【第36回】国際離婚における弁護士の役割|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
海外で暮らす日本人の多くが、国際結婚しています。そんな日本人が、結婚を続けることに疑問を感じ、悶々とした日々を過ごしていたとします。あるいは、移住した国で配偶者から突然別居を切り出され、途方に暮れていたとします。
そんなとき頼りになるのが、「海外に住む日本人の離婚案件」に経験豊かな弁護士たちです。「離婚届」で完了する日本の離婚と異なり、国際離婚においては、離婚条件を法文書にしておくことはとても大切なことだからです。
しかし、セパレーション・アグリーメントが法文書として法的効力を発揮するには、いくつかの条件があります。そこで今回は「国際離婚における離婚弁護士の役割」について、オンタリオ州スペシャリスト認定弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。
国際離婚と法管轄
国際離婚に関する情報を集めようとするとき、多くの人がインターネットを頼ります。そして日本語で検索した結果「ネイソンズ・シーゲル法律事務所」に辿り着いたとします。
実際に、バンクーバーやモントリオールをはじめとするカナダ各州、イギリス、アメリカなどの英語圏の国々からもお問い合わせをいただくのですが、「残念ながら、お役に立てません」とお返事をする度に心が痛みます。
余談ですが、大家との諍いや賠償請求などのトラブルを抱える日本人の方々からご相談いただくこともありますが、こちらにもお断りのお返事を差し上げることになります。
ネイソンズ・シーゲル法律事務所は、オンタリオ州の家族法を専門とします。「オンタリオ州」と「家族法」という二つのキーワードを満たさないケースは、法管轄外、そして専門外という二つの理由からお断りせざるをえないのです。
家族法は、連邦法と州法の双方に関わるので、夫婦が暮らしていた州のライセンスを持つ弁護士に依頼しなければなりません。つまり、オンタリオ州以外の国際離婚に、ネイソンズ・シーゲル法律事務所が関わることはできないのです。
インディペンデント・リーガル・アドバイス
オンタリオ州の離婚であっても、お断わりしなければならないケースがあります。当事者間で作成したセパレーション・アグリーメントの承認のみを依頼された場合です。
当事者それぞれが、別々の弁護士からアドバイスを受けることをインディペンデント・リーガル・アドバイス(ILA)と言いますが、このILAを得ないで署名されたアグリーメントは法的効力を欠くとみなされます。
弁護士の関与なしに作成され署名されたアグリーメントは、後に提訴された場合、正式な法文書として認められない可能性が高いのです。特に英語を母国語としない配偶者が、内容を理解する機会なく署名してしまった場合などがこれに当たります。
ILAの重要さを知っているカナダ人は、離婚に際し日本人の配偶者に弁護士を雇うよう促すでしょう。そして弁護士からアドバイスを受けたことを証明するために「ILA証書」を発行してもらうよう求めます。
これは、「自分で作ったセパレーション・アグリーメントに署名を強要する」などという悪質なケースと比べると、穏当なアプローチだとはいえます。
しかし当事務所では、ILAに必要な情報を提供していただかない限り「ILA証書」を発行することはありません。
ファイナンシャル・ステートメント
ILAに必要な情報とは、「婚姻財産の完全開示」です。これがなければ、弁護士は正しいアドバイスを提供することができません。
例えば、エクセルなどで各自の財産をまとめ、財産分与を決めたセパレーション・アグリーメントへの「ILA証書」を求められたとします。一見きちんと整理されており、互いに納得している内容であっても、年収、財産や債務などの明細書を添付したファイナンシャル・ステートメントの作成に応じていただけない場合は、ご依頼をお断りします。
なぜなら、弁護士の前で「嘘も隠し立てもありません」と宣誓供述した、夫婦それぞれの婚姻財産の完全開示である「ファイナンシャル・ステートメント」が添付されていないセパレーション・アグリーメントは、無効とみなされるからです。離婚後、夫婦のどちらかが財産分与の見直しを求めて提訴したような場合がそれに当たります。
離婚弁護士は、「法文書としての正式なファイナンシャル・ステートメントを承認する」という大切な役割も果たします。
「国際離婚のセパレーション・アグリーメント」をはじめとする家族の問題は、家族法を専門とする2名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍するネイソンズ・シーゲル弁護士事務所にお任せください。
リモート相談は、次の手順で行っております。
- hnoguchi@nathenssiegel.com(野口)宛に相談内容をお知らせください。
↓ - 当事者おふたりのフルネームと相談者の写真付きIDをお願いします。
↓ - 相手方が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認します(弁護士協会の規定により、相手方が過去の顧客であった場合には相談に応じられません)。
↓ - オンライン・ミーティングの日時候補をお知らせします。
↓ - 面談日時をお選びいただいた後、オンライン・ミーティング(Zoom)リンクをお送りします。
↓ - 初回面談への野口の同席は無料です。面談時に野口から今後の流れを含む詳細を説明します。