カナダの生理用品事情|特集「SDGs・女性とジェンダー平等 in Canada」
月に一度必ずやってくるからこそ、上手く付き合っていきたい生理。コロナ禍により経済的な理由で生理用品が購入できず学生を始めとした女性たちが困窮し、「Period Poverty(生理の貧困)」という言葉が注目を受けたのも記憶に新しい。
女性と生理の貧困問題はいまに始まったことではないが、コロナ禍でさらに生理用品を買えないという女児、女性の数字は跳ね上がり、プランインターナショナルカナダの調査では63%の女性、女児が生理用品へのアクセスがないことから何らかの活動に参加出来なかったことがあるとし、34%が予算内で生理用品を買うために他の出費を削らなければいけないことがあると答えた。
世界的にも一番定番として使用されている生理用紙ナプキンを毎月、平均、5日~7日続くものに1日3~5枚使用するとなると初潮から閉経まで40年とみて人生で紙ナプキンにかかる費用は34万円以上にもなるという。世界の多くの女性にとって勉学や労働に対する重大な障壁となっていることには間違いない。そこでカナダではどんな処置が取られているのか、どんな選択肢があるのかみてみよう。
オンタリオ州の生理用品の無償化
「生理用品はラグジュアリーではなく必需品」
オンタリオ州では昨年秋から「ショッパーズ・ドラッグマート」とパートナーシップを組み、毎年、600万個の生理用紙ナプキンを教育委員会に無料で提供するということで学校での生理用品の無償提供が可能になった。
2019年にブリティッシュコロンビア州がカナダで初めて公立学校で無料で生理用品の提供を始めてからノバスコシア州、プリンスエドワード島と続き、待ちに待ったオンタリオ州での実行となった。
今では大学、専門学校でもトイレには生理用紙ナプキンやタンポンが置かれている場所もある。
このような試みは、悩む女性や女児のキャリアや学校生活での活動を支え、彼女らが自信を持って夢に歩いていける可能性が広がることに繋がる。
「紙ナプキン、タンポン以外にカナダで使われているアイテム」
経済的な問題だけでなく、使い捨ての紙ナプキンやタンポンは意外にも90%がプラスチックで作られており、その大量のゴミが埋め立て地に破棄されることや、化学薬品を使用した生理用品からくる「生理用品と環境汚染」も問題視されている。
最近では、こういったことからお財布にも地球にも優しい「サステナブル」な生理用品が注目を浴びている。そこでカナダではどんな商品が実際に使用されているのかみていこう。
1. 月経カップ
生理中に腟内に挿入して経血を溜めるシリコン製の月経カップ。意外にも1950年代にはアメリカ、カナダ、イギリス、フィンランドなどで普及し始めたというが、柔らかい素材に商品改良が施されるなどして、今またじわじわと人気を集めている。消毒すれば繰り返し使用できるため、経済的にも、環境にも優しいという2点が注目されている。
同じく腟内に入れて使用するタンポンは長時間使用すると経血以外の水分を吸収し、腟内が乾燥したり、急性疾患TSS(トキシックショック症候群)を起こす可能性があるとして8時間以上の使用が禁止されているのに対し、腟内の水分量などへの影響が少ないことから最長で12時間の利用が可能なことも人気のひとつ。
カナダでは、「ウォルマート」や「ショッパーズ・ドラッグマート」など身近なお店で買えるほか、月経カップを販売している人気のオンラインショップも多く存在する。その中でも「Diva」は、2001年に創業して以来、世界で初めて、また唯一クラス2医療機器として7つの国の政府が承認した、現在も成長中の信頼できる人気ブランドだ。
2. 吸水ショーツ
ナプキンやタンポン要らずでショーツ自体が水分を吸収してくれる吸水ショーツ。素早く水分を吸収し、サラサラな手触りが戻ってくる速乾シート、水分を吸収してキープする吸収シート、菌の増殖を抑制し、ニオイを軽減する防臭シート、モレを防ぐ防水シートなど何層にも素材の異なるシートを重ね、履き心地良く、モレにくい構造になっている。
ナプキンに比べ「モレ知らず」な吸水ショーツだが、経血の量によってタイプも代わり、中にはタンポン約12本分もの水分を吸収してくれるショーツもある。
スタイルに応じて、20ドルから70ドルほどするものが多いが、使い捨てのナプキンやタンポンに比べると最終的にはお金がセーブ出来ることになる。
「自分にあった方法が見つけられる」カナダの避妊方法
夢を抱き、ライフプランを立て、一生懸命に勉強し、働く。それは性別関係なく全ての人が与えられるべき人権である。この会社で働きたい、何歳頃までにキャリアアップを目指したい、子供ができる前にパートナーと旅行にたくさん行きたい、将来子供はこのくらい欲しい。
このような思いやプランを実行するために欠かせないのが「避妊」。100%確実な方法で妊娠を防ぐのは、性行為を行わない事くらいしかないが、いまは、ライフスタイルや、身体の状態に合わせた避妊方法のタイプを選択出来る時代だ。自身の、また、パートナーの身体を考え、お互いの将来を守るべく、避妊方法への理解を深め、お互いが安心して楽しめることが重要だ。
*選んだ避妊法を正しく続けて使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合。
**選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合(経口避妊薬については、飲み忘れを含めた場合の失敗率)
コンドーム
一般的な避妊方法として薬局などでも手に入りやすい「コンドーム」。避妊だけでなく、性感染症も予防ができるため、使用はマストだ。カナダでも日本と同様に、薬局、コンビニなどで8ドル前後で手に入れることが出来る。ただし、他の方法と比較すると失敗率が高いということがデメリットで挙げられる。
OC / ピル
Oral Contraception(低容量経口避妊薬)/ 低容量ピルは、カナダではコンドームに次いで使用される率が高い。女性ホルモンを含んだ薬剤を、タイプによって期間は変わるものの連続で取り、正しく服用すれば高い避妊効果が期待できる。2019年からオンタリオ州の医療カード(OHIP)を保持していれば25歳以下は無料で低容量ピルを購入できることになったのも嬉しい。しかし、人によっては吐き気、頭痛、感情の起伏が激しくなるなど副作用があり、ピルで激しい副作用を経験したことが理由でコンドームに頼るという女性も少なからずいるようだ。
IUS / IUD
低容量ピルと同じく女性主体で避妊ができる為、IUDを選択する女性も増えてきた。子宮の中に小さな器具を装着することで、受精卵が子宮内膜に着床することを防ぐことで避妊ができる。1回装着すれば長くて5年は効果が続くデバイス。IUSは子宮内膜に作用して、内膜が薄くなり、受精卵の着床を妨げたり、子宮の入口の粘液を変化させて精子が腟の中から子宮内へ進入するのを妨げたりする。違いとしては、IUD装着後は生理の量が増える場合があるが、IUSは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態になり、生理の量が少なくなる。
これは、カナダでは医師による処方、挿入が必要。挿入時、また、挿入後、何時間かは子宮内に痛みを感じることがあるものの、慣れれば不快感はなくなる。効果が切れる期日が近づいてきたら医師による除去が必要となる。購入に300ドル~400ドルは掛かるものの、高い避妊効果と1回装着したあとの楽さで選ぶ女性が多い。
緊急避妊薬 アフターピル
避妊に失敗してしまった、避妊しないで性行為をしてしまったときに、性交後72時間以内に緊急で用いることができる避妊薬。こちら、日本では処方箋が必要、ジェネリックでも一万円前後するとして、アクセスの悪さが長らく問題視されているが、カナダでは薬局で薬剤師の説明を聞けば誰でも購入が可能。値段も30ドル~40ドルと手の届くところにある。次の生理まで不安な気持ちを抑えながら待つのと、こういった選択肢があるという事実を知っているのとでは大違いだ。だからこそ、多くの人に知ってもらいたい。
「カナダでの生活を楽しむためにまず出来ること」
カナダの産婦人科機関の記録によると、カナダに到着して年数の経っていない移民の女性はカナダ生まれの女性に比べ、より効果的な避妊方法を使用する可能性が低く、経験や知識、言語の壁もあり、それらの避妊方法へのアクセスに障壁があることが多いという。日本からカナダにワーキングホリデーや、留学などで来た際は、「カナダの避妊方法はどうなっているのかな?」、「どこで製品を手に入れることが出来るんだろう?」と、自分で調べることも大事だろう。
また、オンタリオ州ではオンタリオの医療カードが無くてもカウンセリングから、避妊具(低容量ピルや、IUD含む)の処方、STI検査、HIV検査、状況により他のクリニックの紹介なども行ってくれる団体(Birth Control Sexual Health Centerなど)があり、性別、年齢関係なく、英語に自信がなくても優しく対応してくれるので要チェック。カナダ生活を楽しむためにまずは自分の身体を守る術を知ろう。
Birth Control Sexual Health ウェブサイト http://birthcontrolsexualhealth.ca/services/
出典: https://www.jogc.com/article/S1701-2163(16)39370-7/fulltext