東京2020オリンピック男女平等を目指すオリンピックで注目のカナダ女性アスリート|特集 過去から振り返るカナダ2020「予想と展望」
オリンピック33競技、パラリンピック22競技の開催が予定されている東京2020大会だが、特に注目したいのが「男女平等」に向けた取り組みだ。
東京オリンピックでは、女性選手の出場率が過去最高となる48.8%と5割に迫る。男女平等の実現を推進する国際オリンピック委員会(IOC)の方針により、男女混合種目が18に増加、卓球ダブルスや柔道団体戦、陸上4×400mリレーなどが新たに男女混合種目として追加された。
五つの団体球技が女子決勝で締め
さらにバレーボール、バスケットボール、ラグビー7人制、ハンドボール、ホッケーの団体球技では女子決勝で締めくくられる。ホッケーは16年リオデジャネイロ五輪から女子決勝となり、東京五輪では新たにバレーボール、バスケットボール、ラグビー、ハンドボールの4競技で伝統的な男女の順番を逆にして、 女子決勝を最後に回した。
最近では出場選手の女性の割合もおよそ半数で推移しており、2016年リオ大会では48.5%を記録し、オリンピックの男女共同参画は向上しているといえる。一方で、競技によっては未だに男性中心のものも多くあり、東京五輪で初めて採用されるサーフィンでは、女性競技人口の割合は10〜15%ほど、また同じく新競技であるスケートボードでも女性競技人口は全体のおよそ24%だ。
スポーツにおける女性の地位向上を目指す
そんな中、スポーツにおける女性の地位向上を目指す女性たちの動きが目立ち始めている。例えばIOCでは、委員全体の45.5%に女性が就任しており、さらには選手らのボトムアップ改革も進んでいる。例えばスケートボード界では、ニューヨークの女性スケーターグループ「the Skate Kitchen」を始め、カナダでも「the Skirtboarders」など女性中心のコミュニティ形成が盛んだ。実力はもちろん、SNSやメディアの露出などでの存在感も注目を集め、女性競技人口の増加の一助を担っている。
注目のカナダ代表女性アスリート3人
1.出口クリスタ選手(柔道)
カナダと日本のハーフである出口クリスタ選手は長野県出身。現在はカナダ代表として五輪出場を目指して着実に成長中の若手選手だ。高校時代からカナダのチームからオファーを受けていた出口選手は、大学時代に父親の祖国であるカナダ国籍を取得した。
カナダ国籍を選択した背景には大学時代のスランプがあったと出口選手はインタビューで語っている。五輪出場を日本で掴むには実力が足りないのではないかという気持ちを抱えていた彼女に女子カナダ代表のサーシャ・メーメドビッチ・コーチが声をかけ、2017年夏からカナダ代表合宿に参加している。
さらに注目したいのが、同い年で学生時代からのライバルである芳田司選手との切磋琢磨だ。高校時代から何度も大会で対峙してきた二人は、インターハイ決勝では芳田に敗れるも、全日本ジュニアでは芳田を破り優勝。2018年の世界選手権では準決勝で芳田に破れ3位になるも、翌年の世界選手権では決勝で芳田を破りカナダ選手として初の優勝を勝ち取り話題になったのは記憶に新しい。
2.Annie Guglia(スケートボード)
2020年の東京五輪で初めて正式種目に採用されたスケートボード。この新種目でカナダを牽引する女性スケーターとして期待されているのが、モントリオール在住のAnnie Guglia選手だ。彼女は前述した女性スケーターコミュニティ「the Skirtboarders」の一員で、モントリオールを拠点に数々の国際大会で好成績をおさめている。
彼女のユニークな点はプロ転向のタイミング。大学ではマーケティングの修士課程を修了し、大学院ではマーケティング戦略の博士課程を修了。スケートボーダーとしては遅い25歳で、プロの道を歩むことを決心し五輪出場を目指し始めた。
そして25歳にして国際大会に出場するようになると、カナダ人女性で初のX-Games(世界最大規模の大会)出場を果たすなど活躍の場を広げ、現在ではMeow SkateboardsやVansなど有名ブランドとスポンサー契約を結び、実力とともにその知名度を急上昇させている。
拠点であるモントリオールでは地元の子どもたちにスケートボードを教えており、転んでも立ち上がってまた挑戦することの大切さを伝えたいと彼女は語っている。また、彼女はインタビューで「女の子はおとなしくいるべきだという社会的規範をスケートボードを通して破ってほしい。自分がやりたいと思ったことは性別関係なくできるんだということを女性スケーターとして伝えたい。現在は男性よりも女性の競技人口の増加スピードが速いため、今後もっとスケートボードは発展していくと思う」と語っている。
3.Paige Alms(サーフィン)
サーフィンも今五輪で初採用となる注目の新種目のひとつだ。ブリティッシュコロンビア州で生まれた彼女は、9歳の時に母親とともにハワイのマウイ島に移住、サーフィンを始め、18歳でプロサーファーに転身すると、4年連続でXXL Awards(World Surf League主催の大会)を勝ち取った。彼女が一躍有名になったのはマウイ島・ピアヒで行われるBig Wave Championだ。通称「Jaws」と呼ばれる15mの高さにもなる大波に世界中のサーファーたちが挑むこの大会で2016年と2017年の連覇を果たした。
プロサーファーとして活躍する彼女は、女性サーファーの参加できる大会の運営や男性プロサーファーと同様の賞金待遇などを求め、「the Committee for Equity in Women’s Surfing」を2015年に組織し、2018年にはWorld Surf Leagueが開催するすべての大会で、男女の賞金を同額とする決定を後押しした。
彼女はインタビューで、「今がサーフィンの過渡期。より多くの女性サーファーが性別による不平等に対して声を上げているのは良い変化」だと将来に期待を膨らませた。