非営利人形劇団のFamous PEOPLE Playersがスペシャルディナーショーを開催
結成40周年を記念し、音楽グループこすもすを招待。12年ぶり待望の再会。
@Famous PEOPLE Players Dine & Dream Theatre, 6月14日
闇に光る人形劇Famous PEOPLE Playersと音楽グループ‘こすもす’のコラボレーション
Diane Dupuyさん
非営利団体のFamous PEOPLE Players(以下FPPと省略)が今年6月で結成40周年を迎えた。FPPはエトビコにあるPhil Collins Theatreを拠点とし、Dine & Dream をテーマにランチ、ディナーサービスに続いてブラックライトで映し出される人形劇を演じている。ここの団員はほとんどが身体的または知的障害を持った人たちで構成されている。
団体を結成するきっかけとなったのは創始者のDiane Dupuyさん自身がADHDを持って生まれたためだ。しかし、当時はまだそんな言葉はなく、障害に対する理解もなかった。学生時に”Retorted”と呼ばれた汚名を返上するために、彼女が最も好きだった人形劇を演じることにした。10数人で始まった人形劇はピアニストのLiberace氏の目にとまり、10年間ラスベガスで公演することになる。ブロードウェイ、中国ツアーなどさまざまな成功を収め、日本でも12回のツアー公演を行っている。
二つの団体が出会ったきっかけはFPPが阪神淡路大震災の後に日本に招待された時に行った震災で親を亡くした子供たちへのチャリティー公演だ。音楽グループ‘こすもす’の創始者、鈴木都氏はそこでFPPとの運命的な出会いをし、一気に彼らのパフォーマンスの虜になった。「日本の障害を持った人たちは壁が大きくて乗り越えられないの。でもカナダの人は障害を持っていてもいとも簡単に壁を乗り越えようとする。それが本当に凄いと思う」と語る都氏。‘こすもす’も同時期に結成された。現在7人で構成されている‘こすもす’は養護学校を卒業した音楽好きの仲間たちが集まり、ミュージックベルを中心に、ピアノ、エレクトーン、打楽器で合奏する。内1名は体調がすぐれず、今回カナダに来ることが出来なかった。メンバーの半分は初期から在籍しており、12年前にも一度来加し、FPPとコラボレートしている。
当日のイベントでは、まずダイニングルームに案内される。ここではFPPが行っているExceptional Achievement Programに在籍しているスタッフ達が調理し、来場者にサーブする。このプログラムは障害を持っている人が調理、食事の提供などのホスピタリティーを通して、カスタマーサービス、パブリックリレーションを学び、最終的にはパフォーマーとしてステージに立つ。
約200人にも及ぶ来場者を少しゆっくりとしたサービスだが、一人一人丁寧に応対していくスタッフはとても明るく柔らかな人が多かった。Dianeさんが言う「唯一一緒に働くことが出来ない障害は横暴な態度しか取れない人。感謝の気持ちを忘れなければどんな障害を持った人とでも仕事ができるわ」というのが如実に出ているサービスだった。
サラダ、メインコースの後はダイニングルームの奥にある劇場へと場所を移し、いよいよ‘こすもす’の合奏とFPPの人形劇が披露される。Dianeさんのウェルカムスピーチから始まり、団体結成のきっかけ、‘こすもす’との出会いを話し、ADHDを障害とは捉えずに「Awesome Dreams with High Drama」と述べた。そしてステージを‘こすもす’のメンバーに引き継いだ。
この日の合奏は5曲。始めは少し緊張していたように見えたメンバーもすぐに会場との一体感を楽しみ始めた。数多くあるベルを曲に合わせて選び演奏しながら、打楽器の演奏もこなすメンバーに会場は心を打たれている様子だった。5曲の演奏が終わった後にはスタンディングオベーションで‘こすもす’への拍手はなかなか鳴りやまなかった。
続いてFPPの人形劇が行われた。カナダでは6月はイタリアの文化を伝えるための月とされていることから、この日の人形劇はさまざまなイタリアンミュージックを中心とした短編音楽人形劇を披露した。ブラックライトの中で輝き踊る人形たちに会場は魅了された。最後にどのように人形たちが操られていたかを見せるために行われた演目ではパフォーマーの技術が光った。
公演の後にDianeさんは‘こすもす’のメンバーを呼び、改めて感謝の気持ちを述べた。それに対し都氏はFPPへのドネーションとクッキーを渡し、40周年を祝った。‘こすもす’のメンバーは日本での演奏よりもカナダでの演奏の方が楽しかったと述べ、カナダが初めてのメンバーも2度目のメンバーも今回の滞在を満喫したようだった。
最後に来場者からドネーションを受け取った都氏はFPPを東日本大震災の5周忌に東北に招待する基金にすると誓った。阪神淡路大震災を経験している都氏は「必要なのは物資ではない。本当に必要なのは希望。」と述べ、東北の人たちにFamous PEOPLE Playersのパフォーマーを見て希望を持ち復興していってほしいと祈った。
この会場では日本とカナダの障害に対する理解の違いを目の当たりにすることになる「パフォーマンスを見て聞くだけではわからないので、実際にこのシアターに来て体感してください。」とFPPと共演したことのある上田麻祐子さんは言う。FPPは毎週火曜日から土曜日に一般公開されている。日本ではあまり見ることのできないパフォーマンスを一度観に行ってみてはいかがだろうか。
Famous PEOPLE Players
www.fpp.org