One Team in TORONTO 発足|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第21回
先日、日系飲食店や留学エージェントに携わる有志の方々といっしょに、One Team in TORONTOという団体を立ち上げました。団体といっても、会社やNPOのようなオフィシャルな組織をもって成り立つ団体ではなく、参加資格や加盟条件など堅苦しい決め事もない、非常にゆるい繋がりをもった組織で、自分はオブザーバーとして関わっています。レストランやビジネスを興そうと奮闘している若者を対象に、二ヵ月に一度くらいのペースで、経営やマネージメントに関するセミナーを企画、運営していくのが主な活動で、2月18日、記念すべき第一回目のセミナーをラーメン雷神で開催いたしました。運営として関わりながら、スピーカーとしても登壇いたしましたが、今回はどうして自分がこの団体の立ち上げに参画したかをお話ししたいと思います。
ここカナダで飲食業界に身をおいて早十年、スタッフのほとんどがワーキングホリデーでカナダに来ている若者で、最も人材の入れ替えが激しく、浮き沈みも激しい業界である事は、身をもって体験してきました。自分の店だけでも、年間で数十人のスタッフが入れ替わり、グループ内の店舗や、仲良くさせていただいている飲食店さんのスタッフも含めると、相当数の人との出会いがあります。その中で、少なくない人間が、いずれは独立して自分のお店を持つ、という目標を掲げています。
しかし、感覚的な話にはなってしまいますが、その中で本当に独立出来る人間は、多めに言って5%もいないのが現実です。飲食店オーナーさんによっては、2%もいないのでは、というさらに厳しい見解をお持ちの方もいらっしゃいます。また、日本の話になりますが、日本では約4万件のラーメン屋があり、毎年3500件の新しいラーメン屋が開いて、同時に同じ数だけのラーメン屋が閉店を余儀なくされ、その4割がオープンして1年未満というのが実情です。これらの事実を紐解いてみると独立したい人間が、見事その夢を果たして、1年以上ビジネスを続けていける確率は、多めに言っても2%しかありません。飲食業界とはそういう業界なのです。
現在、自分のもとで働いてくれているスタッフの中で、いずれは独立したいと思って頑張っているスタッフが4人います。この4人の内、一人でも独立してうまくいく可能性はわずか8%、オーナーとして彼らと関わっている以上、全員に目標を達成してほしいと切に願っていますが、4人全員がうまくいく確率は、0.000016%という、絶望的な数字です。一生懸命がんばって働いて、目標に向かって努力している身の回りの人間のほとんどが、目標達成できないという厳しい世界、自分はどうにかこれを変えたいと思い、この団体の立ち上げに参画した次第です。
従来の企業経営のやり方に翳りがさし、体系的な人材マネージメントや経営メソッドの重要性が叫ばれるなか、そういった社会の要請に反して、現場社員の平均年齢の高齢化、アルバイトスタッフの相対的な若年化による意識の変化、働き方改革や、人件費の高騰への対応、すなわち業務改善や効率化など、僕たちの差し迫った課題はあとを絶ちません。そういった状況でも、先ほどの2%の人間は、恐らくほっといても勝手に独立していく強い人間です。しかし、みんながみんな、決して強いわけではなく、周囲の助けやアドバイス、支えがないとすぐに倒れてしまう人間なのです。自分がそうだったので、彼らの気持ちはよくわかります。ですので、独立前にこういった団体や企画があれば良かったなという組織を目指し、尽力していきたいと思います。

「雷神」共同経営者 兼 店長 吉田洋史
ラーメントークはもちろん、自分の興味や、趣味の音楽、経営の事や子育てのことなど、思うままにいろんな話題に触れていきます。とは言え、やはりこちらもラーメン屋。熱がこもってしまったらすいません。