2025年、カナダの飲食業界の展望|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第78回
TORJAの読者の皆さま、新年あけましておめでとうございます。日頃のご贔屓、心より感謝申し上げます。本年も、皆さまのご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
まだまだ物価上昇や人件費高騰のあおりを受けている飲食業界ですが、今年はどんな一年になるのでしょうか。今回は、さまざまなデータや私見をおりまぜながら、2025年のカナダの飲食業界の展望について書いてみたいと思います。
飲食業界、実質成長率0.7%
レストランカナダによると、2024年はカナダの飲食業界全体で前年比4.2%の成長を果たしたものの、物価の上昇を加味した実質成長率は0.7%にとどまるそうです。今年は4.4%の成長が見込まれており、物価上昇も一定の落ち着きを見せていて、順調に政策金利も下がっているので、昨年以上の成長が期待できそうです。
昨年12月に始まったカナダの免税措置や、オンタリオ州の一人当たり250ドルの給付金の施策は、国や州政府が景気回復に向けた起爆剤を市場に投下しているように見えます。
しかし実際のところ、これは根本的な解決ではなく一時的な手当てなので、3月頃からまた消費が落ち込むのではないかという危惧があります。個人的には、この反発の大きさで今年全体の消費動向が左右されると踏んでいますが、それ以上に未知数なのが世界の動向です。
深刻化する客数の減少
トランプ時期大統領によってカナダに関税がかけられるのか、ロシアとウクライナの戦争、そしてイスラエルと周辺国の紛争はどう動くのか。事態の進展次第では世界全体がより混迷する可能性をはらんでいます。
足元に目を向けると、いま飲食店が直面している問題は、物価高や賃金の上昇もさることながら、客数の減少が深刻です。Consumer Dining Indexという、消費者の外食の頻度をもとに算出される指標があるのですが、2023年の7月を100としたとき、同年9月に若干100を上回ったもののそれ以降いまだ100を超えられていません。どういうことかと言うと、これは飲食業界全体で見たときに、ここ1年半ほどずっと客足が遠のいて戻ってきていないという事を意味します。
今年こそはこの状況が良くなることを願ってやみませんが、ある程度、長期トレンドであるという事実も受け止めたうえで戦略を練る必要がありそうです。
3つに絞って10%の改善
具体策を考えるうえで、35年間カナダの飲食店のブランディングやマーケティングに携わってきたジェイ・アシュトンの提案をいくつか紹介します。
まずはメニューの再構築です。稼ぐための人気アイテム、客寄せのためのお得なアイテム、見直す必要があるか、もしくは思い切って他と入れ替えるアイテムなど、戦略にもとづいて全体を俯瞰して見る必要があります。単価アップのためのセットメニューやリピートにつながるロイヤリティプログラムなども定番ながら効果が期待できます。
従業員の安定は、教育コストの削減やクオリティの安定にもつながりますので、意外とないがしろにされがちな、従業員の成長の機会提供やロイヤリティを高める施策、離職率を低下させるための策も重要です。
そのほか、オペレーションの効率化や遅れがちなデジタルへの移行、AIの活用といった提案もありますが、個人的にAIの飲食店での実装はまだ考えなくて良いと思っています。ここで流行にのってAIに手を出さずとも、いずれAIをベースにした飲食店向けのサービスが必ず出てきます。
すべてに手を付けようとすると、想像するだけでげんなりしてしまいますが、彼の提案で重要な点は、すべてをやろうとするのではなく、3つに絞ってそれを10%改善させるということです。あくまで出来る範囲で無理なくやり切る。それによって実感できる結果を得ることが大切です。