2. 最近カナダで インド人が増えたのはなぜ?|第一特集「カナダの“なぜ”に迫る第2弾」#数字で見るシリーズ
インド人移民者の数は10年前の4倍
現在、記録的な数のインド人がカナダに移民してきているのをご存知だろうか?インド人移民者の数は2013年に32,828人だったのが2023年には139,715人にも上昇。なんと4倍にもなっている。カナダの移民政策はアメリカほど厳しくなくカナダの大学で学ぶインド人学生が増えてきたのだ。
アメリカでは卒業後の就労ビザの確保が大変困難だ。しかしカナダではスキルの高い労働者に与えられる一時滞在ビザには年間の上限がこれまでなかった。そのためトランプ政権だった頃の2016年から2019年にはアメリカへの留学生の数が6%減ったが、カナダへの留学生は52%も増加した。
なぜインド人は国を出たがっているのか
この移民増加の背景にはインドのモディ首相が握る政権のもと悪化しているマイノリティへの抑圧がある。イスラム教徒やシーク教徒、キリスト教徒などにとっては生きにくい。給料の良い仕事を見つけたい、そして子供たちに良い教育を受けさせたいと思う人たちは国を出ることを考えることしかできない状態にある。
揺れるカナダとインドの交友関係
インドからカナダに移民したい人は増えている傍ら、国同士の仲は良くならない一方だ。インドとカナダは、今年10月にお互いの外交トップを国外通報した。その背景には昨年6月、インドからの分離を求めるシーク教の指導者がカナダで暗殺された事件がある。
以来、カナダはインドの外交官が暗殺に関与していると疑いを高めるなど緊迫した空気が続いている。事件後には一時期インド人に対してビザを発給するのを取りやめていたが、同年11月には再開している。これまでに20歳代のインド人4人が事件に関係していたと逮捕されているが、彼らがインド政府に関わっていたかどうかはまだ確認されていない。
カナダが選ばれるもう一つの理由
カナダは現在留学生の受け入れ数を2年間制限しているが、すでに学生ビザを取得している学生が卒業するたびにカナダ人らは彼らと就職先を競い合わなければならない。もちろんこれは国民にとって心配要素になりかねない。
だが実はここ数年、カナダを去りアメリカで職を探す移民が増えていることが話題になっている。
なんと2020年以来、カナダからアメリカへ不法入国するインド人が増えているのだ。2021年には 30,662人だった数が翌年の2022年には2倍の63,927に上った。2023年はなんと97,000人近くに増え、そのうちの30,010人は カナダとの国境から、41,770人は南のメキシコとの国境から不法入国したことがわかっている。
カナダになく、アメリカにあるもの
カナダに比べてアメリカには大きな産業がいくつもあることが移民たちを魅了している。IT関係など特別な知識がなくても、ニューヨークやシカゴなどの大きな街に繰り出せば様々な人種の移民が集まる接客業に辿り着くことができる。
そしてアメリカの暮らしのもう一つの利点は低い税金と高い賃金。今アメリカドルがカナダドルより強いことも大きな要素になっている。すでに移民している家族がいる場合、彼らとの再会を目指してアメリカに不法入国する人も後を絶たない。
トルドー首相にのしかかる移民政策の責任
アメリカの国境を渡るためのルートは、治安が悪い上に砂漠が多いメキシコを通るよりはカナダを通る方が比較的安全だという。しかし2022年1月、インド人の4人家族がカナダからアメリカに歩いて国境を渡ろうとした間に凍死してしまったニュースが報道された。
移民が増えれば国が豊かになると提唱してきたトルドー首相とミラー移民政策大臣だが、カナダからアメリカに去る移民がこんなにも多いのは歴史的にも初めてのことだ。当然のことながら現在彼らに向けての批判が続発している。
移民が急増した結果、住宅の供給や医療ケアなどのサービスが追いつかなくなっていることが大きな問題点だ。カナダに来た人をどうサポートしていくのかが来年の総選挙の集点になることは間違いない。