美容対談 小池輝哉さん × Hiroさん
「ワークライフバランスの実現」に創業以来取り組んでいる(株)Honeycomb structure代表取締役の小池輝哉さん。美容師でありながらも経営者として日々活躍する小池さんに、Hiroさんは「自分にはないものを持っている人」と新鮮な気持ちを抱いたという。今回はそんな小池さんに、経営に興味を持ったきっかけや、日本人美容師に対する想い、今後のビジョンなどについて伺った。
美容の道へ進まれたきっかけ、また経営に興味を持つこととなったきっかけを教えてください。
小池:実は元々起業がしたい、という考えがありました。親の希望する職業ではなく自分の好きな仕事をしたい、また日本社会で一般的に見られる「みんな同じ」を良しとする髪型や服装のルールが好きではない、と思っていたのです。そこで、起業ができて、なおかつファッション的な部分で自由な職業を選ぼうと考えた結果、美容師にたどり着きました。実際に美容師になって、休みは少なく、給料も安いといった労働環境の悪さに衝撃を受けました。美容師になって10年経つ頃には、美容学校時代の同級生の9割が離職している、という状態でした。労働環境が良くない、だけど本当にそれは改善ができないものなのか、と疑問を持ち、自分なりに考え始めたことが経営に興味を持ち始めたきっかけです。環境整備には利益が必要になる、ではどうすれば利益が出せるのか、そういった経営の基本的な部分は、実際に独立する前に独学で勉強しました。また、SNS上で美容室経営に興味を持っている美容師達と知り合うことができて、日々様々な議論を交わすようになりました。
Hiro:実は、小池さんがSNSを介して出会った美容師の中に僕の共通の知人がいたんです。その方が小池さんをトロントに連れて来られた際に初めてお会いしました。僕は以前から日本人美容師は世界で通用する存在であると思っていますし、日本人美容師の社会的地位や知名度の向上を願ってきました。そんな中、美容師でありながらも経営者であり、美容師の労働環境の整備や社会的地位の向上、世界への出店を視野に入れた小池さんと出会えたので、非常に嬉しい気持ちになりましたね。
カナダへの出店を視野に入れ始めたきっかけを教えてください。
小池:意識の高い美容師を採用したいと思っているからです。独立してから段々と経営の体系を確立させ、利益も出るようになり、社会保険の導入や週休二日制など、独立前から常々考えていた労働環境の整備が実現できるようになってきました。しかし、労働環境の整備だけでは十分ではないことに気づきました。職人として意識の高い美容師を採用していかないと、組織としては生き残れない、と考えるようになったのです。では、意識の高い美容師とはどのような人か。追求した結果、例えばどんどん海外に出て行こうとする行動力のある人である、との考えに至りました。先ほどHiroさんもおっしゃっていましたが、日本の美容師はもっと評価されて良いと思いますし、世界に通用するクオリティがあると思います。世界との距離がどんどん縮まっている今、グローバルな視点を持ち、世界で通用する美容師になろうと行動できる人、そんな意識の高い美容師に選んでもらえるように、「海外へも出店している会社」となるべく動くこととなりました。
Hiro:日本人の美容師はとても真面目で、細かくクオリティの高い仕事をします。それにも関わらず、評価や社会的地位はあまり高くない。世界をマーケットに見た場合、美容師という職業、そしてその価値を高く評価してくれるところはたくさんあります。若い人にはどんどん世界に目を向けていってほしいですね。
小池:少子化と店舗過剰が相まって、今後は国内でマーケットが縮小していくことは明らかです。そんな中、世界に視点を向けることができていれば、国内に限らず美容師が必要とされている場所を見つけ、組織としても生き残る可能性を広げていくことができると思っています。
経営者として、大事にしていることはありますか?
小池:美容業界では、業務委託の美容師やフリーランスの美容師など、新たな形態が流行り始めています。そういった新たな流行や社会の動きについては、学びの機会がどこにあるのかわからないので、なるべく異業種の人と会おうとしていますし、旅行にもよく行きます。旅に出ると、日本の状況や世界の状況など様々なことを考えます。ふとした考えからビジネスチャンスにもつながったりすると思うのです。
Hiro:どのような流行が来るのか、それをどのように知るか、という意識はとても大事だと思います。美容師としての仕事だけではなく、少しでも「よそ見」をしてみる、というのは大事ですよね。色々な人と出会えば視野も広がりますし、別業界で使われているアイディアを美容業界に応用できるのではないか、といった発想も浮かぶと思います。
今後の展開についての想いをお聞かせください。
小池:独立する前に、「本物のブランドを作る」というビジョンを立てました。僕の考える本物のブランドとは、華やかさだけでなく、そこで働く人たちが誇りを持てることです。美容師としてのクオリティを追求していく集団でもあり、且つ誇りを持って、安心して働ける会社を作るのが僕の最終的な目標ですので、カナダへの出店などもそこへたどり着くためのステップです。当然思い通りにはいかないこともあると思いますが、目標へたどり着くためのすべての過程を楽しみながらやっていきたいと思います。
Hiro:僕が持っていないものをたくさん持っていらっしゃるので、是非、日本の美容業界を小池さんに引っ張っていただきたいです。僕自身はベースがトロントですので、日本への一時帰国の際には、若い人とどんどん話をして、世界に目を向けてもらうべく行動したいと思います。僕はトロントから日本へ、そして小池さんは日本から世界へ、相互に作用していけたらと思います。
Hiroさん
名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。
salon bespoke Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor / salonbespoke.ca
PV: “Hiro salon bespoke”と動画検索
小池輝哉さん
都内数店舗を経て2008年に独立。現在、直営サロン4店舗経営。独立後5年以内に、約半数のサロンが閉店するという日本の美容業界において、「安定経費バランス」という独自の経営ノウハウを軸に、コンサルサポートサロン30店舗運営。美容師の雇用環境の改善に取り組みながら毎月、開催している独立開業セミナーも好評を博している。
http://honeycomb-
structure.com/sp/