裏千家淡交会トロント協会「秋のお茶会」|トロント日系コミュニティだより
爽やかな秋晴れとなった10月28日、裏千家淡交会トロント協会は、恒例の「秋のお茶会」を日系文化会館にて開催致しました。2年に一度のお茶会ですが、楽しみにお待ち下さる方も多く、今年は130人を越える多くの方にご来場頂き、和やかな雰囲気の中、一服差上げることが出来ました。
当日は、秋の風情を少しでも楽しんでいただける様、趣の異なった二席に、それぞれ違った種類のお抹茶とお菓子をご用意し、お客様をお迎えいたしました。和室のお席では、改まった室礼の中、男子会員のお点前で薄茶が点てられました。多くの人にとっては普段なかなか目にする機会の無い茶道具類の取り合わせや季節の花々、会員手作りの和菓子(浮島*1)などから秋の雰囲気を感じでいただけた様です。お床には「世界リレーシップ茶会」というムーブメントで世界各地を廻っているお軸を掛けさせていただきました。
日本でお茶をされている方のお呼びかけで始まったこのリレー茶会も今年で3年目を迎えます。一碗のお茶を通して平和の心を分ちあうという思いが、このお軸(*2)を通してバトンを繋ぐように世界を廻っています。茶道の流派を問わず、ヨーロッパ各国、アジア各地(中国、韓国、東南アジア各国)、アフリカ、オーストラリア、北米各都市と多くの場所を旅している三幅のうち一つがこの度トロントへ届き、日加修好90周年に当たる年のお茶会のタイミングにあったことは相応しく、また、このお軸を掛け一服差上げる機会に恵まれましたことは、私たちトロント協会会員にとりましてもありがたく大きな喜びとなりました。
お軸には、自分の心のあり様を素直に見つめなおす大切さを教えるお言葉が書かれており、説明を受けた皆様お一人お一人のお心になにか共鳴するものがあったのではないかと思います。
ヘリテージラウンジでは、御園棚を用いた椅子式のお席ですこし寛いでお点前を楽しんでいただきました。お菓子は、日本から取り寄せた和三盆というとてもキメの細かい砂糖で作られたお干菓子をご用意しました。栗や稲穂など様々な秋の意匠に型押しされた和三盆(*3)は口の中ですーっと解け、お抹茶がより美味しく感じられたかと思います。また、お客様にお出ししたそれぞれのお茶碗は、紅葉など秋のデザインが施された京焼の抹茶碗を使い、その色とりどりのお茶碗がお客様の目を愉しませたようです。
当日はトロント市らしく、来場者も様々な国や文化背景を持った人々が集まりました。当協会の会員も多種多様です。多様性や個性を尊ぶカナダの文化において共通する相手への尊重と平和への願いは、お茶の心と重なります。近年の抹茶ブームのお陰で、トロントでも日本と同じ品質のお抹茶が入手できるようになり、ご自宅で楽しまれる方も沢山増えていらっしゃるように感じますが、このような機会に茶道にも触れられ、日本文化の枠にとどまらず、国や文化を超え様々な人々と一碗のお茶を通して心が繋がる茶道への理解がすこしでも広がる機会となりましたらうれしく思います。
この度のお茶会は、お天気にも恵まれお着物姿の女性も多く華やかで楽しい一会となりました。いらしたお客様から喜びのお声も多く頂き、私たち協会一同の励みとなりました。今後もそれぞれにお稽古に励み、また皆様をお迎えする日を楽しみにしております。
*1 浮島: 餡を使ったケーキのような蒸し菓子
*2 お軸の言葉: 「円相 露堂々」大徳寺塔頭戸田実山筆
*3 干菓子: 梅香園 吹き寄せ
寄稿:裏千家淡交会トロント協会