トロント 日本食トレンド|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第19回|特集: 過去から振り返るカナダ2020「予想と展望」
新年あけましておめでとうございます。本年も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。さて、新年一発目は「2020年の日本食のトレンド」というお題目ですが、2019年の潮流を振り返った上で、今年はどんな日本食が注目を浴びるのか、という流れで進めていきたいと思います。
相乗効果でパイを大きくするというフェーズの中で、局地的にパイを奪い合うスポットが発生
2019年のトロントの日本食市場は、あいかわらず百花繚乱の時代が続いておりましたが、文化が花開いた後には戦の時代がやってくるのが世の常で、それがいつ訪れるのかはWho knowsというところです。ただ、飲食業界に身を置く人間としては、7、8年前の居酒屋、ラーメン屋ブームも落ち着いて、完全に潮目が変わって来たなと感じています。
昨年は金色不如帰のダウンタウン店、博多昇龍軒、Ryus Noodle Bar、ラーメン一心といった既存店の2号店や3号店出店のほか、Zen Japanese Restaurantのうどん業態やKinka GroupのNEO COFFEE BARなどが話題となりました。
特筆すべきはやはりクイーンストリートのラーメン屋の増加です。上に挙げたお店のほか、世界に展開する博多一幸舎も出店し、局地的に見ればどこかのタイミングで、相乗効果でパイを大きくするというフェーズから、パイを奪い合うフェーズに突入していくのが予想されます。
幅広いジャンルと価格帯の日本食レストランがオープン
またNYのうどん屋・RakuやKitanoya Udon、日本の老舗牛カツ屋・京都勝牛やてんぷら屋・秋光、おまかせの天ぷら・寿司の江戸前澄心、NYで腕をふるった高級寿司・Masaki Saitoなど、幅広いジャンルと価格帯の日本食レストランがオープンしたのもポイントです。そして相変わらず日本のデザートは根強く、LeTAO、八天堂のオープンも話題となりました。
寿司業態・居酒屋業態で、安くちょいのみが出来る日系飲食店というポジションに期待
それでは、今年はどんな日本食が世間をにぎわせるのでしょうか。既存店の多店舗化は今年も引き続き加速していくことが予想され、市場が出来上がってきたことで、日本から新たなジャンルの飲食店が出店したり、大手が大きな資本を武器に参入してくることも考えられます。
ラーメン屋はもちろんまだまだ増えるでしょうし、昨年の流れを汲んで、そば、うどん屋さんの出店も加速していくでしょう。デザート・カフェ業態もまだまだ衰えず、今年も増えていくはずです。
お寿司屋は、安さを売りにしたAll you can eatか高級寿司屋に完全に二極化しているので、逆に言えば、ミドルクラスの寿司屋のポジションが空いている状態で、ファクトベースでニーズを抑えた中間価格のお寿司屋がダウンタウンに出来ると消費者的には嬉しいですね。
これは雷神が狙っている、安くちょい飲みが出来る日系飲食店というポジションにも当てはまります。
日本からの出店は・・・
日本からの出店という観点では、自分もよく相談を受けることがありますが、アジアやUSに出店している企業でないと、及び腰の場合が多く、リスクの少ないフランチャイズの可能性が大きくなり、そうなると味やサービスできちんとしたクオリティが出せるか、ストーリーや世界観まで含めて持ってくることができるか、というところが肝となるでしょう。
日本人以上に日本食にこだわった日系カナディアンのお店に注目
ImanishiやSakai Barなど、ダウンタウンのウェスト方面の、日本人以上に日本食にこだわった日系カナディアンのお店の新しい動きも非常に楽しみにしています。こういったお店は人材確保の面でワーホリの取り合いにならない分、日本食市場が盛り上がれば盛り上がるほど、アドバンテージが効いてきます。
テクノロジー×飲食店そして健康志向ブーム
また、テクノロジー×飲食店というポイントも忘れてはいけません。日本でフードデリバリーやサブスクリプションモデルの飲食店が注目を浴びる一方で、マーケティング戦略の揺り戻しとして、売り上げや利益を事業の至上目的としない子供食堂や、オルタナティブな価値ドリブンの飲食店がカナダで増えて行くのも期待しています。
また、ふつふつと人気を博している麹、寒天、オーガニックの和菓子や薬膳料理なども健康志向ブームと相まってブレイクの土壌が出来上がってきていると感じています。
カナダ全体でいえば、まだまだパイが大きくなる
バンクーバーの日本食が飽和状態になり、トロントに日本食レストランが流れたように、ここまで日本食が増えてくると、競争をさけてカルガリーやオタワなどに広がっていく流れも予想ができ、カナダ全体で言えば、まだまだパイが大きくなっていくことでしょう。
「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史
ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。