第16回 ラーメン用語・スラング|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中
世界的なラーメンブームがやって来たと言われて久しい昨今ですが、ブームとまで言われるからには、それを支えてくれているお客さんの存在があります。何かに熱狂するファンやコミュニティの中では、専門用語やスラングなどが自然発生的に生まれてくるもので、今回は、そういったラーメン用語について書いてみたいと思います。
ラーメンの専門用語・スラングというと、最近では、「昨日は麺休だったため休日は地方へ遠征。A店に再来店した後、宿題店のB店にて連食。席について職人気質の店主の細やかな手先を見ていると6分で着丼。無化調にしてこの旨味。リピ決定」というような食レポなんかで目にすることができます。まだまだこのくらいならイメージは伝わりますよね。
そもそもラーメンは、地域性を反映したご当地ラーメンがその土地土地にあるように、博多ラーメン、サッポロ味噌ラーメン、富山ブラック、燕三条系ラーメンなどなど、地域に根差して発展してきたという背景があり、食のジャンルとしては、特異な用語が生まれやすいのかもしれません。また調味料ベースでの区分けとして、味噌、塩、しょうゆに加えて豚骨、魚介系、ダブルスープといったカテゴリーも存在します。
ご当地ラーメンの用語の発展型としては、バリカタ、ハリガネ、替え玉や背脂チャッチャ系など、固有の食べ方やジャンルがあり、調味料の区分けの発展型には貝系、トリパイタンやベジポタなどなど、現在は有名無名を問わずたくさんのカテゴリーが生まれています。このあたりもまだまだ序の口ですね。
90年代にラーメンブームが起こり、環七と呼ばれる都内の幹線道路沿いに、「なんでんかんでん」や「土佐っ子」といったいわゆる有名店が軒をつらね、駐車場待ちのお客さんが夜な夜な大渋滞を起こすほどだったと言われています。1996年には、後に96年組と呼ばれる「青葉」、「麺屋武蔵」、「くじら軒」がオープンしてラーメンブームを牽引し、「天空落とし」や「燕返し」というような湯切りのスタイルが流行したのは、2000年代中頃だったと記憶しています。
この頃にはすでに系列店や新たなラーメンのジャンルがだいぶ細分化してきましたが、インターネットの台頭と重なり、個人のブログやウェブサイトで食レポをアーカイブしたり、出来る限り全国のすべてのラーメン屋を網羅しようとしたラーメンデータバンクの存在などにより、ラーメンファンはさらに先鋭化していきます。
ラーメン二郎、家系ラーメンや大勝軒などの系列店がその勢力を徐々に拡大し、それぞれが特異なファンコミュニティを形成していきました。中でもジロリアンと呼ばれる熱狂的なラーメン二郎のファンは特にエクストリームな存在で、ジログと呼ばれる食レポはこういった調子です。
「オープン一時間前に到着するもファーストロットに滑り込めず。神保町はデフォでかなりの盛りなので小ブタでニンニクアブラカラメをコール。微乳化のスープに今日は神豚に出会え完飲完食」
ここまで来るともうお手上げですね。ラーメン用語・スラングについて書いてきましたが、さすがにこれは現代語訳をつけて締めくくります。
現代語訳「開店一時間前に到着するも、一巡目のラーメンには間に合わず。神田神保町店は基本の量が多いので、チャーシュー麺のニンニク入り、油多め、味濃いめを注文。ほどよく乳化したスープに、今日のチャーシューは最高の出来でスープまで飲み干しました」
「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史
ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。