トロントのファッション業界をクリエイティブに映し出す日本人フォトグラファー 高橋佑郷さん インタビュー|トロントで夢をカタチに…
「日本人と久しぶりに話せて嬉しいです。」
そう話しながら日の当たるプライベートスタジオを案内してくれたのはトロントで活躍するフォトグラファーの高橋佑郷さん。ディステラリー地区に近いアーティストが集うビルの一室に自分のスタジオを持ち、カナダ人の奥様と二人三脚で活動している。競争の激しいファッション業界のフォトグラファーとして輝く高橋さんに今回は話を聞いた。
ー素敵なスタジオですね!ビルの前でアーティストらしい雰囲気の方たちとすれ違いました。エントランスにも絵があるし、このビルはアート系の方が多いのですか。
有難う御座います。そうですね、スタジオもいくつかありますしファッション系のスタジオ含めアート業界の人達が沢山借りています。
ーではまず、お仕事を伺ってもいいですか?
今撮っているのは、ファッション事務所に所属しているモデルさん達ですね。ポートレイトは一般の方も取っています。ウエディングとかマタニティとか、会社でも撮ります。撮る内容で一番多いのは、モデルテストという新人のモデルさんがまだポートフォリオをあまり持っていないので、その依頼を事務所から受けるのと、シーズンごとに出るカタログやルックブックの写真がメインです。
ートロントにいらっしゃるまでの経緯を教えてください。
2009年に日本で美大のデザイン情報科を卒業しました。その後3DCG制作会社に勤務したのですが、何かやりたいことと違うと思い退社し、バンクーバーに渡りました。その後2013年にVancouver Institute of Media ArtsでPhotographyを専攻し一年本格的に写真を学び、在学中からポートレイトやファッションを中心にフォトグラファーの仕事をしだすようになりました。2016年にトロントに移住し今に至ります。
ー日本では映像系を勉強されて、お仕事もされていたのですね。
ええ、大学はグラフィックデザイン、情報をまとめてどうやってグラフィックとして伝えるかみたいな勉強をしていました。その中で映像に触れる機会があって映像に興味を持ち始めたのが最初です。卒業後、映像の会社に入ってみたらだいぶ違うなって、作品の出来は好きなのですがその作る過程が好きじゃありませんでした(笑)。で、これ違うなと思って辞めました。
ーなるほど、その後バンクーバーに行かれたとのことですが、何故バンクーバーを選んだのですか。
バンクーバーに行ったのは、正直まだ当時は映像系を引きずっていて、どっちに行くかという決心がついていなかったのです。なのでバンクーバーで英語を学びつつ映像系も調べてみようと思ったのがきっかけです。バンクーバーは映像系で有名なので。
ーバンクーバーに渡られたとき英語は出来ましたか。
英語は出来ませんでした。英語は最初10か月英語学校に行って、その後に行った写真の学校でぐんと英語が伸びましたね。今でも英語で苦労することは勿論ありますよ。例えば指示を出す時とか。その時は時間をかけて伝えていったり、自分で動いて伝えていくようにしています。
カナダに渡ってから写真の世界へとのめりこんでいった
ー英語は一生の課題ですよね(笑)。 Vancouver Institute of Media ArtsでPhotographyを専攻されたとのことですが、どこから写真が出てきたのでしょうか。
実は美大時代から一眼レフを持ち歩いて、写真関係の講義受けていました。でも趣味程度でそれほど興味は持ってなくて…カナダに来てから日本との違い、風景とか、人や街並みに興味を持ち始めて、毎日撮り始めたのをきっかけにのめり込み、真剣に学ぼうと思いその学校に行きました。学校選びについては、その学校自体が映像系で有名で前から知ってはいました。いくつか映像系で調べていた学校の中で写真もコースとしてあると知りそこに決めました。
ーその中でも、ファッション系・ポートレイトというジャンルを選んだのですね。
ポートレイト・ファッションを選んだのは、当時付き合っていた彼女(今の奥さん)がファッションが大好きで、一緒に作品撮りをするようになってから興味を持ち始め徐々に人ばかりを撮るようになりました。
ートロントに移った理由はなんですか?
トロントに移ったのは、バンクーバーのファッション業界が本当に小さくお金が回ってない感じだったので、ならトロントで始めようと思い移ってきました。バンクーバーではウエディング系の会社でフォトグラファーとして働いていました。
ートロントのファッション業界は大きいのですか。
正直他の大都市に比べると小さいです。そのため活躍しているモデルも正直少ないですね。バンクーバーよりは大きいですが、ファッション系の仕事はトロントも今はかなり厳しいです。また、最近の傾向として、ファッション業界の広告が映像に移り変わりつつあるので写真だけでは厳しいなと感じています。例えばZARAのカタログも半分以上が映像になっていたり。なのでビデオも後々やっていかなくてはと思っています。
実績を重ねるために時には無給で仕事もした
ー卒業してからプロとして活動できるまでどんなことをしていましたか?
仕事を探していた時は自分からどんどん発信していきました。とりあえずアクションを起こして、返ってきたレスポンスにどう対応しようか、とそれから考えるタイプです(笑)。具体的にやったことは、ファッション事務所に無給でもいいので新人モデルの写真を撮らせてくれとメールを片っ端から送っていきました。そこでいくつか採用して貰い撮影しているうちに、2、3か所の事務所が気に入ってくれて有給でのテストシュートの仕事を貰えるようになったのをきっかけにフリーランスとして自分で組み立てていきました。一般の方用のサイトも作り、そのうちyelp等にも登録したこともあり徐々に仕事が来るようになりました。サイトやインスタグラムも更新するとやはり依頼が来るので、毎日更新が本当に重要だなと感じています。トロントはファッション業界が小さいので一度知ってもらうと仕事が来るようになるのですが、でも間違えると来なくなる。厳しい世界ですね。トロントに来て半年くらいは無給で働いていましたが、その間も一般の方のポートレイトは撮っていたのでお金は入ってきてはいました。バンクーバー時代も無給で働いたこともありましたね。
ーやはり有給で仕事を貰えるようになるまでのレジュメ作りは大切ですよね。この仕事をしていて面白いなと思ったことなどありますか?
日本でこの仕事をしていないので比べることが出来ないのですが、メイクさんがすごく強くて撮影に意見を沢山言ってくることに驚きました(笑)。意見を聞くこともありますが、ノーとハッキリいう事も勿論多いです。
ー撮影の進め方を教えてください。
撮影に関しては、お金を貰っている限りはクライアントの要望に沿うようにしています。撮影にはエージェントやデザイナーも立ち会うのですが、撮影前にどういう写真を撮りたいかリファレンスを送ってもらうところからコミュニケーションを出来るだけ取るようにして撮影内容のすり合わせをするようにしています。衣装さんと一緒に服を選びに行くこともあります。
モデルさんへは丁寧に接するようにしています。写真家によっては怒鳴る人とかもいますが。撮影は本当に面白くて、みんなカメラの前で違うんですよね。人によっては臆病になったりもするのですが、みなユニークで、そこが魅力です。指示はモデルによって出したり出さなかったりします。クリエイティビティを出してくるモデルもいれば、シャイでつついていかないと出してくれないモデルもいるので、そういう人にはどんどん言っていきます。
考えすぎて立ち止まるよりは楽観的に時間の流れを信じてほしい
ーずばり、今後の目標は?
トロントのファッション業界は小さめなので、目標としてはニューヨークや東京でもアート系・ファッション系を中心に活動してみたいなと思っていますが、まだ今後の活動地は決めていません。ただ、僕自身が東京出身なので東京は飽きちゃうかなとも思います(笑)。人種も日本人がほとんどですし、そういう意味ではトロントは面白いですね。でも、大きいファッション業界のあるところで勝負したいなと思っています。
ー最後にこの仕事の魅力と読者の方へメッセージをお願いします!
この仕事の楽しいところは、人とコミュニケーションをとりながら働けるところです!
エールですか、そうですね、僕は結構、時の流れの強さを信じているところがあって、自分の興味あることを毎日続ければ、10年たった時に他の人よりその分野で優れていないわけがないであろうとシンプルに考えるようにしています。なので色々考えて心配するよりは、楽観的に時間の流れを信じて、毎日自分の好きな事や興味のあることを10年20年30年とコツコツやっていけば、誰でも絶対何とかなると信じています。もし夢を追いかけている立場の人がいたとしたら、人生長いので、焦らず毎日自分の興味のある事にちゃんと時間を過ごしてあげるのが一番大事な事じゃないかなぁと個人的に思います。
トロントのファッション業界で働いている他のアーティストの方々、是非僕とコラボしましょう!そして写真が必要な日本人の方がいましたら、是非ご連絡お待ちしております(笑)。
高橋佑郷さんプロフィール
東京出身の写真家。武蔵野美術大学を卒業し、グラフィックデザインやモーショングラフィックスを学ぶ。その後CGIデザイナーとして働き、徐々に写真に興味を持ち始める。カナダではVancouver Institute of Media Artsで学んだあと、現在はトロントを拠点に活躍している。
Yugo Photography
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