四国ってどんなところ? ―(4)しまなみ海道|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第75回
本州と四国をつなぐ橋はいくつある?
本土と四国を結ぶ連絡橋を3カ所に建設することが決まったのは1970年。そんな大昔ではない。当時は船か飛行機だったため、東京から四国旅行をする人は私の周りには一人もいなかった。だが1970年に建設案は決まったものの、1973年のオイルショックで延期になり、初めにできたのが ①兵庫県(淡路島)から徳島県(鳴門)に伸びる『大鳴門橋(1985年開通)1.6㎞』、そして②岡山県(倉敷)と香川県(坂出)を結ぶ『瀬戸大橋(1988年開通)12㎞』、次に兵庫県(明石)と同県淡路島を繋ぐ明石海峡大橋3.9㎞(1998年開通)が①と連結し、関西方面から四国入りがしやすくなった。そして話題の③広島県(尾道)と愛媛県(今治)を結ぶ『しまなみ海道(2006年全開通)59・4㎞』が出来上がり四国の4県中3県が本土とつながったわけだ。つながっていないのは太平洋岸に面する高知県だけ。
車で走る「しまなみ海道」
今治市と尾道市の間にある6つの島(今治側から順に、大島、伯方島、大三島、生口島、因島、向島)を7つの橋で結ぶのが「しまなみ海道」だ(地図参照)。約60㎞の距離を原付、自転車、歩行者、自動車が通れる併用道路として誰でも通れるのが特徴。私たちは今治の大島にある亀老山展望台(2月号記)に寄り道した後、「しまなみ海道」を一気に本土に向けて走った。この日は広島県の尾道港で向島造船所の灯りを横目にホテルに入る。尾道港で小さな曳船が〝はしけ〟を押しながら出ていく光景はここの風物詩に違いない。瀬戸内海の1日が終わる。ちなみに「しまなみ海道」全長約60㎞を自転車で走ると6時間以上かかり、車だと1時間あまり。トールチャージは平日普通車の場合現金で4920円、ETCで2950円。島と高速を繰り返していると料金は割高になる。詳しくは本四高速(株)のウェブサイトwww.jb-honshi.co.jpで。
自転車で走る「しまなみ海道」と生口島
尾道を出発し四国に戻るのだが、サイクリングをするためいったん生口島(いくちじま)のICを降りてレンタルショップへ向かった。尾道側と今治側の間で島も入れるとショップは約10ヶ所あるが、電動自転車は数に限りがあるので直ぐになくなるようだ。私たちはママチャリで出発。生口島を巡らす一般道路を40分も走っただろうか。車輪は橋へ向かっていた。次第に傾斜が増し、あたりは一面レモン畑。生口島はレモンの出荷量日本一を誇る。顔をあげれば毅然と聳え立つ白亜の塔から幾何模様のように流れる線に吊られる多々羅大橋。いよいよ「しまなみ海道」をサイクリングだ。走ってしまうのが惜しくて私は幾度も止まる。人が何年もかかって組み上げた優雅で艶美で力強い橋と180m下の濃く青く流れる瀬戸内海!人間って凄い。静岡県から折りたたみ式の自転車持参でやってきた三人の中年男性にあった。何度も来ているらしい。自転車好きな私の友も止まって写真を撮りながら走っている私の先を風をきってどんどん走り続ける。やっと彼女に追いつき、一緒に多々羅大橋から急な坂道を旋回して大三島の〝しまなみ公園〟に降りる。〝サイクリストの聖地〟の記念碑の前で記念写真を撮り、水際のレストランで水分補給。さて、「しまなみ海道」へ戻るにはまた急な坂道をのぼらなければならない。本来ならばここで電動自転車が活躍するのだが。ママチャリでは無理。頑張って自転車をひく私に四国の紅葉が付き合う。
瀬戸内海アート
2022年で5回目を迎えた瀬戸内国際芸術祭は〝海に囲まれどこからでもアプローチでき、農・工・商が混在した原初の人びとの存在を教えてくれる…〟を目指し瀬戸内海の約12の島々や港で春・夏・秋に展開されている。生口島でもサイクリング中いくつかのアートに出会った。ことに瀬戸田サンセットビーチに設置されたレモンのように真黄色の『空へ』(眞板雅文作)が印象深い。のちに小豆島へ渡るが寒霞渓でハイキング中に出会った素敵なアート『空の玉』(青木野枝作)も記憶に残る。
石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”は全国巡回記念DVDを2018年にリリース。PPOC正会員、日本FP協会会員。www.makikoishiharaphotography.com
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