【第41回】婚姻住宅:マイホームが数字に変わるとき|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
「マイホームの購入」を目標とする新婚カップルや「結婚生活における最大の買い物はマイホーム」だという熟年カップルは少なくありません。家族法では、このマイホームを「カップルが一緒に暮らす持ち家」と定義し「婚姻住宅」とよびます。そしてこの婚姻住宅は自動的に「婚姻財産」となります。では、婚姻財産とはなんでしょう。
そこで今回は、マイホームを婚姻財産として考えるとき、知っておきたいルールをオンタリオ州スペシャリスト認定弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。
婚姻財産
婚姻財産とは、その名の通り「婚姻期間中に入手した財産」です。結婚後に蓄えた預金や投資、購入した車などに加え、投資用に購入した不動産などが婚姻財産となります。
配偶者のどちらか、あるいは両方が事業主である場合や、夫婦で事業を立ち上げたり、結婚後配偶者の事業を手伝った場合などの婚姻財産の算出はたいへん複雑で、経験豊かな弁護士と共に会計士らの専門職が介入する場合もあります。個人名義の財産のみならず、事業財産も婚姻財産と見なされるからです。
さて、婚姻財産には「結婚前の財産」は含まれません。「別居した日」に所有する財産総額から「結婚した日」の財産総額を差し引いたものが、それぞれの「婚姻財産」となります。共有名義の銀行口座や不動産などがあれば、50%がそれぞれの婚姻財産です。
財産分与
これらの婚姻財産は、「ファイナンシャル・ステートメント」と呼ばれる宣誓供述書で完全開示しなければなりません。ファイナンシャル・ステートメントは、ふたりの婚姻財産の差を正しく算出し、財産分与額を求めるための重要な資料となります。
「イコーライゼーション」と呼ばれる財産分与は、それぞれの婚姻財産を同じにすることが目的です。例えば、夫と妻の婚姻財産がそれぞれ10万ドル、5万ドルだった場合、(100,000 – 50,000) ÷ 2 = 25,000となり、夫から妻に2万5千ドルを支払うことで、配偶者間の婚姻財産が同じ(イコール)になります。これが「イコーライゼーション」と呼ばれる所以です。
ファイナンシャル・ステートメントは法文書ですが、協議離婚においてもなくてはならない大切な資料です。婚姻財産の完全開示がない限り、法律に則った財産分与は不可能です。
婚姻住宅
くりかえしますが、婚姻財産には結婚前の財産は含まれません。したがって婚姻期間が極めて短い場合、財産分与はほとんどないと考えられます。しかし婚姻住宅が存在する場合は例外です。
夫婦が暮らしていた自宅が、結婚前に一方の配偶者によって購入されたものであったり、一方の配偶者が所有する会社名義のものであった場合でも、「別居した日の婚姻住宅の価値」に対する権利は双方に発生します。結婚した日の婚姻住宅の価値が別居した日のそれから差し引かれることはありません。
これは婚姻期間がどんなに短くても同じですが、法的な夫婦であることが条件です。オンタリオ州では2023年6月現在、同居するパートナーに婚姻住宅への権利はありません。
ちなみに、婚姻住宅の名義が共有名義でない場合、先に挙げたファイナンシャル・ステートメントには名義人の婚姻財産として計上されます。これによって、より正確な財産分与が達成できます。
このように婚姻住宅は、銀行預金などの他の婚姻財産とは異なるルールが適用されるため、財産分与に大きな影響を与えます。婚姻財産の算出は大変複雑です。婚姻中に知らされていなかった財産が別居後初めて明るみに出る場合も少なくありませんので、家族法弁護士への相談をお勧めします。
「婚姻住宅や財産分与」をはじめとする家族の問題は、二名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍する家族法専門法律事務所、ネイソンズ・シーゲルLLPにお任せください。
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