3. 地球滅亡に強い?温暖化の危険信号に強いのはなぜ?カナダのあの都市が|第一特集「カナダの“なぜ”に迫る第2弾」#数字で見るシリーズ
世界中が気になっている、将来住みやすい場所
2023年9月、事業用不動産サービス会社の「CBRE Group Inc.」が地球温暖化に強い北米の都市を発表した。トップ10に選ばれたのはアメリカのボストンやサンフランシスコ、デンバー、オースティン、ニューヨーク、ワシントンD.C.に加えカナダのオタワ、トロント、モントリオール、そしてウィニペグだった。地球温暖化対策への取り組みや水害への強さ、空気汚染の低さなどが評価のベースとなった。
しかしこの調査だけを信じるのはまだ早い。今年8月にリフォーム会社「D’Angelos & Sons」が公表したデータによると、BC州のビクトリアが一番地球温暖化に強いそうである。キーポイントは洪水と干ばつのリスクが低いこと。同じく自然災害のリスクに強いと選ばれたのはバンクーバーやケロウナ、ケベックシティ、オタワ。しかしカナダで一番地震が多いのはブリティッシュコロンビア州なため、完全に災害から逃れられるわけでもない。
水害リスクが低いことは大きなポイント
「D’Angelos & Sons」の調査によると災害リスクの高い都市はオンタリオ湖沿いのトロントとハミルトン、オシャワ、セント・キャサリンズだった。
これから温暖化が進むとトロントとオタワ、モントリオールで平均気温が3度上昇する予測するデータが2020年、ベルリンの会社「Nestpick」によって発表されている。そうなると冬が厳しいこれらの都市でも暖かく雨の多い季節となる。猛暑日や山火事、豪雨が増えることが予想される。
豪雨が続くと心配されるのは洪水。オンタリオ湖はセント・ローレンス川を通じて大西洋に繋がっている。となると洪水だけでなく海面水位の上昇の影響も受けることになる。
利点と欠点、全ては見方次第
トロントとオタワ、モントリオールの3都市では地震のリスクが低いことが救いだ。
カナダでは日本のように台風が直撃することはないが、その影響で異常気象がもたらされる。そしてハリケーンはアメリカ南東部から北上するが、暴風雨は主にノバスコシア州などさらに東部のエリアで見られる。
これらの3大都市では再生可能エネルギーが多く使われ、省エネに配慮したエコな建物が多い。市や州自体がエコであるかどうかは政治リーダーによるが、カナダの大都市代表としてサステイナブルな取り組みが重視されていることは確かだ。
しかし人口が多ければ多いほど、被害や住民の混乱は大きく感じられることもこのようなランキングで懸念されていた。
カナダのダークホース?
意外と温暖化に強いのはウィニペグ
マニトバ州ウィニペグでは再生可能エネルギーを活用することで過去5年連続、一年にある猛暑日の数と空気汚染を減らすことに成功している。ウィニペグエリアでは干ばつのリスクが低い。その上カナダ西部に比べて森林地帯が少ないため山火事のリスクが低いことにつながっている。レッド川が市の中心部を通っているため洪水の危険は否定できない。しかしウィニペグではリスク管理が優れており、洪水が予測される地域にいは新しく建設物が建てられないようになっている。このような決まりは住民、そして新しく住宅を購入する人たちを安心させている。そしてマニトバ州はカナダの中で最も地震にあう確率が低い州だ。ウィニペグ湖は近いが、海が近くないということは大きな津波も心配する必要も最低限だ。
温暖化で懸念される
カナダでの生活
カナダ在住が長い人は寒い冬はもうこりごりだと感じているかもしれないが、一年の気温が暖かくなれば暮らしもだいぶ変わる。雪が多いイメージから一変、雨の多い国になるかもしれない。暖かくなって雨による湿気が増えると外来種の虫が増えることも大きな心配の一つだ。ライム病(マダニに刺されることで感染する病気)がカナダで急に見られるようになったのも温暖化の原因と考えられる。
天候が変わると国内で育てられる作物にも変化が予想される。家畜が生き延びられなければ人の食生活もだいぶ変わっていくだろう。「大都市だから食事には困らないだろう」という考えや「海に近いから水害に弱い」など簡単なものの見方だけでは将来の安全は保証されないほど温暖化の影響は予測不可能だと心がけたい。