【第35回】国際離婚と親子関係|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方
本誌8月号でカナダでは共同親権が一般的で、ほとんどすべての親に親権が与えられることを紹介しました。
実は、カナダでは「親権(Custody)」という用語は公的に廃止されており、家族法の現場では「意思決定の責任(Decision-Making Responsibility)」と称されます。また「面会交流(Access)」に代わって「子育てに関わる時間(Parenting Time)」が正式な呼称です。
子を親の所有物であるかのように扱うことを止め、「親子の関係性を子の視点で捉えよう」とする試みなのでしょう。
そこで今回は、離婚(別居)と共にシフトする親子関係について、スペシャリスト認定弁護士のケン·ネイソンズに聞いてみました。
離婚後の親子関係
日本では、親権をもたない親が子との交流を保つためには、親権をもつ親の許可が必要です。ですから、離婚がそのまま親子関係の断絶につながる場合も少なくありません。
一方カナダでは日本とは真逆で、単独親権を持つ親でさえ、他方の親が子との交流を保てるよう努力し、協力しなければなりません。「離婚後の親子関係の保持は『子の権利』であり、それを守るのが『親の責任』だ」というのが、根底にある考え方です。
カナダでは、両親の離婚を経験した子供たちが、双方の親やそれぞれの祖父母らとの家族関係を保つことを目標としています。
ハーグ条約と親子関係
一方の親が子を連れて国境を超えた場合、他方の親がとることのできる法的措置を定めた国際協定は、国際結婚の当事者の間では「ハーグ条約」という通称で広く知られています。
ハーグ条約では、子が一方の親と国境を超えた場合、両親と子が共に暮らしていた国へ子を戻し、その国の法律に従って親子関係について取り決めることが定められています。
両親とカナダで暮らしていた子供の場合、親子の国籍にかかわらず、家族が生活を営んでいた州の法律によって親子関係の方向性が決定されます。
しかし、当事者間で合意された取り決めがある場合は、この範囲ではありません。
法的執行力のある同意書
例えば、父母の離婚に伴い、オンタリオ州で生活していた子が母親と日本に移住することに父親が同意したなら、その旨を法的に認められる同意書にしておく必要があります。
当事者間で作成した同意書は、様々な理由からカナダや日本の裁判所でその執行力が問われます。例えば、法的執行力を有するセパレーション・アグリーメントの作成には、財産の完全開示や、それぞれが異なる弁護士からアドバイスを受けたことの証明書など、専門職の介入が必須です。
法的効力を有するセパレーション・アグリーメントが存在しなければ、冒頭の例の父親の気が変わった場合、母親は、ハーグ条約に則り訴状を受け取ることになりかねないからです。
離婚(別居)と共にシフトする親子関係
「別々に暮らしている両親の間を行ったり来たりしながら育つ」ことが不幸であったり、不自然であったりするという感覚は、今のカナダ社会にはないようです。「両親が一緒に暮らしているかどうかより、親と子の関係が健全であることの方がはるかに大切だ」という考え方が、離婚後の親子関係が目指す姿に反映されています。
離婚によって家族の形が変わることで、むしろ親子のありかたをポジティブな方向へシフトさせ、子の人生を豊かなものにするーこれが、Joint CustodyをCo-Parentingと呼ぶようになった由来なのでしょう。
国際離婚においても、子が父親と母親、それぞれのヘリテージから最大限の恩恵を受けられるようCo-Parentingが奨励されています。
離婚後の健全な親子関係の構築は、子にとっても、両親にとっても得難い経験となるに違いありません。
「離婚に伴う親子関係」を決める時、弁護士のサポートは重要です。ネイソンズ·シーゲル弁護士事務所は、「離婚に伴う親子関係」に関する問題のすべてを日本語でサポートします。
「離婚に伴う親子関係」をはじめとする家族の問題は、家族法を専門とする2名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍するネイソンズ・シーゲル弁護士事務所にお任せください。
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