第91回 好きな事。|トロントの多様性をクリエイティブに楽しむ
最近、東京の喧騒を離れて地方や海外を訪れるとき、僕が必ず立ち寄る場所がある。それは、レコード屋、古着屋、そして古本屋の三箇所だ。
世界的なヴィンテージブームという背景もあるが、それ以上に、店内に足を踏み入れるたびに20代の頃のあの初期衝動が蘇ってくる感覚が好きだ。スマホ一台あれば、メルカリを開いて瞬時にレア物の相場や数字を把握できてしまう時代。しかし、僕が旅先で求めているのは、そんなマーケットのロジックではない。
僕が探しているのは、その土地の空気を吸い込み、棚を泥臭く掘り進める中でしか出会えない代替不能な文脈だ。アルゴリズムが推奨する正解をなぞるのではなく、偶然がもたらす、どこか狂気のある発見。それこそが、旅というインプットの醍醐味だと思っている。
今月、僕は宮城・仙台の街を歩いていた。そこで手に入れたのは、山下達郎の初版レコードと、ほどよく時を刻んだ70年代のデニム。
訪れたのはMISSION GENERAL STOREとディスクノート。店内に一歩足を踏み入れた瞬間、肌に触れる空気でここは良い店だという確信めいた予感があった。店主の審美眼が棚の隅々にまで行き届いている空間には、独特の熱量が漂っている。
旅先での買い物には、特有のヒリつくような緊張感がある。次はいつ来られるかわからないという一期一会の制約が、僕の購買意欲を心地よく、かつ強烈に刺激する。後でネットで探せば似たものは見つかるかもしれない。しかし、その時、その場所で、指先に触れた質感や店内のBGMと共に持ち帰るという体験は、決してデジタルでは代替できない。
便利すぎる世の中からあえて距離を置き、自分の感性だけで人生の私有地を耕す時間。
それは、効率ばかりを追い求める日常へのささやかな抵抗であり、自分自身をするため内政的な時間でもある。















