国際機関で働く 第5回
~あなたも国際機関を目指してみませんか?~
文=外務省国際機関人事センター 伊藤賢穂
第5回目「国際機関を志す準備」
第5回目の今回は、どのような準備をすればよいのかということについて、いくつか考えられることをお話したいと思います。
まずは、国際機関を知ること、すなわち情報収集をすることが重要です。どのような国際機関があって、どのような活動をしているのかということを知り、自分が働きたいと思う国際機関を見つけることを早い段階ですべきだと思います。
国際機関のウェブサイトでは、その国際機関の主な業務についての詳細な説明をしていますので、これを読むことは重要ですが、他に、プレスリリースや最新のニュースなどの欄の記事を読んでいけば、その国際機関の最近の活動を把握することができます。また、国際機関のウェブサイトから、年次報告書や特定のテーマに関する報告書などもダウンロードできます。
自分が働きたいと思う国際機関を見つけるためには、このように、ある国際機関がどのような業務を行っているのかを知ることに加えて、その国際機関にはどのようなポストがあるのか、そのポストではどのような業務をするのかということを知ることも重要です。
そのためには、この連載の第三回で紹介した「空席公告」(post vacancy annoucement)をたくさん読むとよいと思います。特に、空席公告の中で、そのポストの業務内容を紹介する「Responsibilities」とそのポストの応募要件を記した「Qualifications」というところは、すぐに応募する方には不可欠な情報が書かれていますが、これから国際機関を目指すという方にとっても非常に有益な情報が満載されています。「Responsibilities」には、そのポストではどのような仕事をするのかが書いてありますから、一つの国際機関の空席公告をいくつも読むことによって、具体的にどのような仕事をするのかということがわかりますし、その国際機関に自分がしたい仕事があるのかどうかということもわかります。最近では、個々の国際機関が扱う業務が多角化し、守備範囲も広がっていますので、いくつもの国際機関で自分がしたい仕事や自分の専門を生かすことができるポストが見つかるかもしれません。
また、「Qualifications」のところには、そのポストで求められる学歴、職歴、必要な語学などが書かれています。すぐに応募する方は、求められている学歴や職歴を見て、自分が応募要件を満たしているかどうか確認するわけですが、これから国際機関を目指す方は、自分が関心のあるポストに就くためには、どのような学位を取得して、どのような職歴を積めばよいのかということを空席公告から知るという使い方をしていただきたいと思います。その上で、今後の進路についての中・長期的な計画を立てていただければと思います。
次に挙げたいのが、英語の力、特にコミュニケーション能力や書く力をつけることです。国連には6つの公用語がありますが、まずは高度なレベルの英語を身につけ、業務ができるレベルを目指して下さい。その上で、フランス語、スペイン語、アラビア語などもできるようになると、選考の際に有利になります。
高度なレベルとはどのようなレベルなのかという質問をよく受けます。分野やポストによってまちまちですので、一概には言えないのですが、例えば、日本の会社で仕事をしている方が、そこで使っている日本語を全部英語に置き換えても支障なく仕事ができるかどうかということが一つの目安になるのではないでしょうか。つまり、メールのやりとり、サマリーの作成、会議の主宰などが苦もなくできるというレベルは最低限必要でしょう。
また、TOEFLやTOEICの点数は何点必要かという質問もよくあります。国際機関への応募に際し、そのような語学の試験のスコアの提出を求められることはありません。それどころか、「選考の過程では、英語の試験はない。」とまで言う国際機関関係者もいます。たしかに英語そのものの試験を課していないかもしれませんが、応募した書類や面接での受け答えを通じて、英語で仕事ができるのかどうかを見ていると思います。最近では、筆記試験を課す国際機関も増えてきましたので、今後ますます書く力が必要になってくるでしょう。
TORJAの読者の皆様は、カナダで生活をし、仕事をされている方が多いと思いますので、英語を日常的に使っておられる方も多いと思いますが、国際機関を目指すのであれば、英語についてもより高いレベルを目指していただきたいと思います。国際機関で働く日本人の数が少ないということはもう何年も前から言われているのですが、その要因の一つに言葉の問題があると思います。面接や筆記試験を日本語で受けることができれば、もっと多くの日本人が採用されているかもしれません。高い能力や専門性を持っているのに、英語を介したとたんにそれらを完全には発揮できないということでは、「苦しい戦い」になってしまいます。国際機関の幹部になっている日本人の方の中には、もう二十年以上も英語を使って国際機関で仕事をされているのに、今でも、英語の勉強をされている方もいます。母国語が国連の公用語ではない我々にとっては、語学という「壁」は非常に高いものであること、そして国際機関を目指すのであれば、その壁が高いことを嘆くのではなく、不断の努力で乗り越えていかなければならないものであることをお考えいただきたいと思います。
次回は、どのような準備が必要かということの続きをお話したいと思います。







