美容対談 小長井ゆう子さん x Hiroさん
日本で生まれ、トロントでプロの道を歩み、アートとビューティーそれぞれのジャンルで活躍する新進気鋭の2人、Hiroさんと小長井ゆう子さん。同じ街で、同じ世代、同じクリエイティブな業界で頑張る小長井さんの存在を知り、刺激を受けたHiroさんから連絡したことで2人は繋がったという。連絡を取った当時、Hiroさんは急きょカナダから帰国することになり、2人が出会うのは数年後の2006年だった。カナダに戻り、TONI&GUYトロントに復帰したHiroさんが改めてもう一度連絡を取り、まるでお互いの才能が時間を超えて導き合うように2人は出会う。カナダでお互いに苦労を共にし、夢に向かい奮闘し、走り続けてきた戦友同士、当時を振り返って頂いた。
カナダに来たきっかけは何ですか?
小長井:小学校の頃にイギリスが舞台になっている本を読んで、漠然と留学したいと思っていました。それからもずっと日本よりも海外で学んでみたい、世界の人々と関わってみたいと思い続けて中学を卒業する15歳の頃、たまたま母親の知り合いがカナダ西部のオカナガンというエリアに移住していたので、まだ早いという人もいましたが、どうしても憧れを抑えきれなくなって、カナダへ行くことを決意しました。
最初にホームステイをしたのは、西部のサマーランド。初めて親元を離れて生活する事や言語の違いに戸惑いましたし、1つの街に1つの学校しかないような小さい町の高校に突然日本人が来たので、なかなか打ち解けず、友達を作るのも大変な時がありました。でも今では、サマーランドのホストファミリーが私の第2の親です。あんなクラシックなカナディアンタウンで、古き良き、温かいカナダの人々と触れ合えたからこそ、長くこの国にいて、仕事までできたんだと感謝しています。
フォトグラファーを目指したきっかけは何ですか?
小長井:もともと美術が好きで、幼稚園の頃から絵の教室に通っていて、将来美術に関わる仕事が出来たらと思っていました。カナダの高校は美術の授業で様々なことをするのですが、その一つに写真の勉強がありました。自分で写真を撮ってそれを自分の手で現像しプリントをする。その時、不思議なほど自然に、写真という作業のの全てに心を惹かれ、そのまま写真の世界にのめり込んでしまいました。表現することがしたいと思っていましたが、きっとある瞬間をエモーショナルにかつ人も物も、生々しいまでにありのまま、瞬時に切り取るという写真ならではのライブ感やはかない美しさが、私の意識にとてもマッチしていたのかと思います。また、ホームステイ先の父がたまたま家に暗室を持っていたので、ホストファーザーと暗室に入って教えてもらう事も。今思うと、幸せな環境で写真を始められた事に感謝しています。
なぜ日本へ帰国しようと思ったのですか?
小長井:15歳の時まで日本で暮らし、それから15年間カナダで生活し、また新しいチャレンジをしてみたい欲望が出てきたんです。思えば15歳から日本を離れている自分にとって、日本は母国でもありますが、異国でもあり、知りたい事がたくさんあると思ったし、外にいるからこそ、母国のことをもっと知りたい、カナダで得たことを活かし、ずっと日本育ちとは違う日本人として、日本でも一流のフォトグラファーになってみたかったんです。
10代20代を振り返ってみて何を感じます?
小長井:無駄なことは1つも無く、全てが今の自分にとってプラスになっていると改めて感じます。辛かった事、楽しかった事、感激した事、全ての経験が今を作り、そしてこれからの道を作っていくのではと思っています。
Hiro:ユウコさんのお話を聞いて、共感できる点が多々あります。単純に、人生において、一つとして無駄はないということですよね。
小長井:本当にそう思います。その時もし上手くいかなくても、成功しなかったとしても、絶対無駄は無いですし、1番重要なのはそこから自分が何を学ぼうかという姿勢ではないかと思います。日本に帰ってきてからの変化は今の私にとってかけがえのない時間になりました。
若い世代に伝えたいことは何ですか?
Hiro:『若い時の苦労は買ってでもせよ』という好きな言葉があります。コンサルティングや弁護士のミス等で僕は、20代で強制送還、30代では不動産被害の経験をしました。ただ結果論にはなりますが、先程の言葉の通りで、理不尽に感じる事も時には我慢、そして諦めずに努力をすることで、その苦労が自分自身を強くさせ、成長させてくれたと信じてます。
小長井:たとえそのときはつらくても、すぐに結果が出なくても、若いときに、何を考えていたか、その考えで何をしたかで、そのあとが変わってくると思います。私の場合、留学した時の最初の苦労はすごくバネになりました。また、自分の興味のあることには、常にアンテナを伸ばし、トライしてきました。トライすれば失敗もするし、大変なこと、嫌なことも多く経験したかもしれません。でもそれも含めて、吸収して勉強したと思うので今がある。よく失敗は成功の母と言いますが、逆に失敗しなければ成功もしないということ、失敗するほどたくさんの挑戦をして、その挑戦はそのときは失敗だったとしても、いずれ生かされる勉強にすること、それが大切だと思います。
Hiro:無理や失礼はもちろん良くありませんが、ただ、公私共に自分からは行動範囲など限界を作らず、少し自分の背中を押すように何事にも積極的な行動をとる事は大切かと思います。
小長井:広く話題性があればそこから影響してくるものもあるし、最終的には仕事に繋がってくると思います。
Hiro:本当に同感です。そして、コミュニケーション&表現能力の向上ですね。 少し私事になりますが、今秋の一時帰国の際、本業であるサロン、美容学校でのセミナー講師はもちろんの事、美容とは関係ない大学での講演も数件させて頂きます。まさしく、先述したように積極的に行動した結果、自らが海外で体験した最高かつ最悪な話を日本の皆様にもお役立ちできるような機会を頂けて非常に嬉しく思います。
理想の女性像や将来像はありますか?
小長井:日本では驚くほど男性と女性の違いがあり、特に女性は仕事と女性としての魅力をなかなか両立しにくい環境であることは確かです。しかし、例えば私で言えば、第一線のフォトグラファーの中では、女性であることは珍しいことであると同時に、だからこそオリジナリティにもなります。女性だからこそできること、女性ならではの仕事、クオリティを大切にしていきたいです。自分や周囲の環境をネガティブに捉えずに、逆に自分ならではの良さをいかにアピールするかですね。この職業で、人から噂されることほど幸せなことはありません。それだけでもある意味、良いこと、戦略勝ちだと思います。基本的な技術を学んでいるのであれば、後は自分がどう動くか、自分をどんな存在として社会に発信していくかです。そんな風に、私にしか撮れない写真を仕事の中で出していかなければ生き残れないと思っています。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ 就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。
salon bespoke
Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor
salonbespoke.ca
小長井ゆう子さん
静岡県出身。15歳の時に留学生として単身渡加。高校、大学とカナダで進学し、その後、写真家Shin Sugino氏に師事。独立後、カナダのコマーシャル業界でフリーランスの仕事をしながら、パーソナルワークの制作にも取り組み、日系文化会館などでの展覧会にも参加。2008年にはコマーシャルフォト100人若手写真家にも選出される。カナダで15年生活した後、日本へ帰国。現在は東京を拠点に活躍中。ファッション業界を中心に写真・動画を手掛ける。また、今年には自身初となる個展を東京にて開催。来年の春にはトロントでも個展が決まる。konagai.tumblr.com