した後、日本の大学院で経済学を修め、帰国後は国際企業コンサルタントとして活躍しました。しかし、2010年32歳の時に移住したカナダでは、なかなか思うような仕事に就けませんでした。
2013年にカナダ人男性と結婚し娘をもうけましたが、翌年には別居しました。
娘の誕生からずっと母親のみが育児にたずさわり、娘が2歳の時「父親の許可なくモンゴルに一時帰国できる」という判決も受けました。以降、モンゴルの家族との交流は頻繁で、帰国時のみならず、スカイプを通して家族として過ごしているため、娘はモンゴル語も流暢に話します。
翌年母親に単独親権が与えられ、一週おきの父親と面会交流が認められました。
移住申立
2018年、母親は、娘と共に家族の住むモンゴルの首都ウランバートルへ移住許可を裁判所に申立てました。母親はCLRAに従い、クリスマスと夏休みのカナダへの長期訪問を始めとする面会交流を提案しました。これに対し父親は、共同親権を主張し真っ向から反論しました。
裁判所は3日間に渡り証拠を精査した結果、母娘のモンゴルへの転居を許可しました。そして、先に述べた控訴審を経て2021年8月、一審判決が採用されたのです。
判決事由
「子の最善の利益」判断に基づく判決事由は、次のとおりです。
❶モンゴルの家族は家族の絆を優先したが、父親の家族は母娘とのかかわりを持とうとしなかった。母親の家族は、娘の誕生から母親が最も助けを必要としている現在まで経済的、精神的な支援を続けている。
❷母親は一人暮らしのシングルマザーとしてトロントで孤立や不安を感じている。
❸モンゴルでは、母親の雇用条件が良く経済的に安定する。また働く母親の育児を家族が支援できる。
❹母親はモンゴルへの帰国により、自信と心理的、社会的、経済的な安定を取り戻すことができる。
❺子供は、母親の家族が用意した広い住宅で家族の愛情を受けながら豊かに暮らすことができる。
この判決事由は、多くの日本人シングルマザーたちの主張と合致する大変興味深いものですね。
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