美容対談 ユカリさん x Hiroさん
お2人の出会いは、最初にHiroさんがユカリさんの存在やご活躍振りを知り、興味を持った事から始まる。そして昨年、帰国時のHiroさんが熱望して、ユカリさんが勤めるサロン訪問をしたときに2人の初対面が実現した。日本とカナダで活躍する美容師のお2人。トップとして活躍する秘訣、若者へのメッセージ、また、今に至るまでの葛藤などを、女性スタイリストならではの視点から語って頂いた。
■10年以上トップで活躍するその秘訣は何ですか?
ユカリ:一言で言うと、「一日一日を大切に過ごす」でしょうか。そしたら、結果的に1番になってました。 最初のサロンを辞めてからは、経営者セミナーにも手当たり次第行き、そこでいろんな企業の社長さんが集まってお話してくださったので、自分の弱いところや、足りないところが明確になりました。そこを鍛えるために今の会社でも最初から努力しました。実際のところ、もっと若い勢いがほしいですし、誰か若い人に追い抜いてほしいという気持ちもあります。
若い世代に足りないものとは何だと思いますか?
ユカリ:今の若い子は、言われたら言われたままするか、もしくは何もしないか、そんな元気のない若い子たちが多くなってきています。また、会社に対する想いが足りないような気もします。自己顕示力もあるかもしれませんが、『今いる会社に認められたい』そんな気持ちも会社への想いがあれば、自然と生まれてくると思います。私はこの会社が本当に大好きなので、その会社で自分の立場をどう確立していくか、どう貢献していくのか、そんなことを考えていたら、必然的に一生懸命になれます。先輩に言われることを、そのままするだけではなく、自分の想いをぶつける機会も出てくると思いますが、そういう部分が今の若い子には見えないので、それが寂しいです。マネージャーとして本当に大切な事は、少し口調が強くなってでも必ず一生懸命話しますが、無反応のような、響いてないのかなと感じることもあります。もちろん、そんな若い子ばかりではありませんが、こう言われて悔しくないのかな、少しくらい反論や、納得いかない顔とかしてもいいのにと思えます。感情や熱意が見えないような、どこか冷めてしまっているのかなとも感じる若い子が、昔に比べて増えた気がします。
Hiro:自分より若い世代に期待する部分が非常に同感ですね。僕は、日本人美容師は本当に素晴らしいと思います。だからこそ、ワーホリ等で毎年、多くの日本人美容師さんがトロントに来られるのに、他の外国人美容師さんや日本人の他業種さんに比べ、トロントにいる日本人美容師さんは本来の実力ほどの評価や扱いを受けていない方が多い気がして、寂しく思います。海外では、日本で培った名実だけではなく、社交性、コミュニケーション能力、ネットワーク、そして、アピール力も大切だと思います。
視野の広い方なら、ご自身の色んな意味でのポジショニングも良く理解していらっしゃると思います。それが出来たら、アメリカンドリームならぬ、カナディアンドリームもきっと実現可能だと思うんです。以前から、美容師はたまには美容業以外の他業種・ジャンル等と触れ合う事で人として成長し、結果的に美容師・美容業界としても成長できると思っています。僕が日本で講演、講習会を担当させて頂くときも美容以外の話・体験談等も混ぜた方が良いと考えています。
■女性スタイリストとしての葛藤はありましたか?
ユカリ:今までガムシャラに働いてきて、プライベートも仕事に費やしてきたように感じます。これからは、朝からヨガをしてゆっくり出勤してみたり、夜はお料理でもしたり、充実した姿を見せたいです。今まで辞めていく女性の美容師が多かったので、しっかり土台を作ったらこんな生活を送ることが出来るという姿を見せたいです。キャリアを積んできた女性スタイリストでも、結婚を考えると辞めてしまう人が多かったので、それが辛いなと感じることもありました。その人たちから見て、自分がなりたいような存在になれていなかったのかなと思うと、寂しかったですね。実際、女性スタイリストが求めているものは、ただガムシャラに働く姿ではなくて、結婚したり、自分の時間を自由に使えたりする生活を望んでいるように感じます。ガムシャラに仕事をしたい女性ばかりではないから、憧れられる存在でいるのは難しいなと思いました。時代もあると思います。美容室NYNYの幹部はほとんどが男性なので、その中で時には困惑したり、いろんな葛藤がありましたね。
Hiro:ユカリさんのお話を聞いて、環境や立場は違うけども親近感というか、 自分の経験や気持ちと通ずる部分があるなと感じました。僕もTONI&GUYトロント店でガムシャラに働いていた頃、狭い店内に常に多くスタッフはいるのに、美容、仕事、将来等に対する価値観の違いからか「孤独感」というか「自分自身との戦い」のような感覚がよくありました。クビになったり、失踪しちゃうスタッフがいたりと、そんな毎月のようにスタッフの出入りがあった前の職場だったんです。幸い僕の場合は、長年働いた末に気付いたら、今の共同経営の仲間達も1年目からずっと辞めずに残っていたんです。ウチのサロンは共同経営の仲間達もスタッフも全員女性のカナダ人ですし、更に各々の家族の元々の出身国も見事にバラバラなんですが、性格や好み等は多少違っても、全員で1つのチーム=bespokeファミリーとしての相性が良かったと思います。
■理想の女性像はありますか?
ユカリ:常に自分が理想の姿になれたらという思いはありました。自分の事も好きですし、自分が歩んできたこの人生も気に入ってます。悔いもないですし、後悔した事もないと思います。今の自分は、その理想になれたのかもしれませんね。美容業界では、他の誰かに憧れる美容師がたくさんいますよね。でも私の場合、昔からそれがありませんでした。良いのか悪いのか、先輩からはよく「知らな過ぎる」と怒られていました。私はいつも、誰かになりたいとかではなく、自分はこうありたいと思って生きています。
Hiro:僕も身近に尊敬する方々はいましたが、「憧れの○○さんみたいなりたい」と思うことはなかったですね。その方々の尊敬するところを吸収させてもらい、やはり自分はオリジナルの自分を作ろうとしてました。
■海外に進出、活躍するには何が大切だと思いますか?
ユカリ:私のサロンにも海外で美容師として働きたいというスタッフがいましたが、結局行かずに、サロンを辞めてしまいました。
Hiro:そういう方々の背中を押したいですね。海外経験者は美容師以外にもたくさんいるでしょうし、そんな方々のところにお話を伺いに行くだけでも、確実に何かが前進すると思います。
ユカリ:単純に、行動力ですよね。
Hiro:そうですね。僕も日本、カナダ、グアテマラと住み、色んな国へ旅行にも行きましたが、本当にいろんな方々のお陰で今の自分があります。自分の勝手な想いではありますが、僕は美容業界に限らず、日本全体の次世代に成長してもらいたいです。そして、お役立ち出来るなら、自分自身の背中を押してでも一時帰国の機会を増やし、お会い出来ていないそういう方々には、お会いするべきだと思っています。
ユカリ:海外に行きたいとくすぶっている人はいっぱいますよね。
Hiro:僕はそういう方の心に火をつけていきたいです。
■今後の目標やチャレンジしてみたいことはありますか?
ユカリ:美容師としての独立はあまり考えていませんが、何かの会社は起こしてみたいです。でも、私が今1番したいことは、何か会社に貢献することです。後輩を育てるなど、何かしら自分が出来ることをしたいです。
Hiro:美容業界向けに限らず、講演や講習会を行う事で日本のグローバル化に少しでも携わり、海外に羽ばたく、活躍する日本人をもっと多く見たいです。 また、極論ですが、美容師という職業がお客様の人生に影響を与える事もあると思っています。お客様に刺激を与えられるような美容師を増やし、美容業界からも社会に元気なパワーを発信したいですね!
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。
salon bespoke
Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor
salonbespoke.ca
ユカリさん
福井出身。サロンの2階に住み込みで働きながら、通信教育で美容師免許取得。18歳でスタイリストデビューし、1年後にはロンドンへ1ヶ月の短期留学。現地では、自分で講習会を探し、TONI&GUYやVidal Sassoonの講習会に参加。講習のない時間は毎日ロンドンの街を歩き、目に入ったサロンを訪れては、見学を申し込むなどqヶ月という短期間でも内容の濃い生活を送った。NYNY入社前は、23歳という若さで別サロンの店長としてヘッドハンティングされ働くも、自らの成長を求めて2年半で退社。その後は、経営者セミナー等にも参加しながら見識も広げる。25歳でNYNYへ入社し、以降13年。現在は、NYNY難波パークス店でアートディレクター兼、心斎橋エリアのマネージャーとして活躍。30店舗以上を展開する全サロンの中で10年以上も成績トップとして君臨し続ける。趣味は旅行、ダイビング。20代の頃は、休暇を利用してアジアを始めとする海外1人旅も経験。
www.nyny.co.jp